REVIEWプリンス・オブ・ペルシャ 〜時間の砂〜
PlayStation2
2004年9月2日発売発売:SCE  海外発売:Ubi Soft  開発:Ubi Soft Montreal  

  1989年appleIIでリリースされ、その後あらゆるプラットフォームに移植された『Prince of Persia』は、 非常に滑らかなキャラクターの動き、日本のアクションゲーム(例えば『スーパーマリオブラザーズ』)とは全くコンセプトの違うアクション性、 そしてやや残虐な描写などなどの要素により、海外アクションゲームの古典的名作として、日本のゲーマーにも結構知名度のあるタイトルだ。 自分も当時、PC-98でプレイして衝撃を受けたし、後に、コンシューマ機(メガCDだったかスーパーファミコンだったか失念)でもう一度プレイし直してたりもする。
  そのアクションのコンセプトは、 2DゲームではADV色の強い『アウターワールド(Out of This World)』(91年)や『フラッシュバック』(92年)、 パズル色の強い『エイブ・ア・ゴーゴー(Oddworld: Abe's Oddysee)』(97年)、3Dゲームではあの『トゥームレイダー』(96年)などに引き継がれていった反面、 肝心の本家の方を見てみると、続編『Prince of Persia 2』(93年)は代わり映えのしない内容でパッとせず、 3D化した3作目『Prince of Persia 3D』(99年)もほとんど話題にならなかった記憶がある。
  このまま忘れ去られていくタイトルかと思われていたのだが、2003年3月に突然、Ubi Softが新作『Prince of Persia: The Sands of Time』の製作を発表。 オリジナル版の原作者Jordan Mechner氏(ちなみに、『カラテカ』を作ったのもこの人)の監修の元、 前年冬のXB『スプリンターセル』で世間をアッと言わせたUbi Soft Montrealが開発を担当するということで、一気に注目のタイトルとなった。 結局、北米では2003年11月にPS2版からXB版、GC版、PC版とほとんど間を置かずにリリース(さらに、別モノだがGBA版もアリ)。 ただ、メディアから非常に高い評価を受け、実際にそれなりに売れたようなんだけども、年末のビッグタイトルとしては、やや期待ハズレのセールスだったらしい。
  自分としては、Xboxへのローカライズを積極的に行っているUbiのゲームなだけに、 国内Xbox版が出るのを待って海外Xbox版(リージョンフリー仕様)をスルーしてたんだけど、 意外なことに、SCEJが国内の販売権を得、ローカライズしてリリースすることになった。 当初は、この夏SCEのイチ押しタイトルというフレコミで、実際に、体験版を配布したり、大量のスポットCMも放映されたらしいが・・・。 Xbox版にするかどうか迷ったままスルーしちゃってた自分も、 昨年末に店頭で見かけ「イカンイカン、忘れる前に買っておかんと・・・」と、このPS2版をプレイすることにした。


  ゲームの流れの方は、アイテムを持ち歩いて使うような仕掛けがなく、ジャンプアクションやスイッチなどの仕掛けをこなしていくもの。 イメージとしてはPS2『ICO』なんかに一番近いだろう。 実は、ビジュアル的なイメージも含めて『ICO』に通ずる部分は非常に大きいんだけど、 その『ICO』も元祖『プリンス・オブ・ペルシャ』リスペクト的な発想から生まれたゲームだと思うし、異母兄弟みたいなものと言えるかもしれない。
  視点関係の操作は、右スティックでの視点操作(R3ボタンでカメラリセット)を基本に、 R2で主観視点への切り替えと、L2で「遠方視点」への切り替えが用意されている。
  右スティックによる視点操作は、上下はそのまま視点の上下ではなく、キャラにカメラが寄るor引くというもの。 カメラが引くと自動的にやや上から見下ろす形になってくれるが、逆に、上方をチェックするには主観視点を用いなければならないということになり、 ややクセがあるとも言えるけど、ジャンプアクションがメインとなれば、キャラの足元が見えないような視点にはしたくなかったのだろうし、これはこれでひとつの選択としてアリだろう。 ただ、その基本的な操作感にはやや難アリで、結構カメラが地形に引っ掛かり気味なのが気になる。 つまり、カメラが地形にぶつかった時に、操作感に違和感が残ってしまうというもの。これは頂けない。 あらゆる状況で、右スティックを入れっ放しにすれば視点の回転速度は一定になるのが望ましい。 もっとも、全体的に開けた場所が多いので、そこまでストレスになることもないはずで、自動的にカメラを調整する箇所も結構あるのだが、そこらへんの塩梅も上手く作られていると思う。 あと、カメラの動きもやや遅いような気がするが、これはカメラリセット操作を併用することで対処できる問題だろう。
  面白いのが、L2で移行する遠方視点。 これは、状況に応じてキャラから離れた場所にカメラが固定される(もちろん、パンしてキャラを追ってはくれるし、右スティックで主導でスームイン・アウトは可能)というもので、 丁度、『ICO』の通常時の視点を想像すると分かりやすいと思う。 主観視点とはまた違った形で状況把握の大きな助けとなってくれるので重宝するし、逆に言えば、これをあくまでフォローという形にして、メインに据えなかったのも正解だった。
  アクション関係は、×が一応ジャンプボタン。というのも、段差がないところで移動中に×を押すと前転になってしまうので。 好きなときにジャンプできないのはちと寂しいが、操作系の簡略化という意味では正解だろう。 段差がないところでも、柱に向って走りながらジャンプすると、ちゃんとその柱にジャンプして掴まってくれたりと、そういう自動化も丁寧に行われており、非常に好印象だ。 また、壁に向かってジャンプしたり、壁走り中など、壁に接しているときに×を押すことで、 「リバウンド」という壁ジャンプを行うのは非常に重要なアクション(常に壁の垂直方向に跳びだす)。 例えば、ある程度狭い距離で壁に挟まれている場所は、左右の壁でリバウンドを繰り返すことで上に昇れる (ジャンプがギリギリで届くくらいの距離だと、下に降りていくことになるのだが、欲を言えば、ボタンを押すタイミングでそこらへんを弄れるような形にしてほしかったが)。
  他の特殊アクションは全てR1で操作することになり、その中でも特に重要なのが壁走りだ。 壁に斜めに走りこんでR1を押すと、結構な距離走ってくれる斜めの壁走りとなり、 壁に正面から走りこんでR1を押すと、通常ジャンプより高い場所に行ける直角の壁走りとなる。 同系の操作があるPS2『Shinobi』、PS2『武刃街』などに比べれば自由度がなく、 丁度XB『NINJA GAIDEN』に近い形なんだけども、 その他のアクションと絡めた展開のバリエーションで勝負といったところか。 当然、このテのアクションゲームではありがちな、足場の淵にぶら下がるアクションを絡め、非常に多彩な動きを見せてくれる。 この部分は、『ICO』よりも遥かにアクロバティックで密度が濃く、舞台も多彩なら展開も多彩と、間違いなく面白い
  ちなみに、R1は他に、横棒やロープにつかまってる状態で身体を揺らす時や、レバーや箱などを掴むときに使う。

  戦闘関係の操作は、□の剣による通常攻撃と、R1の防御が基本。 応用的な戦闘アクションとしては、敵がいる方向に左スティックを入れつつ×で敵を跳び越し、直後に□を押すことで背後から敵を攻撃することができ、 通用する敵には(技の当たり具合にもよるが)一撃で敵を倒せる(ここらへんの戦術に関しては後述する)。 また、敵の攻撃に合わせてR1+□を押すと、敵を一撃で倒せる「カウンター攻撃」を繰り出せるのだが、 タイミングが結構シビアな上に、カウンター攻撃を出したにも関わらず問答無用でガードされることも多く、意外と使えないアクションだった。
  そして、このゲームの人型の敵は、通常攻撃で倒しても復活してしまうので、 倒れた敵にダガー(△ボタン)でとどめをさす(「吸引」する)というアクションがあり、これは本作の特徴でもある時間操作に関わってくる。

  このゲームには、「砂の器」(道中にチラホラと存在する「砂の煙」を8回吸引すると器が1つ増える)と 「パワーの器」(敵を16回吸引すると器が1つ増える)という2つのステータスがあって、 敵を吸引すると砂の器が1つ満たされ、砂の器が満タンの状態では、パワーの器が徐々に満たされていくという仕掛け。 で、この二つのパラメータが特殊なアクションに必要になる、と。
  まず、砂の器が必要となるのが「時間巻き戻し」で、好きなときにL1を押すと発動し、最大で10秒間の時間を巻き戻ししてくれる。 トラップに引っかかってしまった場合、転落死してしまった場合、あるいは敵から大ダメージを受けたときなどに使うことになるので、フォロー的な存在と言えるだろう。
  一方、パワーの器が必要なのが「スローモーション」と「フリーズ」。 L1ちょい押しで発動するスローモーションは、一定時間、自分以外の動きが遅くなるというもの。 戦闘を優位に運べるのみならず、時間制限があるような謎解きでも使えるが、スローモーションが必須となるような謎解きはほとんどなかったはず。 戦闘においても、フリーズの方が効果的なので、ほとんど存在感がないな。 △で行うフリーズはダガーによる直接攻撃で、吸引することなく敵を倒すことができるガード不能攻撃となっている。 意外と敵のガードが固いこのゲームでは結構重要になってくる反面、 吸引の必要がないとはいえ、ヒットさせてからもう一度攻撃しないと倒せないので、これはこれで決して隙のない攻撃とは言えないのがツラいところ。
  両方が全て満たされているときにのみ行えるの「メガフリーズ」(R1押しながらL1)は、シューティングゲームにおけるボム的な存在と言えるだろう。 敵全体の動きを止め、次々とノーリスクで敵を倒していける技だ。
  結局メインで使うのは時間巻き戻しとフリーズだけだし、共にシステム的なものというより、フォローみたいなもんなんで、 あえて砂の器とパワーの器という2つのステータスを用意したことには疑問が残る。 1つのステータスにまとめてしまった方がよかったんじゃないだろうかね。

  んじゃ、戦闘の方に話を戻そう。
  ステージ内に敵が配置されているというより、 敵が湧いてくる戦闘シチュエーションがポツポツと用意されているという形で、 最大3人の敵と相対し、敵をひとり倒すとまたひとり出現するという形が延々と続くいていく。 その戦闘の位置付けも『ICO』に近いものがあって、 戦闘を終えると(敵をひと通り倒すとチェックポイントが現れて先に進めるようになるという場面がほとんどで、 戦闘がそれ以外のアクションと関わってくるようなことはない。
  戦闘そのものは、残念ながら、どうにもこうにも非常につまらない。話にならん。
  難点を一言で言えば、1vs多が基本であるにも関わらず、それに堪えうる操作感&システムにはなってないという、まぁ典型的なもの。
  1vs多である以上、どう敵を捌くかってのが問題になるんだけども、このゲームにはその方策が全く用意されていない。 通常攻撃はある程度勝手に敵を狙ってくれるだけじゃなく、勝手に敵をロックオンしてるような操作になっちゃうタイプなので、 移動面で言えば、側転やバック転などはその敵を対象とした方向に動くことになり、思った方向に自由に動くことができないことがある。 また、敵との位置を入れ替える跳び越しが全く通用しない(逆にダメージを食らう)敵が半分くらいいるのも問題。 攻撃面で言えば、こちらの攻撃はあくまでもロックしてる対象にしかヒットしにくいような攻撃ばかりで、たくさんの敵を巻き込むことができないのが困りもの。
  その上で、ダガーで止めをさす隙が大きい(フリーズさせた敵に止めをさす隙も小さくはないが)にも関わらず、 なぜか、離れたところにいるは自分の近くにワープしてくるので、走って逃げることもできず、敵に囲まれる状況が基本となるのも問題だろう。 じゃあどうなってるかっていうと、敵の攻撃の頻度を不自然に低く設定することで対処している。 つまり、武器を構えて自分の周りをウロウロしてる。 もちろん、攻撃してくるときはしてくるわけで、イマイチ戦略性が感じられないんだよなぁ。 せめて、もうちょっと自由に自分の攻撃をキャンセルして前転で避けられるようにしてほしかった。
  もっとも、個々の攻防にしても、敵に防御される基準がわからない(背後から攻撃しても容赦なく防御されてしまう)し、 前述の通り、投げ的な存在である跳び越しは通じない敵が多いので、問題は問題なのだが。
  ということで、基本的な戦術としては、 基本的に跳び越し斬りで対処し、それが通じない敵(敵の種類によって決まってる)は、 フリーズがベストだが、ゲージがない場合にはチビチビと斬り続け、 何となく隙を見て(って、もちろん、あからさまに攻撃をされそうなときはNGだが)トドメをさし、 攻撃されて大きなダメージを受けたら時間巻き戻し、そんな感じになってしまう。 で、ダメならリトライし(リスタート地点は結構細かく設定されている)、また同じことを繰り返す、と。
  2ヵ所ほどあるボス戦も、ほとんどザコ戦と変わらず。酷いもんだ。 さらに、人型の敵以外に甲虫&鳥という敵もいて、これらは普通に戦えばほとんどダメージを受ける可能性がない、 より小粒な存在(倒しても砂の器は増えない)。鳥に関してはアクセントになっていなくもないものの、甲虫なんかは面倒くさいだけだったな。
  まぁ、面白くないなら面白くないで、爽快感があって楽しいものであればまだマシなんだけど、 SEが弱く、モーションにもメリハリが欠けるのか、爽快感もほとんど感じられないのがキツいところ。 敵の攻撃が他の敵にもヒットしたり、攻撃を受けてふっとんだ場所に樽やら箱があると、ちゃんとそれが壊れたりするのは良かったんだが。

  ゲームの大部分を「ファラ」という少女と一緒に冒険するという点も、 『ICO』に通ずるものがあるんだけど、本作の場合は、彼女を操作する(というか、彼女に干渉する)ことは一切できず、 勝手にスイッチを押してくれたり、狭い場所へ潜り込んだりしてくれるというだけ。 戦闘時には弓を撃ってフォローしてくれて、ファラが攻撃を受けて体力がゼロになってしまうとゲームオーバーになってしまうけど、 別に敵が集中的にファラを狙うとかはないんで、ちょっと気にしていればまず問題ないだろう。 ゲーム的な仕掛けとしてプラスというわけではないが、ゲームの流れにバリエーションを設けるという意味では間違いなくプラスだった。 例えば、自分が足を滑らせて足場から落ちそうになったときに「はっ、気をつけてね」とか、 自分の背後に敵がいるときに「後ろよ!」とか、間違えて自分を弓で撃ったときに「ごめん」とか、 状況に応じてセリフを言ってくれることに代表されるように、彼女が自律的に動いてるというのが、演出として効果的だったとも言える。

  セーブは「砂の渦」という場所で行い、結構頻度は高めな印象。 この砂の渦では「ビジョン」というフラッシュバックのような形で 先の展開を示されるムービーを見ることができ、 これが(解法を示すというより、進むべき道を示してくれる意味で)ゲームプレイ上の大きなヒントになってくれる。 時間巻き戻しで即死っぽさを軽減し、このビジョンによって進むべき道をわかり易くしたという、 この2大フォローのお陰で、非常に遊びやすいゲームになっているんだろう。
  ただ、ビジョンに関しては、ちょっとフォローされすぎな感もある。 そもそも、スイッチであるとかには結構親切に目印が付いているもんで、意外と試行錯誤する場面がなく、道なりにスイスイと進めてしまったので。
  で、自分のクリア時間は8時間弱。 操作の方は上手く自動化されているところが優秀なゲームなだけに、やればやるほど上手くなるっていうゲームでもないし、繰り返し遊ばせる工夫もない。 つまり、リプレイ性が低いゲームであることを考えれば、これはちょっと物足りない
  オマケとして初代『プリンス・オブ・ペルシャ』が丸ごと遊べるっていうのは、ボリューム感のフォローにはなるだろう。 さらに、隠しコマンドによって、ポリゴンで作られた初代『プリンス・オブ・ペルシャ』の最初のステージを遊べるというオマケもアリ。 ただ、そうであるなら、 ここらへんはクリアしたら自動的にアンロックされるようにしてほしかった(初代の方は、ゲーム中のシークレットな場所を発見する必要がある)し、 できれば、初代のステージを全て3D化してオマケにしてほしかったところだ。

  グラフィックは非常にパワフル
  『ICO』同様、広い空間という描写もかなり優秀なんだけど(ただ、大きいものを大きく見せるという点に限れば『ICO』の方が上手)、 その背景の描き込み具合がまた素晴らしい。 その上、さし込む光、舞い上がる砂、ホコリっぽさ、紙切れ、炎、水といった特殊な表現も非常に凝ってるし、 デザインの良さに加え陰影の扱いが上手いのか、統一感があって非常に存在感がある背景になっている。 背景に関しては、PS2最強の1本とみて間違いないんじゃないだろうか。 さすがに、フレームレートはやや不安定だけど、それもそこまでは酷くない。
  その代わり、キャラクターに関しては結構雑な感じ。 まぁ、ゲームプレイ時にはさほど気にならないんだけど、リアルタイムポリゴンのイベントシーンとなると、さすがにちょっと物足りなさがあるか。 演出等も平凡。 プリレンダムービーにしても、その質はあまり高いとは言えない。
  ストーリーに関しては、さほど言うべき点も見当たらないかな。 ストーリーそのものが面白いというタイプのゲームではないし、かといって、いい感じに余韻が残るようなものでもない。 もちろん、だからダメっていうわけではなく、まぁ順当なところだろうと。最後のひとネタは決まってたし。


  とにかく、戦闘のつまらなさには参ったが、それを差し引いても、相当に楽しく遊べた一本。面白かった。 クリア後、速攻で続編XB『Prince of Persia: Warrior Within』を買ってきちまったい。 いまだに「洋物でマトモに遊べるアクションゲームなんてFPSくらいだろ?」と思ってる人がいたら、是非プレイしてもらいたいな。 プレイ時間にこだわらない人にも薦めたいし、こだわる人も、売値が下がるなりベスト版が出るなりしたら試してみてもらいたい。

2005年1月18日記載