REVIEW流行り神 警視庁怪異事件ファイル
PlayStation2
2004年8月5日発売発売:日本一ソフトウェア  

  意外と珍しいホラーを題材としたテキスト系ADVで、 都市伝説をネタに、オカルト的な解決と科学的な解決にストーリーが分岐するという話だったし、 なかなか印象的なグラフィックだったもんで、個人的にはかなり期待していた一本だったりする。 開発は、PS2『ファントムブレイブ』、PS2『魔界戦記ディスガイア』などで有名な日本一ソフトウェア。 当然(?)ここのゲームをプレイするのは今回が初めて。 あまりシナリオ面でのいい評判は聞いたことがなかったので、 ちょっと心配してたんだけど、まぁゲームのジャンルも違うし、そこらへんは割り切ってみた。


  ゲームの基本形式は音声のないテキスト系ADVで、 いわゆるコマンドが存在するタイプではなく、そんなに多くない程度の選択肢が存在するだけのもの。 画面全体をテキストが占めるわけではないが、形としてはノベルタイプと言ってしまって差し支えないだろう。
  幾つかのエピソードに分かれている形で、 まず導入的な意味合いが強い「第零話 チェーンメール」、そして、「第一話 コックリさん」「第二話 鬼」「最終話 名前の無い駅」を次々とクリアしていくことになり、 その後、プレイ状況に応じて、各サブキャラを主人公にした「霧崎編」「人見編」「ゆうか編」が登場し、最後に「退魔編」が出るとのこと。 各話クリア時にはS〜Dの5段階でランク付けされる。 自分は人見編まで出現させてクリア(全シナリオSランク)した状況。 退魔編はともかく、ゆうか編はプレイしたかったんだけど、 フラグとなるデータベース埋め(≒既読率)があまりにも面倒臭く、断念することにした(現時点でのデータベース取得率は66%)。 ちなみに、セーブデータのプレイ時間は14時間弱。 ただし、このプレイ時間は、システムデータとしてのプレイ時間ではなくあくまでもセーブデータとしてのプレイ時間だし (つまり、ロードして再開すればそのプレイデータの時間から加算されていくことになる)、 2回目以降は既読スキップがタルいもんでスキップさせたままTVを見てたりしたし、 結構ゲームを放ったままメモを取ってた時間もあるしと、かなりアテにならんと思うので、参考程度にしといてほしい。

  極めてオーソドックスなゲーム形式だけども、独自のシステムとして名づけられているものも幾つかあるので、それらをチェックしていこう。
  まずは「推理ロジック」。 話を進めていく中で時折「キーワード」をゲットしていき、 人物相関図的な推理ロジック画面で、その人間関係の空欄にキーワードを当てはめていくというもの。 推理ロジック画面には随時移れるんだけど、シナリオの最終段階では強制的に推理ロジック画面に移行し、 その当てはめた内容によって推理が評価され、これがシナリオクリア時のランクに大きく関わってくるようだ。 とりあえず、ゲームシステムとしてはさほど評価できるものではない。 というより、ややゲームの足を引っ張ってるように思う。 最終的な推理では、この推理ロジックで強引に話をまとめてしまうような傾向はあるし、 シナリオのランクがストーリーの理解とイコールにならないのも、こういう安易な判定方法を設けてしまったからゆえにでもあるだろう。 ただ、登場人物の名前と顔と基本事項が書かれていることもあって、 ストーリーを追っていく中で、人間関係を整理・把握するという点では自分は結構重宝した。 こういう図式的な説明ってのは、特にこういうサスペンスでは便利であるにも関わらず、 これまで意外と行われてこなかったとこだと思うので、自分としては評価したいところ。
  お次の「カリッジ・ポイント」は、各シナリオには予めカリッジポイントが設定されており、 特に勇気が必要となる選択肢を選ぶごとに1つずつ消費し、 カリッジポイントがゼロになるとそのような選択肢は選択できないようになってしまうというもの。 このカリッジポイントは各話共に5個前後だし、実際にカリッジ・ポイントがゼロになるってのは、普通にゲームを進めていく限りでは見当たらない。 あくまでも“この選択肢には勇気が必要だぞ!”とか、選択後の“今、主人公は勇気を出して選択したんだぞ!”といったアピール程度のものと考えてよいだろう。 まぁ、あんまりゲーム的に絡めてしまうとゲームプレイが必要以上に面倒臭くなる可能性大だし、これはこれで意味がないとは思わないのでOKでしょ。
  そして「セルフ・クエスチョン」。 これは探偵推理モノではありがちな自問自答の推理モード。 あえて銘打つほどのもんじゃないけど、これもシナリオクリア後のランク付けに関わってくるようなので、そこらへんを考慮してのことだろう。 あまりにも無意味で素っ頓狂な選択肢があって、あえてセルフクエスチョンにした意味に疑問が湧く場面もあったが、まぁ大した問題じゃない。
  とまぁ、やっぱりゲームシステム的な特徴を持ったADVではないということになる。
  また、キーワードと同じように、特定の単語の解説がデータベースに登録されるという要素もある。 丁度(データベース化されるかどうかは別にして、内容的には)サウンドノベル『街』の「TIP」のようなもの。 都市伝説、オカルト、警察などについてのウンチクが満載で、これがかなり楽しい (特にゲーム本編では不甲斐なかった都市伝説関係が良い)。 その場その場でチェックすると話の流れを止めてしまうこともあるので、データベース化されるのも嬉しいところなんだけど、 穴埋め的にアイコンが表示されるだけで、カーソルを合わせるとそのタイトルが表示されるというものなので、 後から「○○を読みたい」ってなときに探し難いのが難点っちゃ難点。 その性質を考えれば、タイトルをズラーッと並べた形の方がよかったんじゃないかと思う。

  次は、絵、音、文章といったパーツをチェックしていこう。
  グラフィックそのものは非常にキャッチーで良かったと思う。 手塗り風の彩色が丁寧に行われているタイプで、キャラクターのデザインもそれぞれにちゃんと個性があって、かといって必要以上にアニメチックにはなっていない。 ただし、一応、カットイン的な使われ方も一部でされてるとはいえ、見せ方の工夫という点では、残念ながら期待したほどではなかったな。 一枚絵の場面が豊富、というより、その一枚絵に頼りすぎな感がある。 特に頂けなかったのが、バストアップ絵が基本的に各キャラ固定の1パターンしかないこと。 自分の理想を言えば、そのバストアップ絵を背景と連動させるような工夫を考えてほしいんだけど、表情の変化すらないというのは、最低限の表現力という意味で問題がある。 一部、そのバストアップ絵が必要以上に印象的になってしまってるキャラもいたし。 これは表現力というより、説明力という方が妥当なとこで、 キャラクターに限らず、このゲームのグラフィックはやや説明力に欠ける傾向がある (ただし、これはテキストとの兼ね合いもあるので、即ダメっていう話ではないのだが)。
  音関係は、無難としておきたいところか。 ダラダラとBGMを垂れ流しにするようなこともないし、環境音などでの手抜きもさほど見当たらない。 ただし、逆に音が印象に残る場面も皆無に近く、題材としての重要度からすれば、ちょっと物足りなさが残るのも事実だったりする。
  テキストそのものの質は低くないと思う。 読みやすい上に力が感じられるという実に良い感じのフォントがプラスになってる部分もありそうだけど、 文章的なツッコミどころは特に見当たらなかったし、むしろ結構上手いんじゃないかと思ったほど。 テキスト表示のテンポを変える工夫もチラホラと見られる。 これはもちろん、脚本的な評価とはまた別の話。 ストーリーとは違った側面から言えば、どうも全体的に描写が淡白に思えてならない。 例えば、美人であることを美人の一言で済ましてしまうようなずさんさというか。 おそらく、グラフィックが付くことをアテにした部分もあるに違いない。 が、そのグラフィックがどうにも説明力に欠けるので、淡白に感じられてしまうんだろう。 確かに、ここらへんは難しいところではある。 独白形式であまりクドクドと語られても問題があるだろうし、ゲーム中の文章は(例えノベル形式でも)小説などとは同列に語るべきじゃない。 ただ、独白形式は必要以上に心情描写に流れやすいこと、そして、恐怖感ってのが実は心情描写からは生まれにくいことを考えれば、 もうちょっと状況描写に力を入れた方がよかったんじゃないかと思う。 ここらへんは、このゲームに恐怖感が欠落してる原因のひとつなんじゃないだろうか (もちろん音の表現力やシナリオの方向性という問題の方が大きそうだけど)。

  んじゃ、肝心のシナリオの方を見ていこう。
  主人公は、超常的なファクターを含む事件を担当する特殊部署 「警視庁警察史編纂室」に所属する新米刑事「風海 純也」 (ちなみに、この主人公の名前のみ変更可。自分は“風海”ってのに(なくはない名前だというのは分かるんだけど)やや違和感を感じたので、“風見”と変更してプレイした)。 パートナーであるイカツイ熱血漢刑事「小暮 宗一郎」と共に超常事件の調査を行う。 んまぁ、早い話が和製「X-FILES」ね。 他の主要キャラクターとしては、主人公の血の繋がってない兄で民俗学者の「霧崎 水明」、 霧崎の友人であり主人公とも面識のある監察医「式部 人見」がいて、 この二人が、このゲームの“オカルトか、科学か”っていう部分の象徴と言えるだろう。
  特徴としては、オカルトの中でもいわゆる都市伝説を看板に掲げていること、 主人公は警察官なわけで、調査する対象には必ず事件性があるということ。 そして、常に“オカルトか、科学か”という見方をしていくことが挙げられる。 で、物語の途中に大きな分岐点があって、そこの選択によってオカルト編と科学編にシナリオが分岐していくという作り。
  この分岐は、事件の性質そのものが変わるわけではなく、 1つの同じ事件を、オカルト編ではオカルト的な見地から事件を見た側面、科学編では科学的な見地から事件を見た側面を描いており、 おそらく、両方を合わせれば物語の全容が明らかになるようなものを目指したんだろう。
  まず、そういう方向性からして、オカルトならオカルトで、科学なら科学で完結するようなものを期待していた自分にとっては、肩透かし。
  しかし、より問題だったのは、科学編をクリアして、オカルト編をクリアしても、結構重要なところが謎として残ってしまうことがあること。 それがいかにもオカルト話的な余韻を残すようなものだったらまだしも、「いやいや、○○はどうなってたわけ?」って感じ。 オカルトだったらウヤムヤでいいや、ではなく、オカルトならオカルトなりのまとまりがほしかった。
  そういう方向性である以上、どの道、オカルト肯定にならざるを得ないわけで、 であれば、どうやってオカルト要素にリアリティ(実在感)を持たせるかが重要なポイントだったにも関わらず、 そこに完全に失敗しており、オカルトの存在を示そうという説得が、ことごとく空回りしている。 確かに、過去の事件を調査するということになると、どうしても実際に起きてる現象そのものより、能書きがメインにならざるを得ないのはわかる。 が、そのやり方が稚拙すぎ。 “(現状の)科学では説明できない現象がある”を、“(普遍的な意味での)科学では〜”ということにし、 それをオカルト支持の材料とするといった、陳腐な流れ。 ゲーム本編ではないけども、データベースの「ロズウェル」はそのひとつの典型で、 懐疑主義者が“地球外生命体の存在の否定”を主張してるような曲解をしてしまう (正統的な懐疑主義者が主張してるのは“それが地球に到達してる可能性の否定”なはず)。 とどのつまり、このゲーム内にはまともなオカルト懐疑主義者がいないのよ。 一見それっぽい人見はただのオカルト否定主義者。パートナーの小暮は単なる恐怖心からオカルトを極端に否定する。 この二人がオカルトを否定しようとすればするほど、それがオカルト肯定の手段であることがミエミエになってしまう。 実は霧崎の方がマトモな懐疑主義者的なスタンスなんだけど、こちらは一線を越えるととたんにオカルトに傾倒してしまうからなぁ。
  で、そのオカルトにしても、実際のところ都市伝説は飾りで、幽霊、怨霊といった割と古典的なオカルト要素が顔を出すことが多くなっている。 であるにも関わらず、日本の土着的な描写(神仏、自然など)が欠けてるので、それらに説得力というか存在感が生まれてこない。 ここらへんは、都市伝説っていう看板を下ろすわけにはいかなかったろうし、 やむを得ない部分ではあるんだけど、だったらだったでもうちょっとそういうものに配慮するべきだったろう。 個人的には、式神なんてのを出してきちゃうのは非常に理解に苦しむところだ(っていうか、あれはオカルトなわけ?)。

  最後に、システム周りに関して。
  そもそもがオカルトor科学っていう分岐をウリにしてるわけで、 その上、隠しシナリオの出現シナリオが既読率に近いということを考えれば、繰り返しプレイすることを前提にしてるとしてよいだろう。 普通の選択肢にしても、選択肢からは実際の行動が読めないような場面も多々あるし。 にしては繰り返しプレイがしにくいのが非常に困りモノ。 例えば、セーブデータはたったの3箇所だけ。 基本的にそれほど沢山セーブしない自分ですら、不安になってくる。
  しかも、文章スキップの速度が遅すぎ。これには本当にマイッタ。 そもそも選択肢が多いADVではないだけに、 “文章スキップしたらTVのチャンネルを変えて、そろそろかな?とゲーム画面に戻ったらまだだった”みたいなことに。 また、既読かどうかの判定が大雑把なようで、ルート的な違いなのか、一度読んだのと全く同じ内容であろうにも関わらず文章がスキップできないなんてことも。 ここらへんがもうちょっとシッカリしてれば(というか、最低限、もっと高速で文章がスキップできれば)、 もっと先までプレイしたろうし、全てのシナリオをオカルト編でも試す気になれたに違いないのに。


  結局、このゲームの“オカルトか、科学か”ってのは、“オカルトファンタジーか、疑似科学か”ってとこなんだよなぁ。 看板であるはずの都市伝説もどっかに吹っ飛んじゃってて。 確かに、都市伝説、サスペンス(事件性)、オカルトor科学、そういったテーマを組み合わせる難しさは分かる。 しかし、難しいゆえに挑戦したという心意気は伝わらず、難しさを理解しないまま作られたという印象が拭えない
  ただ、掲げた看板が重すぎただけとも思うし、テキストADVっていう観点から言えば、もう一本くらいはここのを見てみたい。 オカルトを扱うにしても、もうちょっとストレートにオカルトサスペンスにしちゃえば、また話は変わってくるかもしれないし。

2004年9月13日記載