群馬音楽センター

「ひとつの都市にひとつのオーケストラとひとつの音楽ホールを」
この建物が建てられる前に掲げられた高崎市のスローガンです。
この音楽センターが高崎市民にとって、如何に重要なものであったか、ここへ訪れて知ることができました。
高崎駅から延びるメインストリート(その名もシンフォニーストリート)沿いに位置し、
地域にとって歴史的に最も重要な土地、「高崎城址」に建てられたという理由だけでも、
当時の市民のこの建物に対する歓待ぶりを伺い知る事ができます。
しかも建設費の半分は市の予算、足りない分は市民の寄付金によって賄われたというから驚きです。
(今だったら、おそらく建設反対運動が起こるかも知れませんね。:苦笑)

こういった周囲からの期待をうけて、レーモンド自身にとってもかなり力の入った仕事だったでしょうし、
間違いなく彼の代表作のうちの1つに数えられるものだと思います。
前述のとおり、極力経済的に建設する必要があった中で、
景観を損なわないことを絶対条件とし、しかし音楽ホールとしての機能を最大限発揮させる必要があり、
建物の高さにはかなりの神経を使ったようです。

ところで、施工者の井上工業の社長・井上房一郎氏の自邸は、
レーモンドの笄町の自邸そっくり(左右対称)に設計され、この高崎の地に建てられています。
2人の交流は古くからあって、陶芸などの芸術を通してお互いの理解を深めていったようです。
この音楽センター建設計画もそこからもたらされたものでしょう。


Data
所在地:群馬県高崎市高松町28
構造:R.C.造2階 地下1階
施工者:井上工業
建築年代:昭和36年
備考:構造顧問 岡本剛

訪問当日は生憎の雨模様。
しかし歌手の無料公演が開かれていて、ホール内へ入れました。
レーモンド作の緞帳は無かったようです。
 
 
 

壁面に描かれた抽象画は夫妻の共作によるもの。
 

現代的な造形美を魅せる階段。

2階のホワイエはとても開放的


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