パチ・パチ 91年6月号(??)
たぶん「パチ・パチ 91年6月号」あたりだと思うんだけど、「マサムネの解明 頭ガイコツの裂け目をのぞく」と題された、
マサムネ単独のインタビューです。あんまりかわいいので、写真も載せてみました。もう、かわいい(笑)!
「 」内がマサムネのセリフです。また長くなるけど、是非読んでってくださいよ。
ふわふわした感じだが、軽くはない。
のどかなムードが漂ってるくせに、妙にせつない。
声はちょっと細いけど、説得力のあるうたいっぷりだ。
抽象的な言葉が並ぶ歌詞だけど、実にありありとしたイメージの景色を浮かび上がらせる。
メロディーはヒネてて捩(ね)じれた印象だけど、どこかポップな匂いを醸し出す。
スピッツの歌は、こんな風に相容れそうにない要素が、不思議に共存しながら、心地好(よ)く響くのである。うーむ、この心地好さの秘密とは、一体!?
とにかく、その歌のほとんどをコンポーズし、うたっている草野マサムネの頭ガイコツが気になる。一発、ノミとトンカチで叩き割ってみることにしよう。
「ヘソマガリってのはありますよ、俺(笑)。他人が“いい”ってものを、ほとんど聞かないとか(笑)」
▼たとえば!?
「たとえば、清水健太郎“失恋レストラン”よりも“きれいになったね”が好きだとか、ベッツィ&クリスだったら、“白い色は恋人の色”じゃなくて、“花のように”がいいなと思ってるとか」
▼(笑)、それマニアックすぎてわかんないよ。
「ああ(笑)。じゃあ、セックス・ピストルズだと『ANARCY IN THE U.K.』よりも『PRETTY VACANT』のほうが好き。あのナメてる感じがいいなって・・・」
▼清水健太郎よりか分かりやすいけど、まだまだ分かりにくいな(笑)。
「うーん、とにかく、みんなが“いい”って言ってるのってほとんど好きじゃないんですよ。
みんなが聞いてるビートルズだって、『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』しか持ってないし、熱心に聞いた覚えがない」
▼なるほどね。じゃ、ビートルズのかわりにには、何聞いてたわけ。
「キンクスかなあ。ファンの人とかによく言われるんですけど、“マサムネさんはRCがすごく好きでしょう!?”とかいって。でも、俺、RCほとんど聞いてないんですよ。RCよりもスターリンのほう聞いてたし」
▼それ、けっこうおもしろいねっ。
「それに、俺って飽きっぽいんですよね。3日くらいで飽きちゃう。浮気症っていうか・・・」
▼へぇー、けっこう凝ってたのってのはないの?
「デビット・ボウイの『ZIGGY STARDUSUT』とかは、3か月持ちました。その頃、グラム・ロックに興味があって、マーク・ボランとかも好きで。でも、T・レックスよりもティラノザウルス・レックスなんかをよく聞いてたんですよね」
▼こりゃまた、マニアックな。どうして、そう人のあまり聞きそうにないものばかりに興味がいくのかな。
「よくわかんないですねえ」
▼自分で意識的にそうしてるわけ。
「そうでもないんですよ。自然とそうなっちゃってるんですよ」
▼子供の頃ってどんな子だったの。
「体が弱くて、よく学校休んでましたね。特別な病気だったとかじゃないんですけど、よく熱を出してたんですよ。だから、学校2日行って、今度は熱出して2日休んじゃうような子で。けっこうそれが音楽をたくさん聞くきっかけだったりもするんですけどね」
▼えっ、それはどうして。
「いや、親がテレビ見ると熱が出るから“テレビはいけない”って。だから、自然とラジオばっかり聞くようになってって。それに家の両親が、2人揃って音楽好き、母親なんていつも台所でAM聞いてましたしね」
▼でも、それってみんなの聞く音楽とは別のものを聞くようになったことの理由になると思うよ。1人でずっとラジオ聞いてるわけだから、自分の個性的な世界ってのを作っていく理由になり得るもの。
「そうかも知れませんね」
▼学校ではどんな子だった?
「そうですね、やっぱりいつも学校行けてたわけじゃないから、どこかで嬉しくて、はしゃぐんでしょうね。だから、他人よりも自己主張が強くて、1学期はみんな騒がしくておもしろいやつって思ってくれてたんだけど、2学期になると相手にされなくなったりして(笑)。
中学校に行くと、今度は体も丈夫になって3年間で皆勤賞もらっちゃうくらいになったんです。その頃になると、けっこうおとなしくなりましたね。勉強もよくしたし(笑)」
▼へえ。
「俺、小学校の頃、通信簿ってすごく嫌いだったんですよ。小学校の通信簿って、素行の欄とかあって、“落ち着きがない”とか“無駄口が多い”とかってあるわけじゃないですか!? それに先生自体も好きじゃなかったし、とにかく曖昧な評価をされるのが嫌になってきて。それじゃ、有無を言わせないように成績上げるしかないなって。で、勉強したんですよ。
それと、よく“レコード大賞”とか見てて思ったんですけど、なんで五木ひろしが賞をもらったりするんだろうとかって。俺、ラジオとかで五木ひろし、そんなに流れてたとも思わないし。あれってレコードの総売り上げで決まるわけでもないでしょ。
五木ひろしはどうでもいいんですけど、そういうい曖昧なものって許せない子供だったんですよね」
▼でも、今は!?
「あんまり気にならなくなっちゃったなあ(笑)」
▼音楽以外って、どんなものに影響受けてきたのかな。
「これは音楽に関係ないことないんですけど、高校の友達に左翼的っていうか、反体制的なものがロックなんだっていう考え方の奴がいて。そういう視点でロックを聞くようになった時期がありましたね。
そいつも兄貴の影響だったんですけどね、そいつの家行くとセックス・ピストルズやイギー・ポップのポスターが貼ってあって。そういうのってヒット・チャートに入ってこないから、こりゃすごいって(笑)。
けっこう盲信しちゃって、ひとつの転機みたいなものになったと思いますよ」
▼反骨ってやつだね。そういうのって、今はどうなのかな。
「基本的にはありますよ。でも、逆にそればかりになると音楽が死ぬような気がするんですよ。だから、それって純粋じゃない気もする」
▼それはどうして!?
「最近、本見て思ったんだけど、革命に関わった画家とかがそれをアジテーションする意味で描いた絵とか、そういうポスターとかよりも、そういう革命とかを、ただ淡々と描写していたものの方が絵としての純粋さがあるように思えたんですよね。
今は、思想よりも、やっぱり芸術的な意味合いでやっている人に魅かれますね。何うたってるかっていう歌詞とかの内容よりも、その人の姿勢みたいなことに」
▼今、ちょっと本の話が出たけど、マサムネ君の歌詞って、まったく本を読まない人の歌詞じゃないと思うんだけどね。どんな本を、よく読んでるの。
「ノンフィクションものが多いですね。テレビとかもNHKのスペシャルものとか『新世界紀行』とかはビデオに録画しますしね」
▼それって何がきっかけなのかな。
「高校のときの教科書じゃないかな。本多勝一の民族シリーズのひとつとか出て、それで興味持ったんですよ」
▼ニューギニア関係のものとか。
「そうですね。植村直己とかの冒険ものとか、本多勝一がすごく崇拝してる今西ギンジとか」
▼しかし、そういうの好きなミュージシャンって少なくない(笑)?
「あとは石川啄木とか、あの人はおもしろいなあと思って。卑屈で捻(ねじ)くれてて刹那的で、だめな男なんだけど、人間臭い」
▼人間臭いか。
「あと、沖縄の詩人で山之口漠とかも、すごい共感持ちましたね」
▼民族的ノンフィクション作家と日本の詩人か。草野マサムネの日本語へのこだわりがわかる気がするよね。
「そうですか」
▼それとね、マサムネ君の歌ってナイーブなのに、男っぽさっていうか、骨の太さっていうか、そういうの感じるんだよね。
「ああ、それって、田舎者だからじゃないのかな、俺が。ナイーブだけど、がさつっていうか。東京のオタク的なナイーブさと、ちょっと違うんですよ。
俺、大学くるまでずっと福岡だったし、小学校の途中まではたんぼと畑の真ん中で育ちましたからね」
▼なるほどねえ。
「『東京ラブストーリー』って流行ってたでしょ。チェックのために一度見たんですよ。だめだったなあ、“ツヤぞ、それは”って。ツヤって福岡で気取ってるって意味なんですけどね。
ツヤこいてからにって(笑)」
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