REVIEWRim Runners
PlayStation2
2005年1月27日発売発売:フォグ  

  「ミッシングパーツ」シリーズ(DC版1作目2作目3作目)が 個人的に非常にツボにハマったフォグの新作ADV。今回の題材は意外なことにドタバタSFアドベンチャー。 逆に、題材としては嫌いじゃないトコなだけに、あえてチャレンジしてみることに。 ちなみに、シナリオ担当の北川氏は元グループSNEの方で、コンプティーク誌上で連載されたロードス島戦記リプレイのパーンの中の人とのこと。こりゃまた意外な人が・・・。


  舞台となるのは、既に人類が太陽系以外の星系に進出してから随分経っているという遥かな未来。 当然のように星間輸送業は大きな産業となっており、彼らは「スターランナー」、あるいは蔑称として「リムランナー」などと呼ばれていた。
  主人公は、フロンティア星系の惑星サンドキングスという辺境の惑星で、祖父と二人暮らしをしていた炭鉱夫の青年「レックス・ラインスター」。 地方の小型宇宙艇レースのアマチュアチャンピオンでもある彼は、 今は行方知れずになっているスターランナーの父を追うように、いつの日か宇宙に飛び出すことを夢見ていたのだが、 ついに、祖父の制止を振り切り、なけなしの金をかけ、最高クラスの小型宇宙艇レース「ゼロGレース」にエントリー、その優勝賞金を狙う。 しかし、結果は、善戦虚しくマシントラブルによって最下位。 意気消沈するレックスの元に一人の女性が現れ、 スターランナー「ライトニングエクスプレス社」のパイロットになってくれないかという打診を受ける。 またとない申し出に即決するレックスだったが、そのライトニングエクスプレス社は、10代の女の子が社長と艦長を兼任する、 宇宙船ジャックポット号1隻だけの零細かつ大きな借金を抱えたスターランナーだった・・・というのが物語の導入で、第1話のあらすじ。
  そのライトニングエクスプレス社といえば、専務兼副船長の「アリシア」こそシッカリしているものの、 社長兼艦長の「ステラ」は10代の女の子、営業主任兼パイロットは女にだらしないヤサ男「エリック」、 コンピュータ関係を一手に引き受ける「ハルカ」はステラよりさらに年下の女の子、 船荷係の「カレン」はビール好きの酒豪、機関士「リディック」の趣味はギャンブル、 しかも、ジャックポット号は時代遅れの旧式艦、オマケに会社は大きな借金を抱えてる。 そんな彼らが大きな事件に巻き込まれていき、最後には宇宙の平和を守ることになる、と。

  ゲームの概要としては、全10話構成の、サスペンスとか恋愛とかには重みを置いてないドタバタSFアドベンチャーで、 過去のフォグのゲーム同様、音声はナシ。 その代わりというか、宇宙船の描写などにポリゴンを使っており、3Dと2Dの融合を演出上のウリとしたゲームになっている。 表現としてはノベル形式じゃないけど、常設コマンドがあるゲーム形式ではなく、話の流れに応じて時折選択肢を選んでいく形。

  最初にゲーム的な仕掛けについてチェックしておこう。
  制限時間のあるコマンド選択「ライブコマンド」があるって話を聞いたときは、 「サクラ大戦」シリーズのLIPSみたいなのを想像したんだけど、アレとはかなり別物。 ゲーム全体にまぶされているわけではなく、大体の回において、終盤に宇宙船が活躍する場面があって、 ここでライブコマンドが立て続けに発生する「ライブコマンドシーン」となる。 必ずしも選択を間違えたら即ゲームオーバーというわけではなく、 大体は、例えば3回の選択で2回以上ミスったらゲームオーバーみたいな形のところがほとんどで、 ミスは船体へのダメージ(=減収)に繋がるという仕掛け。
  一部には、選ぶ材料が見当たらず、運試しみたくなっちゃってるところもないわけではないんだけど、 大抵の場合は、状況を考えたり、画面上の情報などを見れば判断できるので、その点は評価できる。 ただ、意外と制限時間がキビしく、グズグズしてるとすぐミスになってしまうのは、 逆に「どっちにする? どっちにする?」みたいな緊張感に繋がらない結果になってしまったと思う。ちと勿体無い。
  また、ライブコマンドシーン以外ではライブコマンドは発生しないので、通常時の緊急事態の選択で緊迫感が欠けてるように感じられることも。
  話の分岐は、ゲームを通して2回ほど、二者択一の形で請け負う仕事を選ぶ場面があって、 その場の物語は違ったものになるし、報酬も変わってくるのだけど、ストーリー的に他の部分に影響を及ぼすことはない。 他には、休日を過ごす相手を選ぶといった形のより小さな分岐がたまにある程度。
  エンディングの変化は、借金の返済度によって3段階に分かれ、 キャラクターの親密度によって、最後にちょっとしたエピソード(男はもちろん、女性キャラでも恋愛は強くない)が追加されるというのが基本。 ただ、これらはホンのオマケみたいなもんで、物語そのものが大きく変わるわけじゃない。 問題は、グッドエンドとベストエンドの分岐の方。 なんせ、3周ほどクリアしたんだけど、どうにもベストエンドに到達できず、その方法もまったく想像がつかない状態。 いきなりベストで終わったっていう声も結構聞かれたし、条件自体が難しいわけではなさそうなのだけど・・・。 そのグッドエンドがいまいちピリっとしなかっただけに、こういう因果関係がハッキリしない分岐をゲームの大事な部分に据えるのはどうかと思うんだが。

  お次は、表現力の部分をチェックしていく。
  その前に、デザイン関係の話。 キャラクターデザインと(全部ではないようだが)原画は、「久遠の絆」「ミッシングパーツ」同様、岸上大策氏。 こういう引き出しもある人なのか・・・。 おそらく、基礎的なデッサン力を持った人なんだろう。 ちゃんとした立体感が感じられるその絵柄は、アニメ色が強いながらも、自分的にはそんなに抵抗がなかったりする (って、そもそも、別にアニメ絵がダメってわけでもないんだが)。 必要以上に胸を強調した女性キャラが多いってのは、ある意味ではSFのお約束ということで、良しとしたい。 全体的なバランスを考えたときに、アリシアだけはちょっとやりすぎに思うけど。 メカ関係のデザインは意外と悪くない。上手くまとまってたと思う。 メニュー関係のデザインはまぁ無難なところかもしれないけど、テキストウィンドウの枠が必要以上にでしゃばってる感も (湾曲させる必要はなかったんじゃないだろうか)。 あと、タイトルデザインはショボすぎ。 それこそ、「うる星やつら」みたいなのをイメージしたのかもしれないが、 記号性が高いアルファベットの場合(しかも、文字が太いものは特に)、こういうようにフリーハンドっぽく不規則に形を崩すのは非常に難しい。というか、向いてない。 これはデザインした方もした方なら、OK出した方も出した方だって・・・。
  で、まずは2Dパート(といっても、バストアップキャラが表示されるパートでも、船内や一部の場所では背景にポリゴンを用いている)。 個人的に非常に残念だったのが、 背景画とバストアップキャラ絵を組み合わせて立体的に見せる仕掛けが、 無いわけではないものの、普通のテキストADVに毛が生えたレベルだったこと。 確かに、バストアップキャラのサイズを細かく変えてたりという工夫はされてて、 毛が生えたレベルってとこにだって価値はあるのだけど、 ここを(隠れた)ウリとして頑張ってほしいと思ってただけに、残念ながら、その期待に応えるレベルではなかった。 ドラマ的な部分もそうなんだけど、何より、アクションっぽい場面での表現力不足は(特に終盤そういうとこが多かっただけに)残念なところだ。 で、その代わりってわけじゃないんだろうけど、 フェイスウィンドウ的なキャラ絵の多用も特徴となってて、 サイズを変えてみたり、動かしてみたりと、結構工夫して使ってるのはわかる。 ただ、その性質上、どうしてもミニコント的なあまり重要でないところでの活用が多くなるので、基本的な表現力不足を補うには至らず。 もっとも、船外の3Dグラフィックとの融合という意味では、確かに使いやすい表現だったと思う。 実際に、テキストウィンドウ以外の部分にちょっとしたセリフをフキダシっぽく表示し、リアルタイムで進行させる部分はちょいちょいとある。
  3Dグラフィック部分に関しては、お世辞にもその質が高いとは言えない。 イメージとしてはDCレベルかな。 無機質な表現はCGの得意とするところなんだし、ここらへんは海外製で優秀なものが多いもんで、ちょっと不甲斐ない。 特に、宇宙に透明感が欠けてるのは残念だし、全体的にスケール感の表現(デカいものをデカく見せる表現)が弱いのもイタかった。 ただし、船内では意図的なんであろうノッペリした感じの色付けにより、 キャラクターとのマッチングが良く、絵の質そのもの以上に効果的になっていると思う。 あるいは、船外の場面でもそういうのを目指したのかもしれないけど、これは逆効果とまでは言わないまでも (つまり、非アニメ路線を目指して質の高いものができたかどうかは別にしても)、やはりチープさに繋がってしまったんじゃないだろうか。
  とはいえ、絵の質自体はこんなもんでも全然構わないと思うんだよね。 問題は演出の部分。 その中でも特に気になるのが音関係の演出の弱さだ。 効果音が少ない(不自然に音がないと感じられる場面が多すぎる)という根本的な問題に加え、効果音と絵の同期が不完全なのも頂けない。 リアルタイムの演出では、密かに最も重要なところだと思うので、これはかなり致命的なことになってしまったと言えるだろう。 映像的な演出では、 カメラワークや宇宙船の動きにも、もうひと手間ほしかったところで、やや動きが単調で直線的すぎる感も。 ここらへんは、それこそ「スターウォーズ」や「スタートレック」を擦り切れるまで観て、勉強してほしかったところだなぁ。
  んで、3Dグラフィックの上にキャラクターの顔を重ねてくるようなカットイン的な演出が意外なほど少なかったのも残念。 特にライブコマンドシーンで、3Dと2Dの融合が少なかった(3Dと2Dを切り替えている感じの使い方で、融合していない)。

  主人公の独白の部分が無いわけではないにしろ、少なくともそれが大部分を占めるゲームではなく、 キャラクター同士の会話でゲームが進行するゲームと言える。 題材的にそうなるのは仕方がないのだけど、だったらだったで、文章以外の部分の表現力が重要になってくるわけだが。
  テキストの演出は、文字の大小を使うものは結構あるのだけど、ベースとなるフォントサイズが結構大きめなだけに、あまり栄えなかった。 ふりがなは一応使われているけど非常に少なく、文字の表示テンポに変化を付ける工夫は皆無。 テキストそのものの質は、取り立てて優れてる感じもないけど、取り立てて悪く感じられることもなかった。及第点。
  個人的には、こういうADVに必ずしも音声が必要だとは思わないし、 音声のないADVに見合った表現ってのは、それはそれで追求する価値があるんじゃないかと考えている。 逆に、無闇やたらに音声を望む風潮には辟易させられる。 ただ、この程度の表現力、そして、こういった方向の表現を用いるのであれば、やはり音声を付けた方が良かったんじゃないかな、と。

  シナリオは、特に大きなヒネりがあるわけじゃなく、まぁベタといえばベタなもの。 とはいえ、主人公たちの設定、宇宙海賊や宗教組織と絡めてくる事件の概要については悪くなかったと思うので、 やはり、だったらだったで、もうちょっと演出を頑張らないとねぇ、という話になるわけだ。
  キャラクターの書き込みという点では、 分岐するサブシナリオやミニイベントで各クルーの性格や過去を描写しようという試み自体が、果たしてどうなのかという疑問がある。 こういう形にしてしまうと、伏線的には扱えなくなってしまうわけで、 特にエリックの書き込み不足については、ここが足を引っ張った部分もあるのではないかと思う。 終盤の彼の唐突すぎる展開なんかは、本来、彼の過去と絡めるような形にするべきだったんじゃないかな。 あと、“レックスほどじゃないけど、堅実で優秀なパイロット”っていう設定も、もうちょっと生かしてほしかったところ。 そういう意味では、非常に勿体無いキャラクターだったと思う。 まぁ、話的に一本道にならざるをえず、恋愛要素も組み込みにくいこの題材で、 どういう形で繰り返しプレイさせるかっていう問題とも関わってくるので、難しいところなんだけど。
  で、前述の通り、グッドエンドの場合は、最後がまったくシックリこないんだけども、 こればっかりはベストエンドを見てみないとなんとも言えないなぁ。

  あとは、システム関係をちょっとだけチェック。
  「ミッシングパーツ」では文章スキップのテンポの悪さが気になったのだけど、 本作では文章スキップ中にイロイロと演出を省略するようになっており、それなりの速度を確保している。 ただ、意外と厄介なのがライブコマンドシーン。 必ずしもその直前に選択肢があったりするわけではないので、スキップさせたまま放置して他のことをしてたら、 いつの間にかライブコマンドシーンが始まっててゲームオーバーなんてことも。 ライブコマンドシーン開始時のWARNING表示には派手な効果音を付けるとか、ひと工夫ほしかったところ。
  あと、TIPS参照的な要素の作りも気になった。 ゲーム中に緑色で表示される用語には、ポーズ画面から行ける「ジェネシス辞典」で用語解説があるんだけど、 やはり、いちいちポーズをかけてその単語を選ぶのは面倒なんで、 (そう緑色の単語が頻出するわけじゃないんだから)ボタン1つで用語解説を表示するような仕掛けにしてほしかったな。 あと、アルファベット→アイウエオ順と用語を並べるのは結構なんだけど、 アイウエオ→漢字って並べるのは不自然だろう。いくら漢字の用語が少ないとはいえ・・・。

  最後に、元もこうもない話を1つ。 そもそも、全10話で1本の作品としてまとめるのが最良の方法だったのだろうか?という。 もっと日常業務っぽいところを(世界描写も含めて)増やして、 各クルーにフィーチャーする回を設けて、最後の大きな話はスペシャルっぽい扱いにするとかして、 本来は、もうちょっと長い話が相応しい題材だったんじゃないかな、と。 そして、せっかく“リムランナーズ”っていう、ゲーム中の世界では蔑称として扱われている単語をタイトルにしたんだし、 もうちょっと“普通の”スターランナーたちが最後に集結するような、そういう形にならなかったものか。 正直言って、現状では割高感は否めないわけで、単価を下げて(もちろん、全体のストーリーは増やして)前後編2本にするとか・・・。 んまぁ、リスキーなのは事実だし、それで売上げ(利益)が増えるかどうかっていうと微妙だけど、 題材とキャラクターは良かっただけに、どうしてもそういう思いが残ってしまった。


  設定は良かったと思うし、ノリそのものは、最初に想像した通りで、それなりには楽しめた。 少なくとも、プレイした時間がムダだった、って程ではない。 が、非常に物足りなかったのも事実。 最後にもう一度繰り返すけど、こういう路線であれば、もうちょっと演出に凝らないと。 で、演出に凝れないなら、もうちょっと他の部分(キャラクターの書き込み、ドラマ性など)を考えんと。

2005年3月4日記載