REVIEWブラザー イン アームズ ロード トゥ ヒル サーティー
Xbox
2005年9月15日発売発売:Ubi Soft  開発:Gearbox  

  北米で今年3月にリリースされた、新作ミリタリーFPS『Brothers in Arms: Road to Hill 30』のローカライズ版。 開発を担当したのは、PC『Half-Life』のシングルプレイ用公式拡張パック『Opposing Forces』『Blue Shift』を開発し、 その後、『Halo』のPC版の制作を任されたことでも知られるGearbox。 Gearboxとしては初のオリジナルタイトルということになるだろう。
  ちなみに、北米ではこの10月に丁度その続編『Brothers in Arms: Earned in Blood』がリリース済みで、 かなり間隔が短い続編のリリースなんだけど、前作と並行して作っていたものらしい。


  舞台となるのは第二次世界大戦時のヨーロッパ。 プレイヤーは第101空挺師団第502歩兵連隊第3小隊第3分隊の新米分隊長「マット・ベイカー軍曹」となり、ノルマンディー上陸作戦に参加。 上空からパラシュートでノルマンディーに降下し、重要拠点「ヒル30」を確保するという作戦を遂行することになる。

  FPSということで、左スティックでプレイヤーの移動、右スティックで左右旋回も含めた視点操作、 Rトリガで射撃、Aでジャンプ、Xでリロードあたりはお馴染みの操作。
  携帯できる銃器は2つだけで、それをYボタンで切り替えながら進んでいくのだけど、武器のバリエーションはそれほど多くなく、 大体の場面においては、射程の長いライフルと、接近戦で威力を発揮するマシンガンを切り替えるくらいのもんだろう。 バズーカランチャーや狙撃銃も登場するものの、イベント的な意味合いが強い。 他の攻撃手段としては、黒ボタンで手榴弾を投げることができるが、かなり数の制限が厳しくなっており、これも使用頻度は高くない。
  そして、左スティッククリックで立ちとしゃがみの切り替え、右スティックをクリックすると通常状態から銃を構えてサイトから狙う状態へ切り替え。 このゲームではデフォルトではターゲットサイトが表示されない上に、 たとえ表示したとしても通常の状態では相当にヒット率が悪いので、この操作はかなり多用することになる。 できれば、“しゃがんで銃身を安定させてサイトを覗き込んで射撃”、 あるいは、“しゃがんで障害物に身を隠して、立ってサイトを覗き込んで撃って、またしゃがむ”、ここらへんの動きが基本となってくる。
  モロに銃撃に晒されるとアッという間に死んでしまう反面、物陰に隠れればまずダメージは受けないし、 ある程度距離が離れていれば、敵の攻撃の命中率も高くなく、単発の攻撃で致命的なダメージを受けることもない。 こういったやや特殊なゲームバランスを成り立たせているのは、このゲームがチーム制のFPSだからだろう。

  プレイヤーは主人公ベイカーを操作しながら、戦況に応じて、「銃撃班」「突撃班」「戦車」のうちの最大で2つの部隊を指揮しながら戦っていく。
  命令を出すのはその部隊員に対してではなく、部隊に対してで、方向キー左右、あるいは白ボタンで指揮する部隊の切り替えを行う。
  その命令の出し方はシンプル。 Lトリガを引くと画面に「コマンドリング」が表示され、それで移動地点を指定してLトリガを離すと「移動命令」となる。 ここらへんは、最近の部隊指揮系シューターではよくあるパターンで、XB『スターウォーズ リパブリックコマンド』なんかとも共通。
  ただ、多くの部隊指揮シューターが、部隊(隊員)を特定の場所に移動させて、 スクリプトっぽい動きをさせるのに対し、このゲームにはそういう要素はなく、 コマンドリングで敵を指定してLトリガを離すと「射撃命令」、敵を指定してRトリガを引くと「突撃命令」、 そして、方向キー下で指揮中の部隊をベイカーの近くに呼ぶ「集結」、 方向キー上で指揮中の部隊員が近くの物陰に隠れる「散開」という命令を出せるのみ。

  これをゲームとしてまとめているのが、「制圧アイコン」と「タクティカルビュー」という要素だ。
  まず、敵には部隊ごとに「制圧アイコン」が表示され、その部隊に対して銃撃すると(ヒットしなくても)制圧アイコンが減少し、 その制圧インジケーターがゼロになると、制圧状態となり、一定時間、あまり積極的に攻撃をしてこなくなり、その攻撃の命中率も低くなるという状態になる。
  また、戦闘中でも随時スタートボタンを押すことで「タクティカルビュー」画面に移行し、 ゲームがポーズとなった状態で、俯瞰視点で味方部隊の位置、(発見済みの)敵部隊の位置、その周囲の地形などをチェックすることができる。
  これを用いたこのゲームの基本的な戦術は、 “タクティカルビューを用いて敵部隊を攻撃しやすい場所を見つける→敵部隊を銃撃し、制圧する→その隙に攻撃位置を確保し、敵を殲滅”というもの。
  ここらへんが、FPSとRTSの融合と言われる所以、らしい。 自分はRTSのプレイ経験がほとんどないので、それが実のところどうなのかはよくわからんけど、 とりあえず、ゲームとしてバランス良くまとまってるというのは事実。 指揮は重要だけども、それでもプレイヤーの戦闘力は高く、指揮だけで攻略していくゲームではない。 また、ある程度シビアなゲームバランスでありながらも、 いわゆるリアル系シューターで時折感じるような理不尽さとは無縁だし、タクティカルビューを開く度にゲームにポーズがかかるわけで、 テンポが悪くなりそうなもんなんだけど、肝心の戦闘に緊張感があるからか、そういうことを感じることもなく。
  ステージの全体的な流れは一本道といって差し支えなく、とある場所まで到達した時点で敵が沸いてきて戦闘になるような場面がほとんどなんだけど、 戦闘自体に自由度がある為、全体としてガチガチの一本道という印象はあまり残らなかったりする。

  このゲームのウリのひとつは、リアリティの追求だ。 それも、“弾が一発当たれば人が死ぬ”という方向性ではなく、“当時を再現する”という意味でのリアリティをかなり重視している。 例えば、レベルデザインに関しては、実際の地形をほぼそのまんま利用しているとのこと。 もちろん作戦自体も実在のもので、実際に行われた流れを追体験することになる。兵士たちも実在の人物をモデルに作られているらしい。 グラフィックにしても、PS2とのマルチタイトルということもあり、パッと見で技術的にハイレベルというものではないものの、 色合いに妙にリアリティがあり、細かい描写も秀逸で、全体的に素晴らしい表現力になっている。 前述の通り、武器のバリエーションが多いゲームではないし、敵のバリエーションも多くなく、舞台もほぼ全てが屋外となる。 それでもメリハリが付いてて飽きずに楽しめるのは、このリアリティの追求によるところが大きいように思う。 もちろん、それを支えているのは自律性を感じさせるAIモロモロの演出力、 例えば、自分が敵から銃撃を受けた時に味方が「ベイカー! 伏せろーっ!」と言うとか、そういうものの積み重ねにあるわけだが。

  一方で、“リアル=無機質”ということではなく、人物、風景、設定をリアルにこだわった上で、 ストーリーの方はドラマチックに描かれているという点が、このゲームの隠れた特徴だ。
  それは凝ったゲームの導入からも伺える。
  ゲームを開始すると、いきなり、作戦開始から7日目、目標地点であるヒル30、 つまり、いきなり作戦のクライマックスの場面に。 大量の敵と対峙しながらも、援軍を求める連絡が繋がらないという状況で、オマケに敵の戦車が現れるという絶望的な状況。 その戦車の主砲で吹っ飛ばされたベイカーは朦朧とする意識の中、仲間の無残な死を見みながら、意識を失う。 ここで、オープニングクレジットが流れだす、と。
  ノルマンディへの降下直前の輸送機の中、新米分隊長ベイカーの「分隊長になどなりたくはなかった」というモノローグからデモが開始 (デモといっても全てリアルタイムで、ベイカーの視点に移行してからは、ある程度制限はあるものの視点も動かせる)。 降下のための点呼が始まったところで敵の攻撃を受けてしまい、急遽、降下を開始することになり、その先頭を切って降下することになるベイカー。 いよいよ降下という時、開かれた輸送機のドアからフランスの地を眺めつつ、またもやベイカーの「分隊長になどなりたくはなかった」というモノローグがあり、降下となる。
  で、着地した場面からゲーム開始。 基本操作のチュートリアルも兼ねて先に進んでいくと、分隊長「マック」と通信兵「レゲット」と合流。 んで、基本的なゲームの流れのチュートリアルも兼ねて、マックに付いていくと、 隊員の「ハートソック」と合流、今度は部隊指揮のチュートリアルも兼ねて・・・。 余談だが、ここらへんのチュートリアルとゲームを絡めた流れは、特に欧米のゲームではもはや常識だけども、 日本のゲームでは必ずしも上手にできているものばかりではないので、是非とも見習ってほしいところだ。
  ・・・で、そんなこんなで隊員たちと合流していき、目標であるヒル30へ向うことになる。 その過程で新米分隊長であるベイカーが徐々に逞しくなっていく様が、何よりまずはゲームプレイを通して表現されている点が素晴らしい。 また、プレイヤーとベイカーの距離感もイイ。 ベイカーの設定はしっかりとしており、ステージを開始すると、まずそのステージ名が表示され、 ベイカーのモノローグが流されるが、ステージに入ってしまうと(イベントシーン中でも)ベイカーは喋らない。 主人公を必要以上に無色にしようとしても効果的でない場合がほとんどだし、逆に、必要以上に喋らせてもダメ。 ここらへんのバランス感覚は、非常に優れていると思う。

  全17ステージで、クリアするまでの時間は最近の基準では平均的という感じだけど、やや物足りないか。 それでも、各ステージごとに「イージー」「ノーマル」「ハード」「リアル」という4段階の難易度があり、 それぞれの難易度でクリアする毎にボーナスがオープンになるという仕掛けがあるのは嬉しい。 そのボーナスも、現場の写真、当時の写真などを交えた解説であったり、メイキング映像だったりと、なかなか見応えがある。 ただし、元がヌルいゲームではないこともあって、少なくとも難易度「ノーマル」と「ハード」ではあまりプレイ感が変わらないのだけど。
  洋ゲーらしく、ステージ開始前のローディング時間はガッツリ気味。 ただ、そのローディング画面は、 進行図、キャラクターなどの一枚絵を動きを付けながら組み合わせたものになっていて、次のステージへの導入の役割を果たしている。 こういう工夫には、何気に好印象。 さすがに、リトライ時のローディングも相当に長いのは残念だったが。

  ・・・と、非常に面白いゲームだったのだけど、1つだけ非常に頂けない問題点がある。それは、ローカライズだ。 いや、オプションの字幕のオン・オフの項目名が「サブタイトル」になってる時点で「あれ?」とは思ったんだよ。 確かに、字幕は“subtitle”だけど、カタカナの“サブタイトル”から字幕を連想する日本人は皆無に等しいでしょ・・・。
  このゲームの場合、ゲーム中では音声は英語のままで、日本語の字幕を付けるという形をとっている。 何より戦場の雰囲気が大事なゲームなだけに、当然の選択と言えるだろう。そして、別に、翻訳そのものに大きな問題があるわけじゃない。
  問題はその字幕の表示。 おそらく英語版を踏襲したのであろう、“人名:セリフ”という形でしかも中央揃えという表示になっており、これが非常に読み辛いことこの上ない。 大体、単語で区切ることのない日本語に中央揃えの表示はあり得ないんだってばよ。 人名の表示もセリフ部分と同じように表示されるので、紛らわしい。
  んで、字幕の漢字とかなのチョイスがおかしい。 ゲーム中の字幕もどうかと思う部分がなくはないけど、特に、ボーナスの解説のテキストは酷い。 なんせ、「本部隊の装備のクオリティーと われわれがほこる戦りゃくにより われわれは軍事てきに 重大な意みを持つ作戦のすい行を命ぜられ 過こくな戦闘につくのがつねである。」ってな具合で、全編こんな感じになっている。読んでて頭が痛くなるっての・・・。
  よっぽど元の英語版にローカライズするにあたってプログラム的な不都合があったのか、 それとも単にローカライズ担当が無能だったのか、どっちかは知らんけど、個人的には“日本語に対して失礼”っていうレベルだと思う。


  とまぁ、ローカライズでケチが付いたものの、非常に面白いゲームであることに変わりはない。 確かにアクション全開のシューターではないし、ある程度はプレイヤーを選ぶにしても、これまでのいわゆるリアル路線FPSに比べれば、ずっと間口は広いはず。 FPSとRTSの融合というより、ゲーム性とリアリティの融合という点で、高く評価したいタイトルだ。

2005年10月31日記載