REVIEWTheif: Deadly Shadow
Xbox[海外]
2004年5月26日発売発売:Eidos  開発:Ion Storm  

  1998年11月にリリースされたPC『Thief: The Dark Project』は、 スニーキングを大々的にフィーチャーした新しいタイプのゲームとして非常に高く評価され、 2000年3月には続編PC『Thief II: The Metal Age』もリリース、こちらも高い評価を受けた。
  が、その『Thief II』リリース直後に開発元のLooking Glass Studiosが倒産、 「Thief」シリーズは宙に浮く形になってしまったのだけど、シリーズの販売元であるEidosがその権利を買い、 かつてLooking Glass Studiosに在籍していた有名ゲームデザイナーWarren Spector氏率いるIon Stormが、その本作を開発したという経緯がある。 もっとも、Warren Spectorの過去の「Thief」シリーズへの関与はあまり大きくなかったはずで、今回も一応陣頭指揮を執ったということになっているものの、 同時期に開発していた『デウスエクス:インビジブルウォー』に比べると、やはり今回もあまり大きくは関わっていないようだ。
  ちなみに、本作リリース前から噂にはなっていたんだけども、Warren Spectorは去年の内にIon Stormを退社、 Eidosが大幅な人員整理を行ったらしく、Ion Storm自体も今年2月に閉鎖となってしまった。 ついでに、販売を担当したEidosも、つい先日、同じく英国のゲームパブリッシャSCi Entertainment Groupに買収されてしまったとさ・・・。


  ゲームの舞台となるのは、中世ヨーロッパ風の街並みを持つ「the City」。 この世界の裏では、文明的な秩序の力を信仰し、その象徴としてハンマーを掲げるHammerite改め(?)「Hammers」と、 文明を否定し、自然的な混沌の力を伸ばそうとする自然信仰集団「Pagans」という2つの勢力のバランスを保つように 「the Keepers」という謎の存在が暗躍していた。
  主人公「Garrett」は、子供の頃にとあるKeeperに能力を見出され、 Keeperとしての訓練を受けたのだけど、結局Keeperになることを拒絶し、いち盗賊として生きている男。 このゲームの1作目では当初、Hammeriteと敵対してたんだけど、 結局、Hammeriteたちの対極にある究極的な存在とも言える神に近い存在「Trickster」の野望を砕いており (今の義眼はそのときのお礼としてHammeriteたちからもらったもの)、 2作目では、結果的に、Paganたちを助け、Hammeriteの方向性をより過激にした新興宗教「Mechanist」を打ち負かすことになった。
  そして今回は、HammersとPagansたちとの関わり合いはどちらかっていうとゲーム的な仕掛けとなり、 物語としてメインで描かれるのは、GarrettとKeepersたちとの関わりあいということになっている。 過去のシリーズをプレイしていた方がより楽しめるであろうことは間違いないんだけども、 本作のタイトルに連番数字がないことからも分かる通り、本作単品でも十分に楽しめる内容になってると思う。

  基本的なゲームプレイは旧作を継承しており、 敵からの見え具合を表示してくれる「Light Gem」を頼りに、 暗闇に隠れつつ、箱庭っぽいステージを散策するステルスゲームということになる。
  前作、前々作からの最大の変更点は、主観視点のゲームから、基本的には客観視点のゲームになったことだ。 なぜ“基本的には”なのかというと、BACKボタンで客観視点と主観視点を随時切り替えることができ、 一応、主観視点のままゲームを進めることもできるからなのだけど、 壁張り付きなどの主観視点では分かりにくいアクションもあるし、やはり客観視点が前提のゲームデザインと見てよいだろう。
  というわけで、左スティックを入れた方向に主人公が動き、右スティックで視点を操作するというのが基本。 ただし、XB『スプリンターセル』のような左スティックを入れた方向に向かってキャラクターが進むという操作感ではなく、 画面正面を向いたままでスティックを入れた方向に移動するという、ややFPSを引きずった操作感になっている。
  Aボタンはいわゆるアクションボタン。 アイテムを取ったり、扉を開けたりと、ハイライト表示された対象に対してアクションを行う。 で、これがドアのような大きなものはかまわないんだけど、 小さなお宝などは、なかなか思ったようにハイライト表示されないこともしばしば。 もうちょっと画面中央のものが対象になるというのを徹底させるべきだったと思う。
  Xボタンでしゃがみ・立ちの切り替え。 スニーキングが基本となるこのゲームでは、足音を殺してのしゃがみ移動が基本と言っていいだろう。 また、ステルスがメインということで、十字キー左右はいわゆる覗き込み動作に割り当てられている。 思いっきり身を乗り出してしまい、それによってLight Gemも変わってしまうので、やや使いづらいが。 十字キー上下はメカ義眼によるズームイン・アウト。 一応、暗視機能もあるんだけど、暗いところも比較的明るく描かれている (その代わりにLight Gemを見て判断するわけだが)このゲームでは、その役割で必要となる場面は見当たらず。
  Bボタンは客観視点ゲームらしい新アクションである壁張り付き。 アクションとしては特に目新しくないけど、このゲームではその効果が結構大きいのがポイント。 ただ、(しゃがみ移動が基本であるにも関わらず)しゃがみ状態での壁張り付きがないので、 アクションとアクションの繋ぎがちょっとぎこちなく感じられる。
  Yボタンはジャンプ。 また、段差に向かってスティックを入れながらYを押すと、その段差を登ってくれるはずなんだけど、これがあまりアテにならないのが困りもの。 しかも、ジャンプの着地時には間違いなく音を立ててしまうので、何気にリスキーなことになっちゃってる。
  段差に限らず、このゲームは全体的に足場とキャラクターの判定が曖昧なところがあって、 ちゃんと段差の上に登ってくれなかったり、小さな段差にひっかかって先に進めなかったり、 狭い足場からズルズルとズリ落ちてしまったりと、小さな不具合レベルの難点がチラホラと発生する。
  操作性全般は、極端に悪いわけではないんだけど、 同じ客観視点のスニーキングゲーム『スプリンターセル』ほどは洗練されていないという印象だ。
  武器は黒ボタンで選択し、Rトリガで使用、アイテムは白ボタンで選択し、Lトリガで使用する。 共に、選択ボタンを押すごとにローテーションする形がメインで、一応、選択ボタンを押しながら左スティックで選択もできるんだけど、 このレスポンスが芳しくない(ボタンを押してから武器、アイテム一覧が表示されるまでの間が長すぎ)のが非常に気になるところで、かなり使いづらかったな。
  接近戦闘に関してはやや変化アリ。 前作まではショートソードのような武器を持ってて、それで防御したりというチャンバラみたいな戦闘があったんだけど、 今回はナイフに近いDaggerが基本的な近接攻撃武器となっていて、チャンバラっぽい戦闘はなくなってしまった。 もちろん、Daggerは最後の手段であって、敵の背後から忍び寄ってBlackjackというミニ棍棒で殴り倒すのが基本。 今回、相手が昏倒する場合にはBlackjackをより高く構えるようになって分かりやすくなったのが嬉しいところ。 その代わりというか、通常のダメージはかなり低くなってしまい、 相手がこちらの存在に気付いた後に殴って気絶させることは(おそらく)ムリになったっぽい。
  アイテムのラインナップは1作目に近く、2作目で追加された様々なアイテムは全て削除されてしまった。 特に一定時間ゆっくり落下するようになる薬は、ゲームプレイの自由度を上げる面白い要素だっただけに、ちょっと残念だったな。 また、1作目から登場していた、自由度の高い立体的な動きが可能だったRope allowまでなくなっちゃったのは、非常に残念だった。 ウソ臭いアイテムといえばウソ臭いアイテムではあるのだけども。
  立体的な動きということでは、ゲームの中盤を過ぎたあたりで、岩やレンガの壁を登れるようになる「Wall climbing gloves」をゲットするんだけど、 使える場所が意外と少なく、(壁の角であるとかの)角度の付いた場所をそのまま移動で乗り越えることができないので、 期待したほど活躍の場はなかったというのが正直なところ。
  他で目新しいアイテムとなると、 敵が足を滑らせるオイル溜りを作れる「Oil flask」くらいなのだけど、結局、使う機会はまったく見当たらず。

  完全なステージクリア形式だった前2作とは違い、今回は「The City」という街がワールドマップ的な存在になっており、 そこでちょっとしたイベントをこなしたりして次のステージへの取っ掛かりを探すというプロセスが追加された。 例えば、これまではステージ開始直前にアイテムを購入していたのだけど、 本作では、まずは盗んだお宝をThe Cityに点在するショップで売り飛ばし、また別の店でアイテムを購入するという形になっている。 もっとも、ちょっとしたサブイベントはあるけど、全体的な流れはいぜんとしてほぼ一本道とみていい。
  各ステージの作り・流れは、これまでのシリーズを踏襲しているといっていいだろう。
  大きな変更点としては、大抵の場合、ステージが大きく2つの区域に分かれており、 その間を移行する際にはかなり長めのローディングが挿入されてしまうというのがある。 (状況にもよるが)そんなに頻繁にローディングがあるわけではないし、 別に自分が移行したからといってステージの状況がリセットされてしまうわけではない。 また、敵がその間を移行しないというのも、それが不自然にならないような作りになってはいる。 それでも、1回のローディングがかなり長い上に、 そもそも箱庭感が楽しいゲームなだけに、こういう小分けな作りはやや興を削いでしまうというのも事実。 まぁ、各ステージに関しては我慢できないほどではなかったけども(The Cityについては後述する)。
  地味なところながらも旧作のファンが引っかかるであろうところは、難易度の仕様の変化だ。 旧作は、難易度を変化させるとステージ内で達成すべきobject(目標)自体が増減していたのだけど、 本作では、単に(敵の性能の変化以外では)そのステージで最低限得るべき「loot(お宝)」の量と、 各ステージごとに3つずつ用意されている「special loot」を取る数が変化するだけになった (例えば、難易度NORMALなら40%以上のlootと1つ以上のspecial lootが求められるんだけど、 難易度EXPERTだと90%以上のlootと3つのspecial lootが要求される)。 確かに、旧作はNORMAL難易度でプレイすると、 淡白すぎてやや面白みに欠けるところがあったのだけど、そこらへんを考慮したというより、 単にそういう形で難易度にバリエーションを付けることが難しいというだけの話に思える。 残念と言えば残念だけど、まぁやむなし。
  肝心の各ステージの内容は、確かに、アイテムのバリエーションが減ってしまったこともあり、 旧作に比べると攻略の自由度みたいなものはやや下がってしまったものの、 ほぼこれまで通りの面白さがあるとみてよいだろう。
  ステルスゲームといっても、『スプリンターセル』のような一本道な流れではなく、 これまでのシリーズ同様、ちゃんと箱庭っぽい作りになってるのが嬉しいところ。 プレイヤーに提示されるobject(目標)が、話の流れで追加されたり、キャンセルされたりするのもこれまで同様。
  敵AIも、視界&音に対する反応共に結構自然で、優秀な部類だと思う。 というか、そもそも戦闘になる(というか、敵に干渉する)シチェーションが少ないこともあって、 粗が目立ちにくいゲーム内容ということもあるんだろう。 今回のAIのウリはNPC同士が干渉することらしく、例えば、ガード同士がすれ違い際に挨拶を交わしたりするだけじゃなく、 何者かに襲われて逃げてきた市民が、City Watchの元に駆けよって助けを求め、 そのCity Watchが事件現場にかけていく、なんていう流れには「ほほー」と感心させられた。 また、開いてなかったドアが開いてたりするところに反応するのは良かったんだけど、 一方で、松明などが消えることに対して反応しないことが多すぎるのは不自然に感じられたな。
  あえて不満な点を挙げるなら、 惨殺プレイ(といっても、概ね昏倒させるだけだが)に対してやや寛容すぎるように感じられることか。 敵の行動範囲が限られているので、昏倒させた敵がバレるような機会は少ないし、バレたところで、敵全体が警戒モードになるような仕掛けもないようだ。 で、それを増長するのが、どこでもセーブできる仕様。 確かに、『スプリンターセル』のように一本道な流れではない分、チェックポイントみたいなのを設ける方向性は合わないと思うが、 せめて「ヒットマン」シリーズのように、セーブ回数を制限するといった工夫があってもよかったはず。
  ただまぁ、各ステージに関しては無難に面白かったわけで、 やや難があるのは、それを繋ぐThe Cityのパートの方になってくる。
  Garrettを目の仇にしている「City Watch」たち(街の警備兵)が街中を徘徊しており、 ただ移動するだけにも関わらず、彼らを避けるためにステルスな行動が求められる。 で、例えば、そんなCity Watchをスルーできるような別ルートが存在するとかならまだしも、 そういった自由度は思いのほか無いもんで、割と地道なステルスが求められてしまう、と。これがかなり面倒。 あくまでもそういうのを目指すのであれば、もうちょっとThe Cityでの自由度を上げる工夫をしてほしかったし、 それができないのであれば、(敵対関係になる(こともある)HammerやPaganはまだしも、せめて)City Watchはもうちょっとユルくしてほしかったな。 もっとピンポイントで配置するなりして。
  また、各ステージに比べ、各区域の大きさは広くなく、しかもできること(やるべきこと)が少ないので、 ローディングの機会が増え、それがかなり鬱陶しく感じられるのも頂けない。

  ボリュームの方は、さすがに旧作には及ばないものの、 最近のゲームとしては、シングルプレイのみのゲームとしても及第点をあげられるレベルだろう。 ただ、あくまでも及第点という感じなので、 前述の難易度変化も含め、リプレイ性を高める工夫がほしかったところではある。

  グラフィックは、XB『デウスエクス インビジブルウォー』と同じエンジンが使われており、 家庭用機ではXboxオンリー(XB/PCのマルチタイトル)ということで、それなりにハイレベル。 暗闇がウリのゲームということで、リアルタイムの影生成も行っているし、背景の基本的な描き込み具合も素晴らしい。 Xboxのタイトルの中でも上位に位置するんじゃないかな。 暗闇具合も丁度よく(ちなみに照度調整も可)、明暗のメリハリがありつつも、暗闇がゲームプレイでネックになることもない。 ただし、広い空間の描写という意味では特筆すべき点はなかったし、 全体的には地味にまとまってる感じで、ややインパクトに欠けるかもしれない。 また、自分はあまり気にしない方なのだけど、フレームレートはかなり不安定な部類だ。

  最後に、ストーリー及び英語に関して。
  基本的な世界観、Garrettのシブいキャラクターなどに加え、 独特のテイストで表現されるステージ間のイベントシーンのノリも (これまでに比べればやや具体的な描写が増えたけども)旧作を継承しており、 シナリオ自体にも適度に意外性があって、ストーリーの方も結構面白いゲームになっている。
  ただし、これまでのシリーズ同様、本作の英語も結構な難物。 まず、本やメモという形での情報提供が多く英文の分量自体が多い上に、 こだわった言い回し、あまり一般的でない単語なども目に付き、英語のテキスト自体の把握が意外とキビしい。 また、音声に字幕が付くのは嬉しいのだけど、 音声と字幕の同期がイマイチなのが難点で、これまた結構苦労をさせられる。
  ただ、objectが割と細かく示されるのが救いで、 それさえちゃんと理解しておけば、ゲームプレイで詰まることはそうないだろう。 逆に言うと、英語の理解がゼロだと、攻略するのは非常に難しくなってくるはず。


  確かに、アイテムや仕掛けは旧作から劣化した感が否めない。 かといって、それに見合った新要素があるわけでもなく、ローディングもやや鬱陶しい。
  それでも、グラフィックは上々だし、題材的にもそれが大きくプラスになっているわけで、 十分に良作に値するゲームだと思う。 ゲーム的にはこれを発展させていってほしいとこなんだけど、いや、どうなるんかねぇ・・・。

2005年5月6日記載