Armored Core Variable Infinity Archives
アーマード・コアのお値段
- アーマード・コアの平均的最低価格は、現代の日本円に換算して、約1億円。
-
「うわこいつバカじゃねw 素人かw 現代の戦闘機ですらヨユーで100億円前後なのにw バカスwwwww」
……と、言いたいのは解るのだけど、私の手元にも文林堂の『戦争のお値段』は置いてあるし、合衆国空軍でのF-15の価格が35億8800万円(2990万ドル)、合衆国海軍のF/A-18E/Fが68億4000万円(5700万ドル)、合衆国陸軍のM1A1が5億1600万円(430万ドル)(*1)、航空自衛隊のF-15JやF-2が各種諸経費混みで120億円程度、1億円ではミサイル数発、例えばAIM-54が1発5742万円(47万7000ドル)(*1)なので2発程度しか買えない、というのは十分に理解しています。だけれども、その上で、アーマード・コアの1機あたりの、平均的な最低価格、要するにエントリ・モデルは1億円程度なのではないかと思うのです。 -
「アーマード・コアの値段って、1機あたり、幾らくらいなんだろう」というのは、『アーマード・コア』の設定などに想いを巡らした時に、割と普遍的に現れる疑問であるとは思います。
しかし、まずその前に、アーマード・コアそのものの存在、それと、それを駆るレイヴンという存在、そしてそれを取り巻く世界の事を考えてみねばなりません。
-
『アーマード・コア』の世界について、当サイトでは初代『アーマード・コア』と、『アーマード・コア・プロジェクト・ファンタズマ』に限定して考察するルールになっていますが、それらの作品群においては、時代設定その他はあえて曖昧にしてあり、年表その他は存在しません(*2)。漠然と「『大破壊』と呼ばれる全地球規模の災害から数十年、『百年計画(センチネル・プラン)』は未だ進行中、といった事した設定されていないので、そうした時代を背景にしたものとして考えてみます。
『大破壊』がどの様な災害であったかも語られていないので想像するしか無いのですが、全地球の百億人程度(現代よりも多く、恐らく地球という惑星が賄える限度を越えた程度)の人口の殆ど全てが死滅し、数十分の一、恐らくは数億人程度まで激減、『百年計画』の庇護下で僅かずつ回復していき、ゲームの物語の時点での全地球の総人口は10億人程度なのでは、と想像しています。 -
ここから仮定に仮定を重ねていく事になりますが、初代『アーマード・コア』の世界では、人類は基本的に地下複合都市群に居住しているという事になります。恐らく、人口数百万人規模のものが数百、数十万人規模のものが数千、等々、数多くの様々な規模の地下複合都市が、地球各地に建設されているものと推定できます。
世界の背景設定として、それだけ、機械化が高度に進んだ時代だというのが想像できます。 -
そんな中で、レイヴンという存在は、どんな人間なのでしょうか。全地球の総人口10億人に対して、レイヴンは何人くらいいるのでしょうか。
単純に、そして漠然と、レイヴンというのは、現代に於けるプロ・アスリート程度の存在なのではないかと思うのです。その職を得るのにかなり苦労するし、その後もそこに留まる為には、かなり苦労する存在です。かろうじてプロとして最低限の生活を出来る選手もいれば、トップ・プロとして世界最高の舞台で活躍する選手もいる。単純に『1億円プレイヤ』といえば、概ねどのジャンルのプロ・スポーツでも一流と看做されると思いますが、レイヴンもまた、それを雇う企業などから『1億円を払う価値がある』と認められた人材で、レイヴン本人はその支払いからアーマード・コアを購入して仕事をするのだと思っています(そして修理代や弾薬費や損害賠償に泣かされる日々も始まるのです)。
レイヴンは、雇う側にとって「1億円程度の契約金を支払ってもいい人材」であって、アーマード・コアは「1億円程度の契約金を元手に買う事ができる機材」なのではないかと思うのです。
そうしたレイヴンが、数千の都市に、それぞれ数十人程度存在するとなると、全世界では少なくとも数万人、恐らくは十数万人が存在するのではないでしょうか(丁度、現実の世界でのレイヴン、要するに恐らくコレを読んでいる貴方、『アーマード・コア』をプレイしたみんなの数と同じくらいかもしれません)。 - プロ・アスリートと云う喩えの中で、かつ、マシンを駆るという共通項を考えると、モーター・スポーツの選手の存在を思い浮かべると、レイヴンという存在が想像し易くなるかもしれません。各種のカテゴリで、市販車改造クラスからワンメイクのフォーミュラ・カーまで、様々なレベルでそれに挑んでいる選手たちがいます。市販車改造クラスであれば、1億円あればマシンを用意する事は可能だと思いますし、ワンメイクのフォーミュラ・カー、例えばフォーミュラ・ワンのトップチームのマシンであれば数十億円といったところで、それを駆る事が出来る人間は全世界で同時期に20人程度です。地雷伍長のデンジャー・マインが中古の軽自動車(但し、所謂『草レース』への出場に耐えうるそれなりのチューンを施したもの)、ハスラー・ワンのナインボールがマクラーレン・ホンダMP4/4といったところでしょうか。
-
アーマード・コアという兵装システムは、それを駆るレイヴン1人に対して、メカニックやマネージャ数名で構成された小さな所帯で扱える存在であると想像しています。これもまた「アーマード・コアみたいな複雑な兵器システムを数人でメンテできるわけないじゃんwwwバカスwww」と言われるかもしれませんが、それが可能な世界であると、想像しています。それぞれのレイヴンは、極端な話1人だけで、懐にちょっと余裕があるならば何人かのメカニックその他を雇って、単純な町工場程度のところで愛機を整備をして、依頼を請け負って仕事を遂行するといったイメージです。高度にモジュール化されたユニット構成であるとか、自己診断システムであるとか、そうしたいろいろなものの存在によってそれを達成するという事は、アーマード・コアという兵器システムを成立させる事そのものよりも、遥かに簡単な事だと思われます。
余談になりますが、『アーマード・コア』の世界設定、というよりは漠然とした『風景』として、映画『GUNHED』の中盤で、高嶋政宏演じる主人公のブルックリンがGUNHED507を再生するシーンを強くイメージしていました。故に、ソフトバンククリエイティブから出版されている『アーマード・コア メカニカルガイダンス』に掲載されている山下いくと氏のイラストが、イメージにちょうど合致しているというか、自分の想像が最高の絵で具現化したといった感じで、とても嬉しかった様に覚えています。
恐らく、エットーレ・ブガッティは、現代の、高度に電子化された自動車が、一般家庭の車庫に普通に存在する事を想像もしなかったかもしれません。同じ様に、アーマード・コアが、個人の所有で簡単な町工場程度のところで整備が行われている事を現代に生きる我々が想像するのは難しいかもしれませんが、そうした世界なのだと思っています。 - 当サイトでは初代『アーマード・コア』と、『アーマード・コア・プロジェクト・ファンタズマ』での設定に基づき、アーマード・コアの全高を6m程度、携行する火砲の最大口径は背部装備で120mm、手持ちで40mm程度としており、比較的小規模な兵装システムとして捉えています。戦闘機の様に飛行する事は出来ず、戦車よりも火力は劣り、そのシルエットから被弾面積も広くはなりますが、多彩な兵装とスラスタによる立体戦闘、そして格闘を可能にした事で、この世界の戦場の花形となっている存在としています。ただし、レイヴンという個人が持つ事が出来る兵装システムでしかなく、兵器というよりはどちらかというと凶器で、無敵の存在ではありません。割とありふれた、ちょっと特別な立場にある人間ならば持っている、という程度の存在です。スーパーロボット的な超兵器では無いのです。
-
それでも、アーマード・コアが1機あたり1億円程度というのは、現代の兵器に比べて安すぎる、と思われるかもしれません。実際、これを書いている私自身も、そう思います。しかし、現代の兵器と単純に比べられない点が2つあります。
まず1つは、『アーマード・コア』の世界が、現代にくらべて非常に、いや、異常にといってもいい程に機械化された世界であるという事です。地下複合都市が多数存在する程ですから、それを建設する事も、維持する事も、日常の範疇内という事になりますが、それらの日常への浸透ぶりは想像を絶します。どう考えても、地下複合都市の一つだけでも、現代の原子力空母以上の複雑で巨大なシステムを要しているはずですが、それが普通に存在する程の世界です。単純に「未来世界なのだから当然」といったところです。
もう1つは、アーマード・コアそのものが、ありふれた量産品であるという事です。前述の通りに、レイヴンの数は全地球規模で十数万人、それぞれのパーツは数千から数万の単位で量産されている事になり、現代兵器のそれと単純比較する事はできません。レイヴンとアーマード・コアを使った企業間の抗争はそれこそ日常茶飯事で、それらが消費されていく速度も尋常ではないはずです。そうした世界背景も考慮すると、やはり、現代の兵器と単純比較する事はできないと思うのです。
また、現代、それから現代兵器とのギャップというものを証明する「反対側」の証拠事例として、第二次世界大戦中の兵器の価格を挙げられます。かの有名な零式艦上戦闘機、要するに『零戦』は、現代日本の価格に換算すると、数千万円から1億円前後でしかありません。これが当時最新鋭、かつ主力、そして1万機を生産した兵器の価格となります。これを、当時とは技術水準も兵器システムの集積度も全く異なり、現代とは比較にならないとする事も可能ですが、そうであればまさに「『アーマード・コア』の世界は技術水準が全く異なり、現代と比較にならない」のです。 -
こうした理由から、アーマード・コアのエントリ・モデル、今日始めてレイヴンになった彼等もしくは貴方あるいは我々が入手する機体は、現代価格に換算して1億円程度なのではないかと思うのです。同じように中堅どころで十数億円、トップクラス、特にレイヴンズ・ネスト側からの支援も受けているレイヴンに至っては数十億円の機体に乗っているのでしょう。
個人的な想像というか、妄想を書き連ねましたが、貴方は、アーマード・コアのコストと、それをとりまく世界を、どう想像していますか?
(初稿:2009年5月・改稿:2023年8月)
- *1 文林堂の『戦争のお値段』から抜粋。但し、この本はイラク戦争の開戦に合わせて刊行を急いだのか、誤植が異常に多いので注意が必要です。
- *2 『地球暦』などの所謂『年表設定』は初代AC、ACPPには存在せず、ACMOA以降に公式に後から設定されたものです。初代AC、ACPPでは敢えて年表を作らず時代設定を曖昧にしています。
*注意*
当サイトでは、各種設定(機体のサイズ、武器や装備の性能や機能)に独自の解釈を加えています。
これは、公式設定、ゲーム本編等に一切関係なく、
これらに影響を与えるものではありません。