REVIEWセインツ 聖なる魔物
PlayStation2
2004年3月18日発売販売:SCE  開発:SCEE  

  明らかに洋ゲーっぽいんだけど、それらしき海外タイトルが見当たらず、個人的にはちょっと謎だった一本。 調べてみると、2003年3月に北米でリリースされた『Primal』のローカライズ版であることが判明した。 開発はSCEヨーロッパのCambridge Studio。 ここの最新作『Ghosthunter』は、なぜか北米ではナムコが、日本ではEAがパブリッシングことになってる (ちなみに北米では今月中旬、日本では来月リリース予定)。


  主人公「ジェン」(♀)は、恋人であるパンクロックバンドのボーカル「ルイス」と一緒に、 ライブハウスから家に帰っているところを、謎の怪物に襲われて瀕死の重傷を負ってしまう。 病院のベッドの上で生死の境をさまよっていたジェンの前に、 人間の子供くらいの大きさのガーゴイル、秩序の女神「アレラ」の使い「スクリー」が現れる。 彼は不思議な力でジェンの肉体と精神を分離させ、ジェンに、宇宙の中心世界「オブリヴィオン」を救って欲しいと頼み込む。 唐突すぎる話についていけないジェンだったが、恋人ルイスもオブリヴィオンに連れ去られたという話を聞き、 彼と再会するためにその異世界に向かう決心をした・・・というのが物語の導入。
  オブリヴィオンは、極寒の地「ソラム」、水の楽園「アクィス」、 堕落した貴族が支配する「イーサ」、火の国「ヴォルカ」という4つの世界と、その世界を繋ぐ「ネクサス」から構成されている。 で、ジェンとスクリーの2人は、混沌の魔王「アバドン」の影響を受けて混乱する世界を静めるために、その4つの世界を次々と旅することになる。

  ゲームの形式としては、ストーリー重視で、そんなにアクション色が強くない、かなり一本道な流れのアクションADVということで、 丁度「Legacy of Kain」シリーズの『ソウルリーバー2』などに近い。 国産では、あえて言うなら「鬼武者」シリーズなんかが近いのかも(あれほど戦闘偏重ではないし、舞台のスケール感ももっと大きいけど)。
  基本的な操作は、左スティックでキャラの移動、右スティックで視点操作(R3でカメラリセット)、○がいわゆるアクションボタン。 ジャンプボタンがないことからも分かる通り、 任意&随時ジャンプすることはできず、高い(or低い、離れた)足場の方向にスティックを入れると、 勝手にジャンプしてくれる仕様。 視点操作は、カメラがやや背景に引っかかる感じがあって、良好とは言い難いものの、 開けた場所が多い(カメラが引っかかるような狭い場所が少ない)ので、極端にストレスになることもあまりなかった。 カメラリセットが瞬時に切り替わるタイプなのも大きい。 ただ、自分が動いてるときにその方向に向こうとする自動調整がやや強すぎる感じで、 ちょっと視点が落ち着かない印象も残る。
  プレイヤーは、セレクトボタンでジェンとスクリーを切り替えながら、ゲームを進めていくことになり、 基本的には、操作しているキャラにもう1人のキャラが勝手に付いてきてくれる形。

  ジェンは戦闘能力があるメインキャラ。
  敵との戦闘は、ロックオン状態での1vs1で行う。 敵に近づくと勝手に武器を取り出してロック状態となり、常に敵の方向を向くようになって、動きは通常より遅くなる。 んで、○ボタンでターゲットの切り替え(一番近くにいる敵をロック)、×でロック解除、と。
  攻撃は、R1・L1でそれぞれ右手・左手での攻撃を行い、 それぞれボタンの感圧に対応しており、チョンと押すと弱攻撃、ギュッと押すと強攻撃で、 一応、2発くらいの組み合わせのコンボなんかもあったりする模様。 また、人型の敵はダメージを与えただけでは倒すことができず、体力を減らしてフラフラになったところにL1+R1の必殺技でトドメを刺す必要がある。 丁度、「ソウルリーバー」シリーズと似たような仕様だけど、アレほど必殺技の見栄えがよくなく、その割にテンポが悪かったりとイマイチ。 そして、R2で防御。相手の攻撃がヒットする直前に防御すると「カウンター攻撃」となり、 敵の大攻撃はガードしても体力が削られることもあって、これがなかなか重要になってくるんだけども、 発動しても必ずしもヒットするわけじゃなく、ガードされたりもする(その基準は不明)。
  とりあえず、このゲームのイの一番の難点は、この戦闘のつまらなさだろう。 当たり判定はよくわからないし、ヒットバックの調整も雑なので、コンボを繋げるという感覚が皆無。 当然のように、1vs1がベースなので沢山の敵を捌くような攻撃(orアクション)も見当たらないし、 攻撃を避けるようなアクションもないので、結局、ダラダラと攻撃を続け、敵の大きな攻撃にはカウンター攻撃っていうだけに終始する。非常に大味。 大味なら大味で爽快感があればいいんだけど、ヒット感も貧弱だし、モーションは間延びしてるわけで、爽快感もないんだよなぁ。 海外ゲームは全体的に格闘要素をゲームにするのが本当にヘタっぴなんだけど、その中でも特にコレは酷い。
  んで、このつまらない戦闘の比重が意外と大きいのが困りもの。 敵が延々と湧いてくるような場面はないものの(ちなみに、倒した敵の死体はちゃんとその場に残る)、ちょっと進んでは敵が出てくるという感じ。 まぁ、さほど難易度が高くないのが救いではあるんだが。 全てノーダメージで進めるようなゲームではないんだけど、スクリーがいれば随時体力回復できるので、 ジェンが単独で突っ走ってしまわない限り、通常の戦闘でゲームオーバーになることはまずないはず。
  ジェンのもうひとつの重要な能力が変身能力。 それぞれの国で1つずつ変身できる形態が増えていき、これが、謎解き&戦闘にバリエーションをもたらす・・・はずだったに違いない。 「フェライ」は移動能力が高い形態。通常より早く走ることができ、より高いジャンプができるようになる。 「アンダイン」は水中形態。というか、このアンダイン状態でないと、足がつかない水面にすらいけなかったりする(ジェンは泳げない)。 よって、完全に別枠というか、水中に潜る場面では変身しなくちゃならないし、地上では変身を解かなければならない(ダメージを受け続ける)。 「レイス」は「タイムシフト(瞬間移動)」能力が使える形態。 これは、○ボタンを押すと時間の流れが遅くなるというもので、極々一部の謎解きでホンのちょっとだけ使う。 また、戦闘中にもステップができるようになるけど、前述の通り、これを使って攻撃を避けて・・・という戦闘ではないんだな。 ただ、レイスだと武器が射程の長いムチになるので、敵の攻撃範囲外まで退いて攻撃、なんてことはできる。 最後の「ジン」は、戦闘能力の高い形態。 戦闘中に○ボタンで二刀流と大剣を切り替えることができ、特に大剣の方は他の攻撃に比べて別格で威力が強い。 ・・・少なくとも、この変身自体に面白みがあるわけじゃないのは、これだけでも分かるはず。 ちなみに、変身中でも(レイスのタイムシフトを除けば)何かエネルギーを消費するようなことはないので、そういうムダなストレスが無いのが救いではあるが。

  一方のスクリーの最大の特徴は、特定の壁に張り付いて動き回れることだ。 あからさまな“登ってくれ”シチュエーションだけじゃなく、割とナチュラルに背景に馴染んでることもあって、これが結構侮れない。 張り付き時にはちゃんと張り付いているスクリーの後ろからの視点になってくれるので、そこらへんの感覚的な楽しさもある。
  さらに、高いところから下にロープをたらすことができるので、 “スクリーで先回りしてロープを垂らしてジェンを登らせる”なんていう流れもよくあるし、 ジェンとは違って、水中を歩くことになるので、それを使った分断もアリ。

  こういったキャラクターの分断を絡めた謎解きというか、 ゲームの流れはなかなかよくできていたと思うし、結構楽しかった。 ただし、「トゥームレイダー」なんかとは違って、ジャンプアクションは自動化されているわけで、 他にリアルタイムなアクション性を求める部分もなく、やや緊張感に欠け、間延びしたとこはある。
  また、スクリーは特定の石像に乗り移ることができ、その石像に応じたアクションを行うことになる。 この時に一定数の「ロードストーン」というアイテムを消費するので、 最初はこれが収集的というか、ある種のキー的な要素になるかと思ってたんだけど、これはかなり形骸化してしまっていた。 道中の宝箱やツボの中に隠れてたりするにも関わらず、 必要となる場所にはその周辺に必要なだけのロードストーンがあるので、最後にはかなり余っていたし、他には使い道ナシ。 そりゃ、箱庭的な作りならまだしも、例えば前の国には一切戻らないような一本道な作りでは、そういう要素にはなり得ないわな。
  で、このゲームの戦闘に次ぐ欠点は、操作性の洗練不足にある。 どうも、アクションとアクションの繋ぎがぎこちない。 例えば、スクリーが壁に張り付くときの動き、ジェンが足場に登る動きなどが、 もうちょっと通常の操作(キャラクター移動)から滑らかに繋がれば、全体的にもっとスムースな流れになったはず。 キャラクターが微妙に背景に引っかかる感じもあるし、ジェンの変身シーンもやや冗長だなぁ。 水中の操作性もマズい。ジェンのアンダイン形態では、水中を自由に泳ぐ形になるんだけども、 左右にターンするだけで視界が傾いてしまうのが困りもので、相当に自分の位置を見失いがち。 ロール操作が用意されていないので、ちょっと待つと体が水平に戻るというフォローを活用しなくちゃならないんだけども、 いちいち面倒臭いし、フォローしきれてるわけでもなく。 これがピンポイントに使われてるだけだったらまだしも、 水の国アクィスの舞台は大部分が水中ということで、この操作性にかなり悩まされることになる。

  グラフィックはなかなかパワフル。 特にエフェクト込みの細かい描写と、描き込まれた背景は印象に残る。 エフェクトでは、まず、全体的に光源処理がシッカリとなされており、背景にもキャラクターにも存在感が感じられるのがいい。 自然な感じの炎と、その熱によって空気が歪む様もよく描けてるし、どうもこの空間を歪ませる表現は十八番らしく、 水中はそのボヤケ&揺らめきによってリアルに描かれてるし、画面につく雨の水滴なんかも雰囲気がある。 木が風でしなってたり、その葉っぱがザワザワと揺れていたり、水中でも海草がユラユラと揺らめいてたり、 他にも、自然な影、松明から立ち上る煙、白い息、水中の泡、水中の小魚などなど、 特に動きのある細かい描写が非常に凝っており、それらがこの世界の雰囲気をより高めている。 ステージの広さ、バリエーションの豊富さにも目を見張るものがあり、 古い街並み、幻想的な建造物といったデザイン関係も(ホンのちょっと、アクというか毒っ気が足りないような気はするものの)、 非常に上手く、ダイナミックかつ細かいところまで素晴らしく描き込まれてる。 移動と戦闘で水増しされている感もあるけど、こういったゲームにしては結構ボリュームがある方じゃないかな。 それぞれの国ごとに色彩に統一感があるのも良かった。 様々なキャラクターのデザインも(洋ゲーらしい濃さではあるものの)それぞれに個性があって、 モデリング自体は結構凡庸な感じでありながらも全体的には好印象。
  また、このゲームは非常にイベントシーンの比重が大きいゲームでもある (ちなみにオープニングを除けば全てリアルタイムポリゴン)。 イベントシーン重視といっても、「ソウルリーバー」シリーズのような理屈っぽさはあまりなく、 割とストレートにキャラクターを描写しているといっていいだろう。 そして、主人公ジェンとスクリーの掛け合いの楽しさが、このゲーム最大のポイント。 生意気なんだけど実は心優しいジェンと、 絵的には「ハリー・ポッター」のドビーみたいなんだけど冷静で大人なスクリーは非常にいいコンビで、 特にジェンのセリフにはニヤリとさせられることが多い。 本作のイベントシーンは、基本的なグラフィックの質の高さに加え、演技、カメラワークもシッカリしてるけど、 何よりボイスアクトの素晴らしさが際立っていると思う。
  ストーリーの方は、序盤でほのめかされていたような“秩序と混沌の調和”みたいな部分は結局おざなりになってしまい、 単純な善悪二元論に落ち着いてしまったところや、最後はやや盛り上がりに欠けるところはあったけども、 それぞれの国の描写&イベントの流れは十分に面白かった。


  ゲーム的なダメさ、物足りなさはあるものの、幻想世界の冒険譚を楽しむという点に限れば、 キャラ良し、グラフィック良し、ストーリー展開良しで、結構楽しめた一本だった。 次のPS2『ゴーストハンター』にもやや興味が出てきたぞ、と。

2004年8月12日記載