大洪水


なぜか飛行場に釣り人が

 「昨日は少し雨が降ったけど滑走路は乾いているかなあ」と思いながら飛行場への下り坂を降りてきた私はひとりの釣り人とすれ違った。んっ?いったいなんだってこんなところに釣り人が?次の瞬間私は信じられないような光景に愕然とした。道がない。いや道が有るはずのところに湖がある。飛行場へあと数百メートルの地点から先が完全に水没しているのだ。いったい何が起こったのだ。滑走路は?機体は?さっきの人はよく見ると水没した道路の水際で本当につりをしていたのだ。

遊水池

 我々の飛行場は利根川の遊水池にある。遊水池というのは普段は水がないのだが、万一利根川の水位が高くなり氾濫の恐れがあるときに水門を開けて一時的に水を逃がす場所のことである。しかし我々のクラブが作られて十数年この方、放水が行われたことは一度もないため普段そんなことを意識することは無かった。だが、昨日利根川の上流地域で豪雨があり水位が異常に増したためついに遊水池への放水が行われたらしい。一夜のうちに広大な滑走路は水没してしまったのだった。初めて見る光景に茫然としならがも、ああ、こんなことならカメラを持って来るんだった。などとちょっと不謹慎なことを考える私であった。

四駆で良かった

 とにかく滑走路の見えるところに行かなくては。仕方が無く土手の上を走って大回りで滑走路の反対側までたどり着き、やっと滑走路が見えた。想像していたほどひどくはない。水浸しにはなっているが滑走路自体は周辺よりすこし高くなっているので水上に出ている。ふと見ると滑走路横にパジェロの姿が。「あれっどこから入ったんだろう」よく見ると滑走路端の普段は藪になっているところにぐちゃぐちゃの泥の轍がある。「さすがクロカン四駆。こっちもあそこから入れるかなあ」私の車も四駆だがステーションワゴンなのでパジェロのような走破性はない。途中でスタックしたら最悪なことになる。かなり悩んだが思い切って突っ込んでいった。途中タイヤが空回りする感じはしたが思いの外簡単に突破でき、滑走路脇を水しぶきをあげながら走りクラブバスのところへたどり着いた。

機体は水びたし

 既にクラブ員が2人が来ており、機体は引き出されていた。ピーク時は相当水位が上がったらしく、エンジンは水没を免れたが、計器類はすべて水没して水が入っていた。クラブバスの中は座席の座面くらいの高さまで水があがったらしい。格納庫は地面から1メートルくらい水があがったようで工具箱やいろいろあったがらくた類がさんざんな状態になっている。途方に暮れながらも、とにかく機体を乾かすため計器類や座席カバー、カウリング等すべて外し、水平尾翼に入った水を抜くため機体を傾けておく。まだ水が完全に引いていないため、長靴が泥にずぶずぶ沈みながらの作業である。ため息。

二駆はスタック

 先に来ていた2人は車を土手の上に置いて歩いて来たと言うことだった。私が車でここまで来たことを聞いて、工具類が車の中にあるので自分たちも持ってこようということになった。藪の泥沼を突破出来るかどうかが問題だが、軽四駆の方は難なく突破し、二駆のバンはあとちょっとのところでスタック。私の車で引っ張って無事脱出。

木箱があんなところに

 ふと見るとクラブバスの入り口に踏み台として置いて有った木箱が無い。あれっどこに行ったんだろう。水で流されたのだろうが周りを見渡してもなかなか見つからない。その後滑走路の真ん中辺、バスから200メートルほど離れたところに発見。あんなところまで流されるなんて。

泥沼で立ち往生

 夕方、まだ乾いていないが出しっぱなしには出来ないので機体を格納庫にしまう。さて今日はもう帰ろうということになった。ところが先ほどの泥沼に軽四駆が入っていった思ったとたんにストップ。タイヤが空転して全く動かない。どうやら我々の車が通った後にも車が何台か通ったため泥沼がだんだん掘れて深くなっていたようだ。私の車で牽引したが、おもいきり回転をあげてもびくともせず、クラッチ板から焦げ臭いにおいが...だっ、だめだ。ああ、スーパーローが欲しい。外に通ずる道路はすべて水没しているためここが通れなくなると外に出る方法は無い。我々の車がここを塞いでいると今いる車はみんな閉じこめられてしまう。このまま車を捨てて徒歩で帰るしかないのか。そんなのやだ(;_;)

正義の味方登場

 そこへ颯爽と現れた正義の味方、本格四駆ジープチェロキー。我々を見かねてひっぱてくれるという。素直にお願いして見ていると、あっと言う間に引っぱり出してくれ、そのまま牽引して泥沼を突破してくれた。う〜ん同じ四駆でも雲泥の差だ。他の車も牽引してくれるという。私の車は一応センターデフ+ビスカスLSDのフルタイム四駆なので牽引してもらうのはちょっと自尊心が傷つくのだが、万一泥沼の真ん中辺でスタックしたらロープをかけることすらままならないので、意地を張らずに牽引してもらうことにした。しかし四駆が牽引されている姿は非常に情けない。とほほ。

無事帰宅

 結局、我々三台はチェロキーのおかげで無事に土手沿いの道に到達でき、「ありがとう〜」と正義の味方チェロキーに手を振って別れ、無事に帰宅できたのだった。めでたしめでたし。

ところが

 が、まだ話は終わらないのだった。一週間後に飛行場に行って知ったのだが、我々を助けた後チェロキーが自分も帰ろうとして例の泥沼を越えようとしたところで動けなくなってしまったらしい。我々の車を牽引するために何度も泥沼を往復したため泥沼はますます深くなっていてついに限界を超えてしまったようだ。結果的に我々のために犠牲になったわけで申し訳ない。しかし、重量級のチェロキーを引っぱり出せる車なんてあるのだろうか???

上には上が

 そんな車あるのかと思ったらありました。飛行場整備用のブルドーザーを出動させて引っぱり出したそうです。どんなすごい四駆でもさすがにキャタピラにはかないませんな〜。ついでに藪の部分をならして新しい道を造ってしまったとか。チェロキーもすごいと思ったけど上には上が有るもんですね。

その後

 結局、機体の方は昇降計と排気温度計がいかれてしまいました。まあ昇降計は無くても飛行にはあまり差し支えないですが、排気温度計が無いのはちょっと怖いですね。早く直さなくては。

 

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