93.◆残酷なALSの治療に光明か◆
ALSをご存じですか。英語ではAmyotrophic Lateral Sclerosis、
日本語では筋萎縮性側索硬化症と大変難しい名前の病気です。残念な
がら治療法はなく、致死率は100%です。
ALSは残酷な病気です。体中の筋肉の自由が効かなくなり、最後は肺
の筋肉も動かなくなるため呼吸ができず、半年〜数年で死に至ります。
統計的には5年後の生存率は20%です。
最初は手足からはじまって、やがて全身の筋肉が麻痺して動かなくなり、
口も利けなくなります。こうなると寝たきりになり、動かすことができ
るのはまぶただけという状態になります。
しかし、脳や神経は正常なので、まったく動けなくても喜怒哀楽や痛み、
かゆみも感じます。自分の意志がほとんどない植物状態とは根本的に違
う点が残酷なところです。
日本では年に10万人に2人の割合で発症しています。40〜60代の男性に
多く、男性は女性の2倍の発症率です。しかも誰にでも起こる特発性の
発症率が90%以上なので、明日にでもあなたが発症する可能性があるの
です。不思議なことに、紀伊半島やグアムは10万人に10人の割合で発症
しているという地域特異性があります。
ALSの原因はまだよくわかっていません。水にマグネシウムやカルシ
ウムが少なく、アルミニウムやマンガンが多い場合が有力視されていま
すが、因果関係はまだはっきりしていません。
ところで、神経細胞の働きを助ける役割を持つグリア細胞というものが
ありますが、このグリア細胞の異常がALSを進行させることが発見さ
れました(2008.2)。このグリア細胞を狙えば効果的なALSの治療法
が開発できる可能性が出てきました。
意識がはっきりしているのに何年も身動きができず、ただ死を待つだけ
という残酷な病気の治療法が、1日も早く見つかることを願って止みま
せん。
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