REVIEWトゥームレイダー 美しき逃亡者
PlayStation2
2003年10月23日発売発売:アイドス  開発:Core Design  

  日本でもそこそこ知名度のある「トゥームレイダー」シリーズの第6弾『Tomb Raider: The Angel of Darkness』のローカライズ版。
  これまでの5作はPS1でもリリースされていたんだけど、今回からPS2をベースにグラフィックエンジンを開発しなおし、 さらに、グラフィックに留まらない、全面的な内容刷新がうたわれていた。 自分も最初に話を聞いたときは非常に期待してたんだけど、どうも情報が明らかになるにつれ、どんどん怪しい気配が・・・。 で、欧米では(2度の延期の末)2003年6月にリリースされたものの、かなり多発するバグで叩かれた上に、ゲーム内容自体そのものの評価も散々。 やや遅れてのリリースとなった日本語版は、そのスケジュールの遅れが幸いしたのか、結構バグフィックスはされているという話。 まぁ、過大な期待はしてないんだけども、一応、シリーズ通してプレイしているもんで、 隙があったらプレイしようとは思ってて、それが今頃になってしまったわけだ。
  ちなみに、海外のセールス的にはそこそこ成功しちゃったようだけども、前述の通り評判は散々。 映画の2作目も大コケしたのもこのゲームの評判が原因だとか言われる始末。 予定されていた次回作の製作は(というか3部作の構想そのものが)一旦キャンセルされ、 開発をCore Designから(「Legacy of Kain」シリーズの)Crystal Dynamicsに変更し、 再出発する予定となっているが、いまだに具体的な話は出てきてない模様。


  ストーリーは4作目のラストから繋がっている。 4作目『Tomb Raider: The Last Revelation』のラストは、ララがエジプトで遺跡の崩落に巻き込まれ、恩師「フォン・クロイ」が彼女に手を伸ばすが、 それが届かずに、ララは遺跡の中に飲み込まれてしまう・・・というものだった。 その後、彼女はなんとか自力で脱出してくるものの、フォン・クロイが自分を見捨てたという事実に打ちのめされてしまい、人間不信に陥り、クラい人間になってしまったとのこと。 そんなララの元にパリのフォン・クロイから「手助けしてほしい」という連絡があり、パリに向ったララはフォン・クロイと会うものの、その申し出を無下に断る。 が、その直後にフォン・クロイは何者かによって殺害されてしまい、ララはその容疑者として疑われることになってしまう。 なんとか逃げ延び、フォン・クロイが関わっていた仕事を調べ、事の真相を明らかにするのだ!ってな導入。

  大きくうたわれていたはずの刷新ポイントは主に、 (従来のキャラ背後固定方式ではなく)スティックを入れた方向に進む操作系に変更成長要素の追加会話を選択することでストーリーが分岐する、など。 他にも、よりララ・クロフトの心情が描かれるようになる(恋愛ネタもあり?)とか、 ララ以外のキャラも操作可になるとか、アイテムの売り買いの要素が追加されるとか、素手による戦闘が追加されるとか、ステルス要素が追加されるとか、 イロイロと言われてたわけだけども、そこらへんの実態を見ていけば、このゲームのダメさがよくわかるに違いない。

  元々はアナログスティックのない(というか、標準装備でない)時代のゲームということで、 前作までの基本的な操作&視点は、カメラをキャラの背後にガッチリと固定し、十字キーで前身後退左右旋回というものだった。 それが、今のアクションゲームのスタンダードに合わせ、スティックを入れる方向に進むという操作方法に変更となったのだが・・・。 確かに、基本的な操作は、左スティックでスティックを入れた方向にキャラクター(ララ)を動かし、 右スティックで視点操作、R3ボタンでいわゆるカメラリセットという、比較的オーソドックスなものになった。 ・・・が、結論から言って、このゲームがダメな最大のポイントはこの基本的な部分の操作性にあるといっていいだろう。 その操作感は想像していたものとは全く違い、これまでの操作感をそのままアナログスティックに持ってきただけな感覚。 停止時に進む方向にスティックを入れると、まずクルッとそっちに旋回してから歩き出す。 まぁ、アナログスティックを用いたゲームでもそういう表示がされるゲームは多いんだけども、ここまで旋回がハッキリとクドく描写されるゲームは他にないだろう。 移動スピードも走る・歩くの二段階な上に、実に小回りがきかない。旋回するということで、瞬時に向きたい方向に向けない。 大体、L1で「歩くモード」になるという補助操作がある時点で、なんでこういう操作に変更したんだ?って話だ。 さらに、この歩くモードでは、通常の歩き時とは違って、キャラの左右方向にスティックを入れれば横歩き、キャラの後ろにスティックを入れれば後退になる。 足場からジャンプするときなど、これまでのシリーズと同じように自分が向いている方向が結構重要になってるので、そういうフォローが必要となっているわけ。 また、ハシゴに登ったりするときはスティックを入れるだけになったんだけど、その代わりにそのハシゴと正対している必要があって、これまたバカにならない鬱陶しさ。 この操作系だと、逆に意図的に向きだけを変えるのが難しいので、簡略化を狙ったはずの操作系の変更であろうにも関わらず、逆に面倒臭さが生じてしまっているという。 操作系を変えるからには、既存のトゥームレイダーに新しい操作系を当てはめるんじゃなく、 新しい操作系にトゥームレイダーを当てはめていかなければならない(ゲーム性もそれに応じて変えていかなければならない)。 そもそもの考え方がおかしいっつーの。 とにかく、全体的にアクションの繋ぎがギコチなく、どうにもギクシャクしてテンポが崩れてる。
  一方、右スティックによる視点操作の操作感は、 旋回速度の遅さが気になるものの、カメラリセットが瞬時に切り替わる形なので、それでなんとかフォローされる。 背景にカメラがひっかかるときは自然にズームインするようになっており、操作感に支障をきたすことがないのもいい。 問題は、走り状態だとなぜか上方に視点を移せないこと。 見下ろすことはできるのに、なぜか従来のシリーズ以上には上を向くことができない。 これが地味ながらかなり鬱陶しい。視点を操作しながらキャラクターを操作するゲームなんだっていうことに対する理解不足が原因だろう。 ちなみに、もちろん停止状態であればある程度は上を向ける。 “ある程度”っていう限界はあるんだけど、これはカメラが地面に引っかかるからであって、移動と地形の兼ね合いが重要なアクションゲームではやむを得ない仕様ではある。 つまり、そういう場合にキャラをカメラに寄せるような形にすべきなのかっていうと疑問。 ・・・でも、それも停止時に限るんだったら問題ないよなぁ。 あと視点関係では、ちょいちょいと存在する視点が固定される場所にも問題あり。 確かに意図が分かる場所もあるけど、逆に言うとそこまでの必要性が感じられないところも少なくないし、 なんせR2+右スティックの見回しモードもきかないので、状況把握に苦労することもしばしば。 これまでとは違って視点が操作に影響を及ぼすのだから、そういう場面はより慎重に設けなければならなかったろう。
  当然のようにジャンプ(×ボタン)の感覚もこれまでと同様。 ジャンプの距離は固定だし、キャラの横方向にスティックを入れれば側転ジャンプ、後ろ方向ならバック転ジャンプとなり、 これらは前方ジャンプと違って方向の微調整も不可。 んまぁ、ここらへんはやむを得ないところか。 そもそもジャンプ中にジャンプの距離を変えられるってのが不自然なんだし、 ジャンプするからには固定された距離を跳ぶっていうある種のデジタルな謎解きが、このゲームの根幹にあったと思うので・・・と言いたい所だが、 別の要素によってそれが反故にされてるので、やっぱり「何考えてんだ?」となってしまう(これは後述する)。 ちなみに、L1+×で距離固定の小ジャンプができる。だから、こういうフォローが必要な時点でダメなんだって・・・。
  L1で切り替えられる「ステルスモード」は忍び足で足音を消して動く状態で、壁に張り付いたりもできる (なぜか走り状態と同じく上を向けなくなってしまうが)。 ただいかんせん、ステルス要素そのものが激しく消化不良で、 移動中の敵の背後からは即死攻撃が行えないので活躍の機会が非常に限られているし、そもそも無音で倒すメリットがあまりない。 んまぁ、こういう操作性でステルス性に凝られても困るが、最低限、歩くモードかステルスモードどっちかは削ってほしかったな。
  そもそも、操作の簡易化についてちゃんと考えているんだろうか、と。 スティックを入れるだけでハシゴに登れるようにするとか、鉄柵を(下が奈落であろうがお構いなしに)乗り越えられるようにするとか、そういうことをするのであれば、 その前に、例えば、しゃがみからの四つん這い移動に加えて、しゃがみからL2での腹ばいとほふく前身は必要だったのかとか、 活躍の場がない□による180°ターンも必要だったのかといった、使用ボタン数を減らす検討をしてほしかったところだ。 特に変わったアクションがあるわけじゃないのに、 LRボタン4つにもそれぞれ別個の役割を設けるなどしてボタンをフルに使わせるのは異常じゃないか?  R2なんて見回し(停止状態)がダッシュ(走り時)と共用なんていうイビツさだし。

  アクションゲームとして楽しくない最大の原因が操作性にあるとすれば、 パズル的なゲームの流れの足を一番引っ張ってしまったのが、ステータスの成長要素だったりする。 これは、腕力が上がったり(ぶら下がってる時間が延びたり、動かせるものが増えたりする)、 ジャンプ力が上がったりするというものなんだけども、まず、ジャンプの距離が一定じゃないことにより、 跳躍可能な距離が感覚的に分かりづらいというのが第一。 上でも書いたように、ある程度デジタルな考え方でジャンプアクションをこなせるのが、 このゲームの長所とは言わないまでも特徴だったわけで、そこらへんを理解してるのか、と。 しかし、それ以上に問題なのが、能力上昇のタイミングに脈絡が無さすぎること。 何となしに木箱を動かしたりしたときに腕力が上がったりする。 そしてそれが謎解きの筋道に組み込まれちゃってるのが非常にいただけない。 なんせ、能力上昇のタイミングは察知しろって方がムリなことがほとんどな上に、ゲームの流れにも関係なかったりすることすらある (開ける必要性のないドアを蹴破ったり、動かす必然性のない木箱を動かさなければならなかったりする)ので、 これをキッカケに微妙に詰まることがしばしば。 結局、“製作者側としてはラクにプレイヤーの移動に制限を設けられるんだろうなぁ”っていう程度の要素でしかなく、 意味(面白み)がないどころか、足を引っ張ってるようじゃ話にならん。

  ぶら下がれる時間に制限が付いたことを除けば、ゲーム中の展開そのものはこれまでと似たような流れ。 例のごとく、“○○へ行くために××をする”より“××をしたら○○へ進めた”という感じが強く、 目的を見据えて手段を考えるというより、目の前の手段を講じたら目的が達成できたというもので、 パズル色は薄く、先に進むためのルートを見つけていくのがメインなんだけども、 美しい背景と相まって、(前述の成長要素に目をつぶれば)ここに限定すればそこそこ楽しい。
  そして、会話の選択に関して。 今回はゲーム中にララと他のキャラクターとの会話シーンがあって、そこで会話を選択する場面がちょいちょいと出てくる。 リリース前は、これによってゲームの展開が変わってくるという話だったんだけども、これまたスンゲェ消化不足というか、非常に取って付けたような感じ。 ゲーム展開に大した変化がないのはまだしも、選択によって即ゲームオーバーになってきちゃうシーンなんかがあって、失笑モノだった。 んまぁ、ゲームの足を大きく引っ張ってるってほどじゃないが、少なくとも何のプラスになってないことは確か。
  会話そのものの内容は、あまりにも説明的なものが多すぎるという印象。 ちなみに、ララの声は英語音声より日本語音声の方が大人っぽいし、 英語では訛りがキツく、その意図するところが理解できない自分としては、日本語音声という選択もアリだった。 ボイスアクトも悪くないと思う。 ただし、セリフの翻訳に難アリな感じで、ただでさえ説明的な内容が、より一層説明的に感じられてしまうのが困りもの。 結局、大部分を英語音声でプレイしていった。
  ストーリーの方は、古代遺跡を絡めながら超常的な存在・能力を絡めてくるという、シリーズではお馴染みの路線か。 (少なくともこのシリーズとしては)奇をてらった感はない。 ただし、説明的でありながら、やや説明不足なのが気になるところで、 例えば、序盤からちょいちょいと出てくる「モンストラム」っていう単語が、何だかよくわからない。説明書にも何も書かれてない。 結局、パッケージ裏に「しかもパリには連続殺人鬼「モンストラム」の噂が・・・」と書かれてることに気付いたのは、ゲームも終盤にさしかかった頃だった・・・。 いや、にしても「それだけかよ!」って話だが。 で、今回はララ・クラフトの心情も描写していくという話だったんだけど、 肝心要のララ・クロフトのフォン・クロイに対する思い入れが上手く描けておらず、大した効果は得られていない。 そもそも、ララのキャラクターがいまいちよくわからない。 例えば、これは2作目くらいからずっと気になっていたことなんだけど、現代社会を舞台にする場面で、人を銃で撃ち殺すことに対する安易さ (ルーブル美術館の普通の警備員を撃ち殺しちゃうってのはどうなのか)。 ストーリー性を重視していくのであれば、ゲームである以上、ストーリーはイベントシーン以外でも語られてしまうことを、もうちょっとよく考えていくべきだろう。 ちなみに、恋愛要素は本当に匂わせた程度。無難な選択だ。
  売り買い要素に関しては、これまた全くゲーム的に消化できてない。 なんせ、ショップがあるのは序盤のパリだけだし、そこにしても売り買いする機会なんて本当に限られてる。 今回はいわゆるシークレットには弾薬や回復薬といった通常のアイテムではなく、 高く売れるアイテムを配置することで価値を出そうとしてたはずなのに、その狙いは全く達成されておらず、 序盤を過ぎればシークレット的な場所そのものが見つからないという、なんとも困った状況に。 個人的には大して気にしないけど、シリーズ唯一のやり込み要素と言える点だっただけに、残念な話ではある。
  今回はサブ主人公的な存在として「カーティス」という男が同じ事件を追うことになっていて、終盤でちょいと彼を操作する場面も出てくる。 しかし、イベントシーンでは、超能力的な能力を発動させ、ナイフ付きの円盤を自在に空中に浮かせて攻撃しちゃったりする彼も、 自分が操作するとララと全く同じ操作&性能。勿体無いというか、理解に苦しむというか。
  素手での攻撃も、まぁオマケみたいなもん。 今回は弾丸無制限の基本装備がなく、弾丸を節約するためには素手で敵を倒さなくちゃならないのかと思いきや、 弾丸が尽きるようなシチェーションはこれといって見当たらず。 さらに、格闘の攻防は全くゲームになっていない大雑把なものだし、爽快感もなく、リスクが大きいだけ。 ちなみに、銃による戦闘そのものも大味で面白みに欠ける。 これはシリーズを通じてのことだからまだいいとしても、今回はボス戦的なイベント戦が総じて酷い。 何か仕掛けがあると思わせて単に撃つだけだったり、単純な攻撃を避けるだけなのに非常に間延びしてたり・・・。
  ま、うたわれていた刷新要素は笑っちゃうくらいにことごとく不発で、 結局、このシリーズなりの(程度ではなく質的な)面白さしか残らなかったわけだ。 そういう意味では、前作の大車輪のようなスピード感のある特殊アクションがなくなってしまったり、 何かを撃って状況を打破するという場面がなくなってしまったのは残念だった。 特に後者は、銃をメインで扱う以上は、メリハリを生むためにも外せない要素だと思うんだけどな。

  グラフィックは、背景に限ればかなり綺麗に描けてると思う。 舞台も多彩だし、細かいパーツの描き込み、自然の描写なども優秀。 しかし、グラフィックの総合的なイメージがそれほどよくないのは、 あい変わらずなララのグラフィックによるところが大きいんじゃないだろうか。 絵の質もさることながら、動きの印象がこれまでと変わらないのも痛いところ。 リアルタイムポリゴンと思われるイベントシーンのデキもなかなか優秀で、特にアクション的な場面では結構見栄えがする。 でも、登場人物の中で主人公ララの顔だけがなんか浮いてるんだよなぁ・・・。 絵的に確立しちゃってるキャラだからってのはわかるんだけど、 割と写実的なモデリングの他キャラクターの中に入ると、違和感しか残らない。
  概ね60fpsで進行するのは実に結構な事なんだけども、問題は処理落ちが発生する場面。 多くの海外ゲームがコマ落ちで対処する(というか、そもそもフレームレート自体が変動するという作り)のに対し、 本作はマトモに処理落ちしてしまい、ゲームの流れが極端にスローになってしまう。 頻度は高くなく、さすがにアクション性を要求される場面での処理落ちはなかったはずなので、大きな問題ではないにしろ、気になってしまうのは確か。 PCでも同時に作られてたはずなんで、この仕様はちと理解に苦しむな。
  より細かいところでは、視点操作が左右のみならず上下もコンフィグで変更不可とか、 ゲーム起動時に音声言語の設定が反映されず、なぜか必ず日本語音声になってしまうという、 アホ仕様としては割と典型的なところを押さえつつ、字幕が長く残りすぎたり、早く消えすぎたりするのも気になったぞ、と。


  いやいや、なるほど、話にならないお粗末なシロモノものだった。 刷新を狙ったところはことごとく酷い外しようで、 結局、このシリーズ従来通りの面白さ(&パワーアップしたグラフィック)だけに、僅かな面白みを見出せるわけだけども、 そこに救いを見出す以上に「何考えて作ったんだ?」っていう疑問が頭の中を巡ってしまうという。 さて、これってデベロッパだけの問題なんかねぇ。

2004年9月13日記載