1.◆メガビタミン◆
■ 概要 ■
分子栄養学ではメガビタミンという考え方があります。メガというのはパ
ソコンのメモリなどの単位のMB(メガバイト)のメガと同じことばです
が、ここでは「大変多くの」という意味で使っています。
簡単に言えば、最も良い健康状態を保つために積極的にビタミンを大量に
摂ることです。その量は、一般的にいわれている所要量の10倍から100倍に
もなります。メガビタミンの考え方は、アメリカのポーリング博士や日本
の三石教授が提唱しました。
10倍から100倍も!とびっくりなさらないで下さい。そもそも所要量という
のは厚生省が定めた健康を維持する最低限の量だと思って下さい。たとえ
ば、ビタミンCの所要量は50mgですが、これは壊血病(かいけつびょう)
にならないための最低限の量です。
ところが、ストレスや免疫機能、たばこやお酒などでビタミンCはたくさ
ん必要です。50mgではとてもとても足りません。シミやそばかすにビタ
ミンCを飲んでいるのにちっとも効かないと思っていらっしゃる方は、他
の重要なところで使われて、優先順位の低いシミなどに回っていないと思
って下さい。たばこ1本の喫煙ですら50mgくらいは壊れてしまいます。
■ カスケード理論 ■
このことを前述の三石教授が「ビタミン・カスケード理論」で説明してい
ます。カスケードとは段々の滝という意味ですが、段々になった棚田で説
明してみましょう。名前は大げさですが簡単な理屈ですよ。
棚田をちょっと想像してみて下さい。稲を育てるためには水が必要ですか
ら、一番上から水を流してやれば順々に下まで流れて水が行き渡ります。
ところが、もし流す水が限られていて、途中の段でたくさん水を取られて
しまうと下の段まではとても行き渡りません。
この水をビタミンだと考えると、ビタミンの量が少なければ必要なところ
にすべてが回り切らないことがよくわかります。しかも、この段々の数や
大きさ、順番、必要とする水の量は人によっても健康状態によっても違い
ます。これが個体差と言われるものです。
そして、上の段ほど生命に関わる重大な意味があり、下の段ほど重要度は
低くなります。ビタミンCでいえば、生命に関わる免疫の段は上で、シミ
などは下の方です。
棚田をすべて潤すには大量のビタミンが必要です。少々あふれるぐらいで
ないとリスク回避ができません。これがメガビタミンの考え方です。ただ
やみくもに大量に摂ることを薦めているのではなく、積極的に生命の状態
を最善に持っていこうとする考え方です。
そして、どれくらいの量を摂ればよいかは個体差で違ってきます。これは
計算できるものではなく、個人個人が実際に摂りながら量を決める経験的
なやり方が最もぴったりくるようです。
現代のような複雑な環境下では、ビタミンをはじめとする必須栄養素を人
体はますます必要としています。みなさんももっと積極的にビタミンを活
用する必要があります。
なお、ミネラルについてはカスケード理論は当てはまりません。ミネラル
は一般的に摂取量の上限と下限の範囲が狭く、大量に摂るという考え方は
適しません。
例えて言えば、鉢植えの植物に水をやる場合、やりすぎればすぐに鉢から
あふれて根腐れを起こし、やらなければすぐに乾いて枯れてしまいます。
最適な水の量は狭い範囲で限られている、ということです。
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