東急車両OB館〜あの名車は今〜



 東急線には3000系以外にも数多くの名車が活躍していました。
 代表的なものとして、昭和29(1954)年に登場し、東急の車両の高性能化の先駆けとなった5000系、日本最初のステンレスカー5200系、長い間東横線の急行として活躍した7000系があげられます。
 残念ながらこれらの車両を東急線内で見ることはもうできませんが、一部の車両たちは全国の中小私鉄に譲渡されて活躍しています。
 このコーナーではこれらの名車の「今」を追ってみたいと思います。
 なお、ここに掲載されている写真は大田区にお住まいのootabrianさんから頂いたものです。貴重なお写真、どうもありがとうございました。

画面をクリックすると拡大した写真をご覧になれます。

・3000系

弘南3404

弘南鉄道大鰐線の3404号。平成6年10月、大鰐温泉駅にて。

 昭和3年にモハ500形として5両製作された車両で、昭和17年にデハ3400形に改番されました。側窓の配置、2段窓など戦前の車両の基礎を確立した車両とされています。昭和49〜50年に廃車されたのちに青森の弘南鉄道に譲渡され、現在も活躍を続けています。

・5000系、5200系

上田5000系_1

上田交通の5000系(左)と5200系。平成4年5月、別所温泉にて。

 昭和29年に東横線に登場したモノコック構造車体、直角カルダン駆動などの新機軸を採用し、東急の車両の高性能化のはしりとなったのが5000系です。車体の重量は骨組みで支えると言う従来の設計とは異なり、外板そのものを強度部材とする構造(モノコック構造)としたため、従来車よりも約3割の軽量化を果たしました。また、その独特のスタイルから「青ガエル」というニックネームがつきました。
 しかし徹底した軽量化構造のために冷房装置が載せられないことから徐々に東横線の地を追われ、昭和50年代後半から全国の中小私鉄に譲渡されるようになりました。
 上田交通には昭和61年10月より、日本初のステンレスカー(外板のみステンレス)5200系を含めた12両が転籍してきました。
上田5000系_2

上田交通5200系の運転台。

 前面非貫通のため、広々とした運転台です。
 5000系は上田電鉄のみならず、長野電鉄、松本電鉄、岳南鉄道などなどに譲渡されましたが、車齢が40年以上に達している上に冷房化もままならず、最近になって他の車輌に置き換えられるケースが増えてきました。
 上田交通でも現在では5000系は5200系を含めて全廃され、平成5年5月より元東急7200系の冷房車に統一されています。
熊電5000系_1

熊本電鉄の5000系。平成7年4月、御代志にて。

 熊本電鉄には昭和56年11月から昭和60年12月にかけて6両が譲渡されました。
 熊本電鉄は直流600Vの線区なので(東急は直流1500V)、降圧化工事が施工されています。
 両脇に後方確認のためのミラーがついていることから、ワンマン仕様であることがわかります。
熊電5000系_2

両運転台化された熊本電鉄5000系。平成7年4月、藤崎宮−黒髪町にて。

 熊本電鉄では単行(1両のみ)運転が行われているため、連結面側にも運転台が新設されています。
 もともと丸みがある表情が特徴的だっただけに、個人的にはちょっと違和感を感じます。
 なお、熊本電鉄も近年都営三田線で活躍した6000形を導入して車両の近代化を図っており、5000系全廃の日もそう遠くなくなってきました。
 もはや全国で5000系が現役で頑張っている姿を見ることは、できなくなりそうです。
倉庫になった5200系

おまけ:倉庫になった5211号。平成4年5月、下之郷にて。

 これは上田電鉄に在籍している5211号で、運用には就いていませんが倉庫として余生を送っています。
 車内には目蒲線時代に使われていた広告がそのまま残っているそうです。

・7000系

水間7000系_1

水間鉄道の7000系。平成7年3月、貝塚にて。

 7000系は昭和37年から41年にかけて米国バット社と東急車輌との共同開発で作られた、日本発のオールステンレスカー(外板だけでなく、台枠、柱、屋根など全てがステンレス製)です。
 もともと日比谷線直通用として導入されましたが、東横線の急行用としても使われてきました。
 その後56両が7700系に改造され、こどもの国線用の2両を残した76両が大阪南部の水間鉄道や北陸鉄道、秩父鉄道などに譲渡されています。
 水間鉄道では、平成2年8月に10両が譲渡されており、同時に架線電圧を直流1500V(従来は600V)に昇圧しています。
 写真左側の7101号を含めた4両が譲渡の際に冷房化改造を受けています。
秩父鉄道2000系_1

秩父鉄道の2000系。平成7年8月、三峰口にて。

 秩父鉄道では平成3年11月から16両が2000系と車番を変えて運用に就いています。
 一番最後に譲渡された2000系は、譲渡された7000系の中では最長の4両編成を組んでいます。
 なお、冷房改造工事は未施工です。




池上線ホームへ戻る