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§番外編  オカリナとヘルムホルツ共鳴 

ここまでは管楽器を円柱状や円錐状に近似して様々な考察を行ってきましたが、物事に例外は付き物でありまして(^-^;、その枠に収まってくれないものもあるようです。その一例にオカリナがあります。これはどうやら閉管・開管という考え方ではとらえられない楽器のようです。

先に断っておきますが、このページではオカリナの構造に即した発音原理の考察にまでは至っていません。それの元になると思われる理論を考えています。
(いずれは、実際のオカリナではどのようになっているのか?も考察したいと思っています)




※なお、以下の部分の原文は、サウスウエールズ大学シドニー校の物理学部の音響学部門 (http://newt.phys.unsw.edu.au/music/) のDr. Joe Wolfe (http://www.phys.unsw.edu.au/~jw )
によって書かれたものであり、著作権はDr. Joe Wolfe氏が保有します。




 ヘルムホルツ共鳴器もしくはヘルムホルツオシレータは開口部を持つ、ガス(通常は空気)を蓄えた容器です。内部の空気の"バネ的な性質"のために開口部やその近くの空気が振動します。

 例としては空のボトルがあります。ボトルの一番上の口の部分に横から息を吹きかけると、内部の空気が振動します(下図の一番左)。これは実際にやってみるとおもしろいですが、驚くほど低く大きい音が生じます。

 小さいホイッスルにはヘルムホルツオシレータであるものもあります。ギターのボディーの中の空気もヘルムホルツ共鳴器とほぼ同様に振る舞います。オカリナはこれよりもほんの少し複雑な例です。拡声器はしばしば、音声の周波数応答を増幅するために筐体のヘルムホルツ共鳴を利用します。

 ここでは、この振動(ヘルムホルツ共鳴の振動)を分析していきましょう。 まずは簡単な考察をし、その後ヘルムホルツ共鳴の振動数の方程式を導いてゆきます。



 ヘルムホルツ共鳴の振動は空気の"バネ的性質"によるものです。空気を圧縮したら圧力が増し、もとの体積にまで戻ろうとして膨張する傾向が生まれますよね。

 ボトルのネックの部分にある空気の"かたまり"を考えてみます(真ん中の図の陰を付けた部分)。空気の噴流はこの空気のかたまりをネックの下方向に押し下げ、内部の空気を圧縮します。さらに、このようにして生じた圧力は空気のかたまりを外に向けて押し返します。この働きで、そのかたまりは一旦もとにあった場所に戻るのですが、それのみならず、慣性によって元の位置より少し外側に出てしまいます。これによって内部の空気圧は低下し、空気のかたまりが再び中に向けて吸い戻されます。この様にして空気のかたまりは、あたかもバネの上のおもりのように振動することができるのです(一番右の図)。口から出た空気の噴流はボトルの中に入ったり出たり、どちらの方向にも力を与えることができ、これが振動を持続させる力を供給しているのです。

定量的に考えよう:

 まず最初に、作り出された音波の波長は共鳴器の長さよりも十分に長いものと仮定します。典型的なボトルにおいて、ヘルムホルツ共鳴によって生成される音の波長は数メートルですから、この仮定がよく当てはまることがわかるでしょう。
(ヘルムホルツオシレーターに関して何かを述べようとするときは、随時このことをチェックすると良いかもしれません。)
圧力変動の位相は容器内のどの点においても同じなので、この近似によって、われわれは容器内の圧力変動を無視することができます。

 ここで有効長さL、断面積Sをもつネックに空気を入れてみましょう。ネックの部分の空気の質量はSLに空気の密度をかけたものです。もしこの空気の"栓"が微小長さxだけボトルの中に入ったとしたら、容器の中の空気は圧縮されます。その結果Vという体積を占めていた空気はV-Sxになります。同時に容器内の空気圧は大気圧であるPAからPA+pに増大します。





 圧力増加が体積減少に比例していると考えていないでしょうか。
それは圧縮が、温度変化を伴わないようにとてもゆっくりと行われた場合には成り立ちます。しかし、音を生じさせる振動においては圧力変動がとても速いため、圧縮時には温度上昇が生じ、これがさらに圧力変化を大きいものにします。専門的に言えばこれは断熱変化であり、その過程において外部と内部の間に熱の輸送はありません。導き出される方程式は定数として比熱γ(ガンマ)を含みます。結果として、体積の微小変化ΔVによる圧力変化pは



 いま、ネックの最上部と最下部間の圧力差による力(正味の力pS)で質量mの空気が移動させられました。 ニュートンの運動方程式を書いてみましょう。



 Fとmに値を代入すると



 すなわち復元力は空気の変位量に比例します。これは単振動の状態であり、それは比例定数のルートの1/2π倍の振動数を持ちます。



 空気中の音速cは密度、気圧、比熱比によって決定されるので



 具体的な値を代入してみましょう。S=3cm2でありL=5cmである1000cm3のボトルを考えると振動数は130Hzであり、これはほぼ、middle Cの下のC音です。波長は2.6mであり、ボトルの長さよりも十分に大きい値になりますね。この結果によって導出の最初の段階で立てた仮定は正当化されます。

有効長さに関するより複雑な考察

 このページの最初にある図では、空気の”かたまり”をあたかもボトルのネックの両端できっちりと区切られたシリンダーであるかのように描きましたが、これは単純化されすぎています。実際は、ネックの部分の空気だけではなくその周辺部の空気も共に動きます。補正のために実際のネックの長さに加えられるべき長さは、典型的にはネックの断面半径の0.6倍で、内側・外側にそれぞれ加えます。

ヘルムホルツ共鳴とギター

* 上でギターのボディーの中の空気はヘルムホルツオシレーターとほぼ同様に振る舞うと述べましたが、このケースは複雑です。それはボディー内部で空気の圧力が上がった時にはボディーが少しふくらむかもしれないし、ギターのサウンドホールはボトルのネックよりも視覚化が難しい幾何学的構造を持つからです。ギターのボディーを考える場合、空気の栓の長さは、ほんの数ミリしかない'管'の端部にある二つの'終端効果'の和にほぼ等しくなります(厚みは数ミリしかないので終端効果の長さに比べるととても小さく、無視できます)。しかしながら終端効果は穴の半径に関係し、また似たような値をとるので、空気のかさを考慮しなければなりません。無限に大きい反響板の上に開いた穴によってできる円柱状の管の終端効果の長さは、管の半径の0.85倍になります。ギターの共鳴板は無限に大きくはありませんが、同じような効果を期待してよく、'栓'の有効長さは穴の半径の1.7倍(0.85+0.85)になります。

我々の研究室でギターの音響学のPhDであるRa Intaは、興味深いデモンストレーションを提案しています :
まず、ギターの弦が振動しないようにしてみてください (たとえば弦と指板の間にハンカチを挟むなど)。片方の手のひらをサウンドホール上に固定し、近づけてください。もう片方の手の指でサウンドホールと1弦に近い部分の共鳴板を鋭くたたいてみてください。そうすると手のひらに空気の圧力波を感じることでしょう。指でたたいた衝撃によって共鳴板が押し込まれ、ボディーの中の空気が少し外に押し出されたのです。 そこでさらに、指でたたくことを続けたまま、手をゆっくりとホールから遠ざけてみてください。どのくらいのところで空気の動きが感じられなくなったでしょうか?これによってそのサウンドホールの'終端効果'の長さを粗くですが見積もることができます。

(引用おわり)



まとめ(?)

 上で導出した式より、オカリナの音程はその筐体に開いている(穴の面積)1/2に比例し、(内容積)1/2と{有効長さ(オカリナの肉厚??) } 1/2に逆比例することがわかります。
 つまり、ある特定のオカリナの音程を決める因子は筐体の内容積、厚さ、解放されている穴の総断面積であるといえます。といいたいのですが(^-^;これとオカリナがどう対応しているのかというのは、まだはっきりと述べることはできないので、これからの課題としたいと思います。


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