趣味の花蓮栽培

園芸植物の中でも屈指の美しさを誇る蓮。日本各地にある蓮池は夏の観光名所にもなっています。

そんな蓮の花を，自分の庭で咲かせてみませんか？
適切な管理を行えば，意外と簡単に花を楽しむことが出来ます。
このサイトでは，花蓮栽培がより広く普及することを目指して蓮栽培の要点を紹介します。
蓮マニアの栽培方法から細かい部分は大胆に省いて，目指すは普通の人向けの普通の栽培手引きです。
現在仮オープン中ですが，内容は随時修正，追加してゆきます。（最終更新日：2006.9.1）

蓮の育て方

用土・・・
粘土質で重く，肥沃なものが適しています。
田土が手に入れば最高で，次いで園芸用の荒木田土が好適です。
上記の土が手に入らない場合は，練った赤玉土や畑の土，黒土でも代用可能です。
赤玉土のように肥料分の少ない用土を使用する場合は，発酵堆肥を2割ほど混入しましょう。
ピートモスなど浮遊物を多く含んだ軽い土や，砂礫質のものはあまり適していません。
赤玉土の代わりに芝生の目土を使用すると，練るのが楽になります。
芝の目土は製品により内容物が様々ですが，顆粒状の土のみの製品を選びましょう。
大量の用土を練る必要がある場合は，電動の撹拌機などもあります。（電動撹拌の場合，芝の目土はあまり適さない印象を受けます。粒の大きさが均一で軟らかいため，粒同士がぶつかっても粉砕されないようです。）
荒木田土は大きな塊があれば崩す程度でよく，必ずしも水で練る必要はありません。
赤玉土を練らずに使用して栽培している例がありますが，よりよい生育環境を確保するためにも，できれば練りましょう。
容器・・・
円筒形の，タライ状のものが適しています。
直径は大きい程よく，小型種で30cm～，中型種で40cm～，大型種で50cm～が目安です。
ただし容器が大きくなればなるほど，用土の量が増えますし，植替えや置き場の問題も出てきます。
また，大きな容器で栽培すると蓮根がゆったり成長しますので，株分けの際に小さい容器に植えようとしても種蓮根が容器に収まりきらない場合もあります。
深さは20cm程度あれば大丈夫ですが，浅い容器だと常時水に気をつけておかないと夏場に水切れする恐れがあります。
直径に比して深さがありすぎる容器だと，日光が中まで射しにくいなどの問題が生じますので，バランスの取れた容器を選びましょう。
植付・・・
地下茎が伸びる先の空間を空けて浅く植え，水を張りましょう。
管理・・・
蓮は何よりも直射日光を好むので，できるだけ日に当てましょう。
水上に葉が立ち上がる頃から肥料を入れましょう。
葉色が薄く葉脈が目立つのは，日照ないし肥料不足です。
水換えは基本的に不要です。葉が本格的に展開してくると水の吸い上げが激しくなるので，特に夏場は水切れに注意しましょう。
冬は地上部が枯れ，蓮根で越冬します。冬場も水を切らさないよう注意しましょう。
耐寒性は強い部類に入りますので，水の表面に氷が張る程度の寒さには十分に耐えます。
容器の底まで凍りつくような寒冷地では，室内に取り込むなどの対策を取った方が無難です。

肥料・・・
蓮の成長と開花には肥料が欠かせません。
例えば上野公園・不忍池では大繁殖したカワウが排泄する大量の糞で池の水が極端に富栄養化し，それと引き換えに蓮が大繁殖しているほどです。
観賞用に容器栽培する場合は，安全かつ効果的に効き，悪臭も発さない肥料が求められますが，お勧めはバイオゴールドです。
バイオゴールド100％有機成分の固形肥料ですが，水中に投入しても腐敗臭が生じない，根に直接触れても植物に悪影響が出ない，水生生物への悪影響が少ないなど，水生植物用の肥料としても理想的です。

化成肥料	すぐに肥料分が溶け出し，即効性がある。量を間違えると濃度障害が出やすい。
有機肥料	即効性はあまり期待できない。物によっては水が悪臭を放つ。
バイオゴールド	水中ですぐに肥料分が溶け出し，即効性がある。多く与えても濃度障害の心配が少ない。水が臭くならない。

（不忍池のカワウは，1949年に羽田空港の建設で営巣地を失った東京湾のカワウを放したもので，最初は19羽だったものが現在は400～500羽に増えているそうです。）（増えすぎた蓮の駆除のため，今度は傷ついて保護されたハクチョウなどを放ってハスの芽を食べさせる実験も進められているとのことです。人間が自然に手を出すと連鎖的にバランスが崩れてゆく良い見本と言えるでしょう。）

植替・・・
桜前線の頃を境に芽が活動を始めますので，それより少し前の時期を目安に毎年必ず株分けと植え替えをしましょう。
一年間栽培した後では容器の中いっぱいに蓮根が成長しているので，容器をひっくり返して中身を出したら芽の付いた太い部分を2～3節選んで切り分け，種蓮根として植え付けます。
健康な芽は白色または薄茶色をしています。黒味がかった紫色の場合は腐りかかっている可能性あるので破棄しましょう。
植替えの際に臭いがしますが，これは主として嫌気性のバクテリアによって生じる硫化水素の臭いで，水生植物を栽培する際には避けられないものです。
魚を一緒に飼う場合・・・
蓮根が成長してくると土が盛り上がって水の溜まる場所が減ってくるので，それを見越して深めの容器を選びましょう。
蓮の茎にはトゲがあり，網ですくおうとすると引っかかるので，その点に留意しておく必要があります。
病害虫・・・
アブラムシが良く付きますが，枯死するような被害を受けることはまずないと考えて差し支えありません。
メダカを飼っているなら，アブラムシを捕まえて水面に落としてやると良く食べます。
芋虫，毛虫の類が付く場合もありますので，葉に食べられた跡を見つけたら探して駆除しましょう。
開花後は，花にハムシやコガネムシが付くことがありますので，花弁を食べられないように見つけ次第駆除しましょう。
ボウフラ対策・・・
メダカを入れるのが一般的ですが，蓮の鉢は夏は炎天下にさらされ，冬は氷が張るような環境に置かれるので，虚弱な固体では持たない場合があります。
そもそも，特定の生き物が大量発生するというのは自然のバランスが崩れた結果に他ならず，鉢の中にミジンコ，アカムシ，イトミミズなどが生息している場合はボウフラのみが大量に発生するケースは少ないように感じられます。
薬剤を使ってしまうとボウフラ以外の生物も死滅し，薬剤が切れた後にまたボウフラが大発生，の繰り返しになりかねないので，あまりお勧めしません。
蓮の入手方法・・・
種，蓮根，苗の3つの状態で入手することが可能ですが，最も一般的なのが春に蓮根で入手する方法です。
水生植物専門店，園芸店のほか，インターネットオークションに出品されていることもあります。
夏場になると，ホームセンターの園芸コーナーでポット苗を見かけることもありますが，店先では必ずしも日照が十分でなく，傷んでいる場合もあります。
ポット苗を入手する場合は，信頼の置ける専門店で購入するか，こまめに店を見て回って入荷したらすぐ購入することを勧めます。
種から育てる場合は，下記の理由により性質が不確定ですので注意が必要です。
専門家は実生1年目で開花させるそうですが，普通は開花まで2～3年を要します。
品種・・・
蓮の遺伝情報は不安定で，種になった時点で親とは遺伝情報が異なっています。
従って実生するだけで新品種を作れるため，非常に多くの園芸種が生み出されています。
品種を追いかけだすときりがありませんが，その一方，花型や性質を知るための手がかりとしては重要です。
一般的に園芸種は花が咲きやすく性質も強健なものが物が多いですが，原種や古来から伝わる品種の中には気難しいものもありますので，初心者は手を出さない方が無難です。
今は品種名を手がかりにすればそういった情報を得ることも簡単になってきていますので，品種名に振り回されることなく，1つの情報として有効に活用しましょう。 →蓮の品種について学ぼう

（難しい品種の例：大賀ハス，白君子小蓮，アメリカ黄花ハスなど）
（蓮の品種を外見から同定することは事実上不可能とされています。）
ベランダでも栽培できる？・・・
日照さえ確保できれば，あとは強風に注意する程度で生育自体は問題ありません。
ベランダや屋上で蓮を栽培する場合の最大の問題は植替えです。
枯れた茎や根を含んだ泥が発生するので，周りを汚さないように植替え，用土を適切に処理する必要があります。
直前になって慌てないように，あらかじめブルーシートやトロ舟などを用意しておくと良いでしょう。
蓮根は食べられる？・・・
食用のレンコンを取る蓮と，観賞用の蓮は品種が違いますが，観賞用の蓮の蓮根も食べられます。
ミニチュアサイズの蓮根が採れるので炊き込みご飯などに入れると目にも楽しい具になる他，きんぴらなどにもできるそうです。
蓮根以外に種も食用になります。緑色のまだ熟していない種の中身は，焼いてもそのままでも食べられます。
葉にも芳香があり，食材を包んでも蒸しあげる「蓮の葉蒸し」，葉の付け根に穴を開け，茎を通してお酒を飲む「象鼻杯」などに利用できます。