REVIEWThe Chronicles of Riddick: Escape From Butcher Bay
Xbox[海外]
2004年6月1日発売発売:Vivendi Universal  開発:Starbreeze  

  ヴィン・ディーゼル演ずるダークヒーロー「リディック」が大暴れする 映画「リディック(原題:The Chronicles of Riddick)」の公開に合わせてリリースされたゲームで、 当然主人公はリディックなんだけども、単なる映画のビデオゲーム版ではなく、ストーリーの方は完全にオリジナル。 時系列的には、このゲーム版が一番古いエピソード、次が映画「ピッチブラック」、そして「リディック」と繋がっていく (ちなみに、映画「リディック」内ではこのゲームのエピソードをほのめかす場面がある)。
  北米でも当初は単なる版権ものゲームという見方をされていたらしく、あまり話題になってなかったんだけど、 実際に出てみたらビックリ。各ゲームサイトで非常に高い評価を得た。
  実は、Tigon Studiosってのは、このゲームを作るためにヴィン・ディーゼルが自ら設立したゲーム製作会社なんだそうな。 映画とゲームのメディアミックスがこれまでにないレベルで盛んになってきた今日この頃とはいえ、 ハリウッド俳優がゲーム会社を設立ってのは、前例のないことなんじゃないだろうか。 んで、実際の開発作業を行ったStarbreezeは、 本作の前にはXB/PC『Enclave』をリリースした実績しかない比較的新しいデベロッパなんだけど(ちなみに、スウェーデンのデベロッパなんだそうな)、 その『Enclave』もグラフィック面では結構高い評価を受けたゲームだっただけに、なるほどと思わせるものはある。


  ゲームの主人公「Riddick」は、多額の賞額金がかけられた伝説的な極悪人。 ・・・まぁ、映画2作を観ても、あまりこの極悪人っていうとこには説得力が感じられないのだけど、 要するに、超人的な戦闘力を持ち、誰の命令も聞かず、 自分を妨げるやつに対しては暴力という手段に訴えることをまったく躊躇しないヤツ、そんな感じのキャラクター。 で、フとしたことから捕らえられてしまった彼が、宇宙最高クラスの厳重な設備を誇り、 脱出不可能と言われている刑務所「Butcher Bay」に搬送されるところから話が始まり、 タイトルの通り、このButcher Bayから脱出するのがこのゲームの目的となる。 雰囲気としては、壮大なSFアドベンチャーになっちゃってた映画「リディック」に比べ、いい意味でこじんまりと、シブくまとまってる。

  一応、ゲームのジャンルとしてはFPSとなるんだけど、ゲームの流れ的には単純なFPSではなく、もうちょっとADV色が強い。 例えば、部分的には、囚人達と会話し、仕事を請け負うような形でゲームを進めるところもあるし、 必ずしも一本道な流れだけではなく、箱庭っぽい作りになってるところも。 イメージとして一番近いのはXB『デウスエクス インビジブルウォー』かな。あそこまでゲームプレイの幅が広いわけではないけども。
  最初に言っちゃうけど、このゲーム、とにかくグラフィックは絶品の一言。 テクスチャの変化で細かい凹凸を表現する法線マップ技術と、 ハイクオリティな影のリアルタイム生成(いわゆるセルフシャドウ込み)が2大ポイントで、 おそらく、現行PCゲーとも互角に勝負できるクオリティになってるはず。 個人的には、家庭用機では次の世代のゲームで遊べるようになるだろうと思っていたレベルに達していて、非常に驚いてしまった。 そういう技術的なポイントだけじゃなく、というか、そういうところに裏打ちされた結果なのかもしれないが、 陰影のコントラストが大きく、色調に統一感を持たせてあり、メカ系のデザインもセンス良くまとまってるので、 小汚い系SF描写としては、相当にハイレベルだと思う。 囚人たちの顔が一人一人ちゃんと違うのも、何気にスゴいし、 それが自然な形で(つまり突飛な造形とかからではない形で)ハッキリと実感できるクオリティなのも、またスゴい。 XB『HALO2』みたいに圧倒的に広い空間描写とかはないし、 いわゆる自然がほとんどない設定なのも、有利っちゃ有利なんだろうが、Xboxでは最高クオリティのグラフィックと言っていいだろう。 暴力表現の方も、残虐表現ってほど無駄にエグいわけではないんだけど、例えば、銃で撃って弾が突きぬけてその背後の壁に血痕がついたりと、結構凝っててナイス。 敵が死んだ後のいわゆるragdollな物理的な動きも、もはや定番とはいえ、やはり楽しい。
  んで、音関係も優秀。 特に、ヴィン・ディーゼルがかなりの分量をちゃんと演じているRiddickのボイスアクトは相当にカッコいい。 やっぱ、この人の魅力は何より声だよなぁ。 また、銃器の効果音も非常に迫力がある。これは実弾系の武器がメインというのも大きいんだろう。 敵が近づくにつれボリュームが増すBGMもナイスで、雰囲気を盛り上げることはもちろん、ステルス面での情報にもなっている。

  ただし、そういう演出だけがウリのゲームではないんだな、これが。
  もちろん、基本はFPSであるからして、左スティックでキャラの移動、右スティックで旋回も含めた視点操作。 ただし、その操作感は一般的なFPSとはちょっと違って、リディックの身体を意識させるもの。 つまり、単に視点が移動する物体というのではなく、リディックの頭の位置に視点があるという感じで、多少ぎこちなさにも繋がっている。 この点に限れば、XB『ブレイクダウン』なんかに通ずるものが。
  Xはいわゆるアクションボタンで、スイッチなどの対象を操作するだけでなく、 足場の淵に跳びついてぶら下がるなんていうアクションも可。 こういった場合や、ハシゴを昇ったり、ウンテイ運動みたいに移動するときは、 自然に客観視点に移行するようになっており、ややクセのある操作感が、逆にその移行の違和感をなくしてるとも言えるのか。 つまり、客観視点で操作するゲームを(通常時は)主観視点で行ってるというイメージ
  そして、左スティッククリックでしゃがむんだけど、このゲームでは単に姿勢を屈めるだけでなく「Stealth Mode」という特殊な役割を持っている。 このStealth Mode時には影に隠れることができるようになり、敵から見えない状態になると画面に青みがかったエフェクトが付き、 こうなれば光を当てられる(あるいは自ら発する)ことがなければ、それこそ体が触れても敵に気付かれなくなる。 単純に影に隠れられるというのも大きいけど、敵から見えない状態にあるということをプレイヤーが明確に理解できる点の方が大きいかな。 さらに、移動速度が遅くなる代わりに足音が消えるのも大きなポイントで、Stealth Modeで敵の後ろから忍び寄って、至近距離でRトリガを押すと、 首をゴキッて感じの瞬殺アクションが発動。音を出さずに敵を始末できる。 ちなみに、Stealth Modeになると、視線が下がるだけじゃなく、画面のパースの付き方が変化する。 情報提示としては面白いし、効果的なんだけど、パースがグイングインと変化するのは、3D酔いを誘発する一因かと思うので、ちょっと注意が必要か。ま、慣れるが。
  で、十字キーは家庭用ゲームのFPSでは珍しい覗き込み動作。 身体の位置は変化しないので、特に、Stealth Modeで敵から見られない状態にして、覗き込み動作で状況を把握することになる。 ただ、身体という当たり判定があるからなのか、壁の近くではこれがうまく機能しないことがあったし、 覗き込み中は視線の方向を維持しようというヘンな力が働き、思ったように視界を操作できないのも気になった。操作関係では唯一の不満点かな。
  また、映画を観た人ならわかる通り、リディックの目には暗視能力があって、通常時は、明るさを抑えるために光を遮るゴーグルを付けてる。 この暗視能力「Eyeshine」は右スティッククリックでオン・オフの切り替え。 視界の淵が歪むとこまで含めて、この時のビジュアルは映画のまんま。 映画同様、普通に目視がきく場面では明るすぎるので、かなり頻繁にオン・オフを切り替えつつゲームを進めていくことになる。 ただし、ゲーム開始直後のリディックはこの能力を持っておらず、ゲームの序盤が終わるあたりで、彼がEyeshine能力を得るイベントが描かれ、 これが強引ながらも映画「リディック」へと繋がる部分になってたりする。
  このEyeshineとStealth Modeが、このゲームのステルスのキモとなるわけだ。 『スプリンターセル』のように電灯を撃ち壊すことができるので、自ら闇を作り出し、その闇に潜んで敵を始末する・・・ことがないわけじゃないんだけど、 アレほどの圧倒的な強さはなく、プレイ感の方も大きく違っているのが大きなポイント。 まず、このゲームには消音銃器がないし、かといって、背後から忍び寄るのもなかなか容易ではない。 そして何より、かなり多くの敵がフラッシュライトを持っており、ちゃんとそのフラッシュライトをつけて探索してくる。 その探索もちゃんと四方を気にしながら行ってくるので、かなり隙が無い。 また、こちらのマズルフラッシュでも位置がバレてしまい、そうなると、今度は敵のマズルフラッシュでこちらの位置がバレ続けるような状況に陥ってしまう。 こういったところが、単なる『スプリンターセル』の二番煎じに終わらないところで、このゲームならではの緊張感に繋がっていると思う。
  ただ、それゆえにステルスがステルスとして機能しきってるかといえば、それはそれで疑問が残るのだが。 基本的に、スニーキング色は強いのだけど、全面的にスニーキングなゲームでもなく、撃ちまくりで進まざるを得ない場面も多い。 ここらへんは、場面ごとに多彩な展開をする、と好意的に言うこともできるだろう。 にしても、いくらシステム的なフォローがあるとはいえ、やはり主観視点でのステルスの難しさを感じるし、 ステルスすぎないゲームとなっていることを、中途半端ととるか、いい塩梅ととるかは、意見が分かれるところかもしれない。 個人的には、もうちょっと覗き込み時の操作性がよければ嬉しかったんだけどな。
  白ボタンはフラッシュライトのオン・オフ(アサルトライフルかショットガンを構えてるときのみ) このフラッシュライトのグラフィックは『HALO』みたいなウソ臭いもんではなく、ちゃんとフラッシュライトっぽいもので、非常によくできてる。 また、(というか、Eyeshine能力をゲットしてからは自らがフラッシュライトを使うことはないので、 実感する機会はこちらの方が圧倒的に多いのだが)敵のフラッシュライトの描写も極めて自然だ。
  また、黒ボタンで構えてる武器に関係なく、ズームを行うことができる。 2段階ズームを1つのボタンで切り替えることになるので、いまいち使いにくいが、 単なる射撃の補助だけでなく、解像度が低い家庭用機では状況把握という面でも重宝する。 移動中にズームできないのは、大きなマイナスではないにしろ、ちょっと気になったけども。

  後は戦闘関係の話を。
  体力の仕様は、(ゲーム開始時は)4ゲージ分のヘルスがあって、ゲージが目減りしている分は時間で自動的に回復するものの、 ゲージ全て減った分は回復しない(「Nanomed Machine」という装置を使って回復する)というもの。 丁度、XB『OTOGI』なんかに近いかな。 体力関係に、ある程度、時間で回復させる要素を設けるのは、近年ではトレンドと言えるだろうし、 体力回復アイテムを散乱させるよりはゲーム的にまとまったものになり易いはず。
  当然のように、Rトリガで構えてる武器の使用なんだけど、このゲームでは素手による殴り合いを行うことも結構あって、 Lトリガで敵のパンチをガードできるようになっている。 格闘要素自体は大味で、特に面白いもんでもないんだけど、それほど理不尽な使われ方もしてないので、まぁOKだろう。 さらに、こちらが素手状態で、武器を持った敵が近くから殴りかかってきたときにタイニング良くRトリガを押すと、 その武器を奪いつつ敵を殺すというアクションが発動。 こちらが素手でもある程度は武器を持った敵に対応できるわけだ。 ただし、多人数が相手の時には無理があるし、撃たれたときにヒットバックがあるこのゲームでは、 バレバレの状態で離れた敵に近づいていくのはムズかしくなっているが。
  Bでリロード。一般的なゲームと違って、ちゃんとマガジン単位でリロードされるのがリアルで楽しい (弾薬に困るようなゲームではないので、ゲーム的な効果は特に無いが)。
  武器変更はYボタンのみで行い、Yボタンを押すごとに画面右に手持ちの武器が順に表示されていき、Rトリガを押すとその武器を構える。 一般的なFPSの感覚でいうと、武器変更を1つのボタンで行うってのはムリがあるんだけども、 このゲームはそんなにたくさんの武器を持ち歩くわけじゃないので、さほど問題はない。
  ゲーム中には何回か装備がゼロに戻される場面があって、一般兵士の武器はDNAなんとかっていうセーフティ機能が付いており、 要するにリディックは使うことができないので、そもそも武器の種類自体も多くないのだけど、 設定された武器を使って(あるいは素手で)状況を打破していくゲームと言えるだろう。
  以下、主な武器をちょっとだけピックアップしてみよう。 「Assault Rifle」は一応、使う機会が一番多くなりそうな武器。 それなりに威力はあるのだけど、かなり弾が散乱するので、あまり使いやすい武器とは言えない。 「Shotgun」は近距離で威力を発揮する武器。特に、人間の兵士以外の敵を倒すときに重宝する、というか、 そういう敵相手にShotgunを使う場面が用意されている。 「Gun」は威力の小さい小火器。殺傷力のある武器の中では、唯一、精密に狙って撃てる武器。 ヘッドショットなら一撃必殺なので、狙撃銃がないこのゲームで、一応、狙撃的な扱いができる武器ということになる。 「Tranquilizer Gun」殺傷能力のない麻酔銃で、ゲーム中盤の結構な部分は、ほぼこれだけで進まなくちゃならない。 ただ、弾数無制限な上に、電灯を破壊でき、敵のどこに命中させても一定時間気絶し、気絶した敵に近づけば踏み殺せるので、 メカ系の敵を倒せないことを除けば、そんなに弱いわけではない。
  そんなこのゲームの戦闘のバランスはちょっと独特。 スニーキングが重要なこともあって、いわゆるリアルミリタリー路線ほどではないけど、 撃ちまくり系FPSのようなタフさはなく、ヘッドショットが効くこともあって、特に人間の敵はかなりヤワな印象。 前述の体力のシステムからもわかる通り、プレイヤーは多少の銃撃には耐えられるようになっているものの、 それでも、オープンスペースで真っ向から撃ち合うのはできるだけ避けたいバランス。 集中砲火を受けるとそれこそアッという間に昇天してしまう。
  敵AIは確かに優秀で、ちゃんと物陰に隠れて攻撃してきたりするのだけど、 戦法そのものにそんなにバリエーションがあるゲームではないので (プレイヤーの武器の使い分けが重要なゲームではないし、 敵側にしても、一部を除いてグレネードを使ってくるようなような機会は少なく、基本的に銃撃するだけ)、 銃撃戦で特別に大きな効果が得られたとは思えない。
  それでも、全体的に高い自律性を感じさせ、自然なものになってるのが、ステルスへの影響も含め、ナイスなポイント。 敵の視界や光に対する反応には(FPSでステルスをさせるには目が良すぎる感もあるが)説得力があるし、 前述の通り、フラッシュライトをつけて探索する動きもかなり自然だ。 高低差がある場面での反応にも、特に不自然なところはない。まぁ、こちらの影に反応しないのはご愛嬌として。
  特にボリューム感のあるゲームではないけど、近年のゲームのシングルプレイとしては及第点という部類だろう。 ウリになるほどではないにしても適度に自由度があるゲームなので、何の変化もないのに2周目も結構楽しく遊べる。 また、収集要素としてはタバコがあって、例えばステージの隅っこの方に転がってたり、 囚人とのイベントでゲットできたりし、それを集めるごとにコンセプトアートなどがアンロックされていくという仕掛け。 クリア後には全てのタバコの場所が(簡単な説明ながら)提示されるというのも良かった(集める気にはなれなかったけど)。 平凡でつまらないマルチプレイモードを用意するくらいなら、こういう部分での工夫の方が評価できると思うな。

  最後に英語について。 すべての音声に字幕が付くのは嬉しいのだけど、おそらく、気の効いたセリフをスラング混じりで言ってるんであろう。 最近のゲームの中では、かなり英語が理解できなかった部類のゲームだったりする。 我ながら情けない・・・。 ただ、ポーズメニュー内で、今すべきことが比較的細かく状況に応じて提示されるので、 多少の読解力があれば、ゲームプレイで苦労することはそうもないはず。 難しい内容ではないけども会話を選択する場面もあるし、全体的に、リスニング能力は必須ではないけど、 多少の英語読解力は必須なゲームと言っていいだろう。


  いやいや、なるほど面白かった。 そのベースにあるのはハイクオリティなグラフィックなんだけど、 多彩で多少は自由度があるゲーム展開にも十分な説得力があり、主観視点のゲームらしい没頭感が楽しめるゲームだった。 まぁ、誰彼かまわず一般的にオススメできるようなゲームではないんだろうけど、 海外タイトルに興味を持てる人なら、間違いなくプレイする価値のあるゲームだろうから、無責任にもオススメの一本としたい。 北米版がリージョンフリーで、値段も落ち着いているので、個人輸入での購入をオススメする。

2005年3月25日記載