REVIEWデウスエクス:インビジブル・ウォー
Xbox
2004年6月17日発売販売:アイドス  開発:Ion Storm  

  シングルプレイで考えればPCゲームのオールタイムベストの候補になってくるであろう名作『Deus Ex』の続編。 北米では昨年12月にリリースされ、リージョンフリー仕様だったので、 ワーコレ化に期待しつつ隙あらばプレイしようかと思ってたら、まさかのローカライズで非常に驚いた&喜んだ一本だったりする。


  舞台は前作から約20年後。 前作のラストで前作の主人公「J・C・デントン」は選択を迫られることになったんだけど、 その選択により「大崩壊」が発生、世界的な大混乱を経て、新たな秩序が構築されつつある。
  プレイヤーは教育機関「ターサス・アカデミー」の対テロエージェントの訓練生「アレックス・D」。 シカゴのアカデミーで訓練を行っていたが、そのシカゴで街全体を石化するという大規模テロが発生、それに巻き込まれてしまう。 そこから何とか逃げ延びたアレックスが、シアトルのアカデミーで目を覚ますところからゲーム開始。
  前作同様、組織の対立の中で揺れ動きながら話が進んでいくことになるので、そこらへんも軽く説明しておこう。 「WTO」は世界の流通、メディアを支配する実質的な世界政府で、ターサス・アカデミーとは友好関係にある。 そのWTOと対立するのが、謎の人物「聖女」を崇める新興宗教「オーダー」。 シカゴでのテロもオーダーによるものと思われている。 そこに、科学、特にサイバネティック技術を否定する新興勢力「テンプラーズ」や、 逆にテクノロジーを信仰し、肉体のサイボーグ化と意識の統一化(共同化)を行っている「オマー」 (要するに「スタートレックTNG」のボーグみたいなの)が絡んでくるというもの。 WTOとオーダーの対立の中を揺れ動くアレックスだが、徐々にその背後にある謎に近づいていくことになり、 最後にはまたアレックスに世界の選択が迫られることに・・・。

  主観視点で進行するスキル的なある種の成長要素をもった SFADVというゲームの概要は、前作と変わらず。 一応、前作のレビューも参照してほしい。 全てがシームレスで進行するわけじゃなく、幾つかの舞台(ステージ)に分かれてるというのも前作を思わせる形式だ。 そのステージの中で、ストーリーの流れで目標が設定されたり、人から任務を請け負ったりして、 それらを割と好き勝手にこなしていくことになる。 任務を請け負う前にその任務を達成しちゃってたりすることもあるし、 NPCは基本的に誰でも殺害可だったりと、その自由度はかなり高く設定されていると言ってよいだろう。
  キャラクターの操作方法などはオーソドックス。 左スティックで前後左右平行移動、右スティックで旋回も含めた視点操作、 Rトリガで通常攻撃、Lトリガでサブ攻撃(武器ごとに設定されている)、Yでジャンプ、 左スティッククリックで立ち・しゃがみの切り替え。 飛び越えることができない高さの足場でも、その淵につかまれるような高さであれば、 Yボタン押しっぱなしでよじ登ってくれるというのも、前作から継承されてる。
  好感を持ったのがメニュー関係の操作性。 いわゆるポインター的な操作を排除し、マウスを前提にしてないというか、 むしろパッドを前提にして作られており、非常に上手くまとまっている。 なんでも前作をPS2へ移植したときにメニューのムダをなくすということに思いを巡らせたらしく、それが本作で十分に生かされたんだろう。 アイテムスロットが大幅に減った代わりに、食べ物類が1つにまとまったりという工夫がされてたのも○。 ただし、グレネード&マインは各種別々に持つことになるので、 これが非常に場所を取る、すなわちあまり沢山持ち運べず、結局それらを使う機会そのものが激減してしまったのが残念なところではあるが。
  体力にしても、前作のような部位制は廃止となってシンプルなものになった。

  肝心の成長要素もかなりシンプルに。 前作での成長要素は、経験値的なポイントを消費して随時成長させられるSkill(全11種)と、 特定のアイテムを使用して能力を身に付け、オン・オフの切り替えで使用するAug(9部位×2種で全18種)があり、 Augをレベルアップさせるには「Upgrade Canister」というアイテムが必要だった。 本作ではこれらが「バイオモッド」という要素に簡易化というか統合&整理された。 これは目、頭、胴、腕、足という5部位それぞれに、 通常2種、特殊1種の計3種のバイオモッドの1つを選択して能力を装備するというもので、 オン・オフで切り替えて「バイオエナジー」を消費するものもあれば、随時その能力が発現されるものもある。 また、これは「バイオモッド・キャニスター」というアイテムを消費することで随時可能で、 スキルのレベルアップ(3段階)にも同じアイテムを使用 (ただし、特殊バイオモッド能力を得るには「特殊バイオモッド・キャニスター」が必要)。
  スキルの中で使い勝手が良すぎるように思えたのは、 前作でも重宝した「偵察型ドローン」で、 そ偵察能力もさることながら自爆によるEMP攻撃が使えすぎる感アリ。 特にこのゲームは、耐久力のある敵(=厄介な敵)はEMP攻撃に弱くなってるので、 いくらバイオエナジーの消費量が大きいとはいえ、ちょっと便利すぎるような気がする。 自爆は破壊能力ではなく、一定時間のスタンにすればよかったろうに。
  あと、プレイスタイルにもよるんだろうけど、 全体的にバイオモッド・キャニスターが手に入り易すぎるような印象も残る。 終盤ではよっぽど無駄遣い(今回はレベルが1に戻ってしまうもののバイオモッドの種類を途中で変更できる)しない限り、キャニスターは余っているはず。 もうちょっと数を減らすか、レベルに応じて消費するキャニスターを増やすといった工夫がほしかったところ。
  スキルで極端に使えなかったのは、毒や放射能のダメージを軽減する「NBC防御型ドローン」と、 グレネードやロケットランチャーを空中で爆発させる「防御支援型ドローン」くらい。 確かに毒と放射能のダメージは高めに設定されているものの、 いかんせん、それを喰らう機会が少ないし、そのダメージ覚悟で進まなくちゃならないような場面もほとんど見当たらず。 一方のグレネードは敵があまり上手く使ってこないし、ロケットランチャーは確かに終盤で厄介なものの、 逆に言うと終盤までは出てこないので、それまでは完全に浮いてしまっている(その終盤でもそこまでは多くない)。
  それでも数が少なくなった分、極端に使えないようなスキルはほとんどなくなり、 その使い分けにもちゃんと面白みが出てると思う。 これらのスキルとステージのデザインによって自由度が高く(選択肢が多く)なっており、 それに応じてゲームのリプレイ性が高まってるという前作の長所はちゃんと継承されてると言えるだろう。 一回目のクリア時間は15時間弱ほどだけど、 特に隠し要素とかは無いにも関わらず、2周目も遜色なく楽しかったりする

  戦闘面での最大の特徴は、弾薬が共通化されたこと。で、武器によって弾薬の消費量が違ってくるという形。 設定的にはかなりムリがあるんだけど、弾薬のマネイジメントの面倒さがなくなり、 しかも弾薬の入手具合によって無理矢理武器を使い分けさせられるということがなくなるわけで、自分としては好ましく思う仕様だった。 また、各武器は全8種の「武器モッド」というパワーアップパーツを最大で2種使うことでパワーアップすることができる。 補助的ではあるけど、その効力はバカにならず、かといって複雑にはならずと、上手い塩梅だったと思う。
  これらの簡易化は、確かに家庭用機を前提にした(本作はXboxとPCで並行して開発された)からというのもあるんだろうけど、 ゲームのひとつの進化の方向として間違ってないと思うな。
  ただ、であるならもうちょっと戦闘を面白いものに仕上げてほしかったところではある。 全体的に、人間タイプの敵AIがかなり不甲斐ない。 (立体的な構造が多いにも関わらず)上下の索敵能力が低く、戦略性が感じられないし、 こちらの特殊能力(特に透明化)への対応力も低い。 また、スナイパーライフルが強すぎるというか、狙撃がラクすぎる印象もある。 結構大雑把に頭を狙ってヘッドショットが可能だし、 サイレンサー(武器モッドの中では手に入りやすいパーツ)を付ければ、その発射音も大幅に減らすことができちゃうし。 で、前述の通り、メカ系には偵察ドローンが有効すぎ、と。
  ステージデザインも、全体的にこみいった作りで非常に楽しいのんだけど、全体的にちょっと狭い場所が多すぎる印象もある。 というか、屋外の開けたシチュエーションがかなり少ない。
  そして、このゲームの問答無用の短所はそのローディング時間の(頻度&)長さ。 別にステージ開始前にガッツリと読み込むとかであれば全然耐えられるんだけど、 このゲームの場合、ステージ内でもマップが区切られており、その間のローディングが非常に長いので参ってしまう。 これはかなり致命的なレベルで、自分としてもかなりギリギリな感じだった。

  グラフィックは非常に美しい。 前述の通り、おそらくXboxをベースに開発したであろうこともあって、基本的な質が高いのも当然として、 最近のトレンドと言えるであろう動的な影の表現が取り入れられているし、SF的な描写がセンス良くまとまっているのも大きい。 会話時はアクションこそあまり工夫がないけど、ちゃんとリップシンクしてるのもエラい。 その一方で、フレームレートは不安定というより全体的に低い感じだけど、 あまりリアルタイムでクイックに動かなくちゃならないゲームでもないんで、プレイしてる内に慣れてしまったな。
  シナリオについては多くを語らないが、細かい部分の選択、自由度はあるけど、 大まかには終盤の1つの分岐点によってエンディングが変わってくるというだけ。 ただ、このゲームでのインタラクティブ性の高さってのは、 別に分岐が複雑とかじゃなく、プレイヤーが体験するという点を重視して作られてるということに尽きるんだろう (細かい自由度などもその一環)。 前作同様、一方的な善悪が存在しない、テクノロジーと理念を絡めた話で、非常に楽しめた。 サブキャラ的な3人の(元)同僚たちがなかなか良い味を出してるのもポイントが高い。
  音声は日本語化されておらず、字幕などのテキストのみのローカライズ。 全体的に英語音声はシブくて良い感じなので、このこと自体は大きな不満がないどころか、むしろ好印象。 ただ、ややわかり難いセリフが多いにも関わらず、それがスイスイと流れてしまうのが、 しょうがないっちゃしょうがないんだけど、ちょっと困るところではある。 会話のログが見れればよかったんだけども。


  さすがに前作には及ばないものの、 自由度の高い(リプレイ性の高い)ゲーム性、SFらしい(演出込みで)シナリオ、そして美しいグラフィックと、 非常によくできたSFADVであることは間違いないだろう。 要望的なものは結構あるけど、あからさまな難点はローディング時間くらいのもの。 ほぼ期待通りに楽しめた一本だった。

2004年7月26日記載