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応用編  円錐形の管楽器はなぜ「開管楽器」? 

● リード楽器

リード楽器では、演奏者側の端は外気に開放されておらず、空気の粒は自由に動くことができません。
クラリネットを想像してみてください。円筒形でベルエンドで外側の空気に開放されていますが、口を当てる方の端は閉じています。


                               Fig.1管楽器の構造の模式図

Fig.1を見てください。これらは管楽器の構造を模式的に表したもので、(i)フルート (ii)クラリネット (iii)オーボエ,サクソフォン,ファゴットです。
おわかりのように、(i)と(ii)はほぼ円筒形、(iii)はほぼ円錐形になっています。

 ☆円錐形の構造をもつ管楽器について

これまでの考察で円筒形の管楽器の場合の定常波のでき方は理解していただけたと思います。
ところで、オーボエ、ファゴット、サキソフォン(サックス)のような円錐形の構造をもつ管楽器はこれまでの考察には現れませんでした。
これらの楽器は一端開口、他端閉口の構造をもっていますが、全体の構造として円錐形をしているというのが大きな特徴です。
そして、この場合はまた別な考察が必要とされます。



空気中に一つの点音源があると想像してください。
この音源から音が発せられるとき(音は同心球状に広がっていくものとします)、点音源からの距離rの地点における音波の強さは r の二乗に反比例します。

わかりにくいでしょうか?
それならば、球の表面積の公式 4πr^2 を思い出してください。
あるエネルギーEをもつ音が音源から発せられたとき、音源からの距離 r の場所(球面)における音の単位面積辺りのエネルギーは、Eを半径rの球の表面積で割ったものになります。音源から r の距離での単位面積を通過する音のエネルギーは E/(4πr^2)で表されることがわかります 。

この式からわかるように、音のもつエネルギーは音源からの距離の二乗に反比例しています。
また、波のエネルギは振幅(または圧力、速度)の二乗と比例するので、音の圧力および速度は、音の球状放射においては、単純に距離 r に反比例(1/rに比例)するものと考えられます。

円錐管状の管楽器の場合はこのような原理に従って管内の様子を考察することが必要になります。具体的にはリードが点音源であり、それにつづく円錐状の管は球の一部分にあたります。



↑点音源からの音の波の伝わり方。同心球状に伝わる。このような波を『球面波』という。

これを円錐管楽器に当てはめると



↑これはちょっと円錐が開きすぎていて大袈裟ですが、概ね上のような感じです。


円錐形の管構造をもった管楽器を考える場合、管の断面積に変化があるため、単位面積当たりの波のエネルギーの変化が起ってくることがわかると思います。
今までの普通の管ではこのようなことは起こりませんでした。

ここでは、円錐管状の管楽器では、単位面積を通過する波のエネルギ(振幅、圧力、速度)がリードからの距離 r に反比例(=1/rに比例)する、ということをよく覚えておいてください。



ここで、「境界条件」というものを考えます。
この場合は簡単にいえば管の両端における条件のことです。

フルートのような両端開管の楽器の場合、開管部の空気の圧力は常に大気圧に等しいので音圧と大気圧との差はゼロになります。
管内の空気の密度(外気の密度との差で表す)は、両端でゼロであることを考えると、波長が2L/n(n=1,2,3,…)であるサイン波を用いる式によって表されることがわかります。


↑サイン波(y=sin(X))。X=0のときY=0でスタートしていることに注目!
なぜサイン波を使うかというと、X=0のときに値が0になるような波だからです。

具体的にフルートなどの開管楽器内の空気の密度の時間的変化の(「の」が多い!!)グラフは下のようになります。(注:大気の密度との差を表現しています)


                               (この例は2倍振動=2倍音)

赤い線がフルートのボディーと考えてください。(断面図)
上では、この図で説明すると、両端で密度差のグラフの振幅が0(大気との密度差=0)になるように式を作ったのです。
このグラフではワクと振幅が一致していますが、ワクとグラフの縦方向の値(波の振れ幅)は関係ありません。このグラフは単に、フルートのワクと波の、横方向の位置関係を示しているだけです。




次に、円錐型の管の場合、開管部の空気の密度は常に外気の密度に等しいので、密度の差はゼロになります。
しかしリードの部分では管内の気圧と大気圧の差は最大値をとります。

また、上でも書いたように、円錐形の管楽器の場合、音の波のもつ振幅、圧力、速度は、リードからの距離 r に反比例します。
よって音圧の分布を表す式は、開口部に向かうにつれて減衰し≪ゆえに、1/r×sinの波(サイン波)≫、かつ r=Lとなる終端部にはサイン波のゼロの部分が来る≪ゆえに、波長が2L/n(n=1,2,3,…)≫ので、波長が2L/n(n=1,2,3,…)の1/r×sinの波(サイン波)で表されることがわかります。(*脚注)


え???なんだって???
円錐管の場合の密度グラフは
波長2L/n(n=1,2,3,…)のサイン波……あれれ!???
そ、それって開管楽器の場合とイッショじゃん!

両端開管の場合と全く同じであることに気付きましたか?

この式からわかること。。。つまり同じ長さの円錐形の管楽器には、両端開管の管楽器と同じ周波数の基本振動、倍音が生じているということです。

ところで、1/r×sin(r)のグラフなんてイメージできないぞ!ゴルァ!という声が聞こえてきそうです。
というわけで、下の図を見てください。



↑このグラフは普通のサイン波sin(r)<青い線>と1/r×sin(r)<赤い線>のグラフの違いがわかるようにしたものです。
1/r×sin(r)のグラフはsin(r)のグラフのように r →0で0でないことに注意してください!
また、だんだん減衰していることにも注意してください。

さて、上で見た 1/x×sin(x)を使って、円錐管の中の空気の密度変化の時間的変化をグラフを見てみましょう。(注:大気の密度との差を表現しています)


                      図A(この例は10倍振動=10倍音)

白い太い線が、例えばサックスのワクと考えてください。(断面図)
上では、この図で説明すると、リード側で大気との密度差のグラフの振幅が最大に、開管部側で常に0になるように式を作ったのです。
管の断面積が大きくなるにつれて、波が減衰していっていますねぇ!

このグラフでは、ワクとグラフの縦方向の値(波の振れ幅)は関係ありません。このグラフは単に、サックスのワクと波の、横方向の位置関係を示しているだけです。。

さて、この密度を表すグラフに縦波のグラフを重ねて見たものが下のグラフです。
緑の波が管内に生じている定常波です。
(ちなみに緑の波のグラフは -(1/r^2)×sin(r)+1/r×cos(r)という式で表されます)



次に、円錐管の定常波のグラフ(緑)に両端開管に生じる定常波のグラフ(オレンジ)を重ねてみます。
管の長さが同じである場合、入っている波の山の数が、円錐管と両端開管でほぼ同じであることが目で観察できると思います。(最初の大きな波は特別なので、1.5コと数えてください)

波の数が同じ⇒管の長さが同じなら同じ高さの音が出る、といえます。


基本振動

4倍振動

2倍振動

5倍振動

3倍振動

6倍振動


円錐形の管楽器は、片方が閉じているにもかかわらず、定常波を構成する波の数については、いわゆる「閉管楽器」としての性質を持たず、「開管楽器」としての性質を持つことがわかりました。
不思議ですねぇ。


これで円錐形の楽器は、片方が閉じているのになぜ開管楽器としての性質を持つのか?の考察は終わりです。


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