旧イタリア大使館日光山荘

レーモンドの優れた別荘建築の代表にあげられる作品のひとつで、
栃木県は日光中善寺湖の畔にあります。
建物の外観はウッドシングル(こけら板)と杉皮張りによるもので、
その両者が、縞や市松模様のように編み込んで張られている部分もあり、
素材の持ち味を生かした、とてもユニークなデザインに仕上げられています。

中へ入って、まずはじめに目に飛び込んでくるのが、
リビングの窓の向こうに広がる、湖と山々の素晴らしい眺望。
訪れた人の多くが、感嘆の声をあげます。
日本の縁側からヒントを得てつくられたと思われるこの屋内ポーチは、
大きな開口をもって、この眺望を最大限取り込んでおり、
実に開放的で心地よい空間を創り出しています。

1階にはこのポーチとガラス戸一枚を隔て、執務室、リビング、ダイニング、
その隣りに2面採光の客間、奥にキッチン、
そして2階にはベッドルームが4室という配されています。
杉皮と竹を使って、幾種類ものパターンで編み込まれた内装は、
様々な表情で天井や壁を埋め尽くし、同一の素材を使いながらも、
そのデザインには外装以上に腐心した様子が伺えます。
また、この壁材をはじめとして、石積みの暖炉に竹製のチェアなど、
実に野趣に富んだ、別荘建築らしい趣きのある雰囲気を醸しています。

当別荘は、著名な建築家による特別に手の込んだ作品という建築的価値に加えて、
古くからある中禅寺湖周辺の大使館別荘の代表的な建物という歴史的な価値の高さなどが評価され、
本来の役目を終えたところで、県が買い取りに名乗りを上げました。
その後建物は竣工当時の姿に復元され、敷地一帯も公園として整備し、
現在は無料で一般公開されています。

Data
所在地:栃木県日光市中善寺湖畔
構造:木造2階(他に副邸木造1階あり)
施工者:
建築年代:昭和4年

 

建物内部の写真撮影は禁止でした。ご紹介できなくて残念です。


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