許さない。絶対に。
―VS小雪!サーナイトを奪え!―
「…何を言うかと思えば。貴方の
やろうとしている事は出来ないわ。」
「お前達は人のポケモンを奪って売り飛ばしたり
してるじゃないか。人の事が言えた義理ではない
と思うのはオレだけか?なぁ。小雪。」
「…」
「さぁ、出せよ。オレも出す。試合でもしよう。
油断したらどうなるかは…自身で体験するがいい。」
小雪は渋々出してきた。同族を
出した方が、説得もしやすいしな。
「沙羅。頼むよ。」
「はい。マスター。」
「指示した方がいいか?」
「いえ。マスターの手を煩わせはしません。」
オレのサーナイトは喋れるし、テレパシーを使える。
しかし、自ら攻撃を仕掛け、オレの指示をもらわずとも
試合を勝利に導くこともあった。
それほどに。彼女は優秀で、強い。
「喋るサーナイト!?」
「オレの沙羅は優秀なんでね。」
「…サイコキネシス!!」
相手のサーナイトがサイコキネシスを
放った瞬間に、沙羅は消えた。跡形もなく。
そして相手の後ろに現れた。拳を作り、
覚えないはずのパンチを食らわせた。
バキッ!
相手が吹っ飛んだ。渾身の力を込め、殴ったのだ。
格闘わざを覚えることはない。しかし、普通に格闘技と
しての攻撃を仕掛けることはできる。努力ゆえに。
「なっ!?…くそ、目覚めるパワー!」
相手はまた攻撃を仕掛けてきた。
しかし、そんなの効きはしない。
沙羅はまた消えてしまった。そして
相手がきょろきょろしている時に
後ろに現れてシャドーボールを食らわせた。
「な、なんで!?」
「沙羅は、自分で考え、どの攻撃が一番効くか、
不意打ちに最適か、知り尽くしてるのさ。」
よし、相手が弱ってるな。髪で隠してボールを取り出す。
もちろん、スナッチリボンを巻いた右手で。普通のボールが、
稲妻が走ったように黒い筋が浮かぶ。これがスナッチボール。
…タイミングを計り、投げる。
シュンッ!!!!
ボールはサーナイトに当たり、オレの手元に戻ってきた。
「スナッチ完了…サーナイト確保。」
風が吹いた。オレの方は蒼く、碧の風が。
小雪のほうには、紅く、紫紺の風が。
「な…あんた…本当にしたのね!?」
「オレはフォーカスの者だといっただろう。
スナッチ。悪の心に染まったポケモンを
助け出す方法。ただ、それだけの事。」
淡々という。ボール内は覗き込めるのだ。
サーナイトは静かに浮いている。これは
リライブするのに時間はかからないな。
「さぁ、早く別のポケモンも渡してもらおうか。
それと、いい忘れていたが、サカキ様が
許さないわよ!なんて言葉はきかないからな。」
「何ですって!」
「サカキはロケット団を解散した。あんたらには
通達が回ってないみたいだけど。サカキはこの
組織をやめたのよ。解散し、修行に出た。」
「…サカキ様が…私達を捨てた…?」
「もとより、あんたらは駒だったのよ。」
「…っ!」
「さぁ、観念なさ…イ!?」
どかっ!
蹴り飛ばされた。やばい、ボールが!
「あんたのような小娘に負けはしないわ!」
「くそ…」
やば、取られたし、どうしよう…
そこへ…
浅葱色の髪をした一人の少女が横をすり抜けていった。
軽やかに、風のように。薄碧のスカートに蒼いシャツ。
その少女は小雪の手からボールを取り返し、
ふわりとオレの横に降り立った。その姿はまるで天女。
「何してんのよ、凛。あんたらしくもないわね。」
「…綾?何でここにいるんだよ!」
そこには幼馴染の綾がいた。
オレはこの綾といっしょに修行をしたのだ。
「んー。嫌な予感したから。」
「あっさり言ってくれんじゃねぇか。」
「さて…小雪さんだっけ―。よくも親友に手を出してくれたね。」
「…何者。」
「綾。藁科綾よ。聞いた事ある人は少ないかもね―。」
「知ってる人ってほとんどいないんじゃね?」
「うるさいなー。」
小雪は驚いている。何故なら、オレと綾は
コンビでロケット団潰しをしたことがあるから。
しかし性懲りもなく復活してるのだ。だから、
また潰されるのでは?とでも考えてるんだろう。
事実上は潰れてるけど。
「…貴様ら!」
「何?」
「今すぐ私のサーナイトを返せ!
じゃないと相方が黙っちゃいないわ!!」
「返さないわ。私だって悪を見逃したくはないんだもの…」
「綾、少々怖いぞ。」
深い色の瞳が小雪を見据える。それで
怖くなったのか、ボールを置いて逃げて
しまった。特に危害はなさそうだしいいだろう。
「凛!何処だ!」
「あ、お連れさんね。私、帰るわ。」
「あぁ。サンキュ。綾。」
一瞬にして綾は消えた。で、国光が来た。
「誰かいなかったか?」
「いないいない。」
「そうか…で、ポケモンは?」
「この通り、助けた。で…アイツは
相方がどうとかいってたから何か
嫌な予感する。ここの倉庫はまだ
パスがいるみたいだから出よう。」
座り込んでいたのを立ち上がる。
…あー。結構強く蹴りやがったな
腹の所、痣になってやがる。畜生…
「あら。フィルア。久しぶりね、裏切り者。」
恐れていた事が起こってしまった。
黒い長い髪で赤の瞳。
肩を剥き出しにした服を着ていて
「R」というロゴが入っている。
奴こそが、ファインの元主人・いおなだった…
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作者:友達、友情出演です。
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