スタジオライフ「死の泉」

7月28日(水) 青山円形劇場 ソワレ Cブロック31番

 

 

円形!!!

青山劇場はきちんと劇場の建物としてありますが、円形劇場は「こどもの城」の中、3Fにあります。ロビーといった感じの場所はなく、通路に机を出してプログラムなどの販売。

エレベーターで3Fまで上がると、もう目の前にお花や販売しているポスターなどなど。人がごった返していました。ちなみにプログラムが1部550円!!東宝の2000円になれていた私にはそれだけで感動もの(笑)

客席に入ろうとしたら、本当に円形なので(あたりまえ)自分のブロックがどの辺りなのか、見失ってしまい係りのお姉さんに聞こうと思ったら、そばにいた戦闘服を着た方に案内してもらえました。・・・もしかして出演者さん??? 休憩時間などもトイレの案内をしている方は出演者・劇団の方みたいで、これはファンにはたまらないサービスですよねえ。

真ん中のステージは、客席より1段高くなっているのかと思っていたんですが、実際は逆に最前列の客席より、1段低くなっていました。一応正面に取れる場所がありますが、上演中は360度を有効に使っていたと思います。しかし、こんだけ客席に近くて、しかも色んな角度から見れる。役者さんの力量が問われそうですね。ちなみに私は「ガラスの仮面」の「狼少女ジェーン」を思い出していました(笑)

あらすじ

相変わらず原作も知らず、下準備無しで見てきました。自分なりに解釈したので間違っていたらごめんなさい。

皆川博子原作のミステリーの舞台化。

1幕
私生児を身ごもったマルガレーテ(瀧澤陽)は、ナチの施設「レーベンスボルン」の産院に身を置く。マルガレーテはそこで知り合ったブリギッテ(山ア康一)に、「青い目・金髪」のアーリア人主義の中「金髪の白痴、黒髪の天才」という失言をしてしまう。

不老不死を研究し芸術を偏愛する医師クラウス(甲斐政彦)に求婚されたマルガレーテは結婚を承諾し、レーベンスボルンに収容されクラウスの養子となったフランツ(子供時代:楢原秀佳)とエーリヒ(子供時代:深山洋貴)にも母親として受け入れられる。

やがてミヒャエルを産んだマルガレーテは、クラウスがブリギッテと関係を持っていることをレーベンスボルンで看護婦をして、現在クラウス家で手伝いをしているモニカ(藤原啓児)から教えられる。ブリギッテはマルガレーテの失言を逆手についにはクラウスとの子供を身ごもってしまう。

ある日、クラウスの屋敷の近くも、戦闘機による攻撃が始まる。留守のクラウスに変わり、皆を守ろうとするフランツ。しかし爆撃の激しい中、自分の婚約者をこの屋敷に呼んでこいと迫るモニカの願いを聞かなかったマルガレーテはモニカから脅迫をされる。それはマルガレーテが純粋なアーリア人ではないということ。もしそのことがばれれば、マルガレーテは強制収容所へ入れられることになる。

屋敷の地下へと避難する中、再び脅迫をしてきたモニカは、逆上してマルガレーテからミヒャエルを奪い、そして叩きつけようとした。その時。フランツがかつて使用人だったグラーフ(高根研一)からもらったナイフで、モニカを刺し殺してしまう・・・。

2幕
戦争が終わって、15年以上が過ぎた。ある日ギュンター(曽世海児)の元にクラウスがやってくる。彼はギュンターが所有する古城を買い取りたいというのだ。実はその古城の地下にクラウスの秘宝が眠っていて、その扉にしかけられた爆薬を解除できるのはクラウスだけなのだ。

一方フランツ(笠原浩夫)とエーリヒ(児玉信夫)は家を出て、大道芸人のように歌を歌って生活をしていた。二人が溜まり場にしているリロ(岩崎大)の酒場にゲルト(中村洋平)という少年がやってくる。彼は国防スポーツ団からの逃亡を図っているのだ。しかし執拗に団員であるヘルムート(澤圭一)に追いかけられていた。

ある日、ギュンターはクラウスの家に招待される。そこで見たのは、かつて自分と付き合っていたマルガレーテだった。そして成長したミヒャエル(及川健)が実は自分の子供であることを理解する。しかしマルガレーテは何かが原因で心を閉ざしてしまっていた。そしてギュンターはミヒャエルから戦時中のマルガレーテの手記を見せてもらう。

そこに書かれていたのは、モニカの遺体を一人運ぶマルガレーテが全ての罪を被ろうとしていたことが、そして、遺体を運ぶマルガレーテを見つけたクラウスが、彼女がアーリア人ではないことを誰にもしゃべらずに受けいれることと引き換えに、エーリヒの手術を手伝わせたことが書かれていた。それは、エーリヒの歌声に異常なほどの執着をもつクラウスが永遠にエーリヒの声を残しておくために行う手術だった。

クラウスに復讐をしたいフランツとエーリヒは、ブリギッテの子供ではないかとクラウスが面会にきたゲルトの協力を得ることにする。ギュンターとクラウス一家はギュンターの所有する古城へと旅だった。そのあとを追いかけるフランツとエーリヒ。そしてついにクラウスとの対面を果たしたフランツとエーリヒだが、マルガレーテはエーリヒを見て、手を差し伸べるのだった。「ミヒャエル・・・」と。

あの手術があった日(?)、手術が原因で(?)子供のエーリヒは死んでしまう。フランツはエーリヒを守りきれなかった事を悔やみ、自分たちを捨てたマルガレーテに、そしてエーリヒを永遠に閉じこめようとしたクラウスへの復讐から、取り残されていたミヒャエルを抱きしめる。「エーリヒ」として。そしてグラーフの元へと向かったのだった。

激しい銃撃戦によってフランツは撃たれてしまう。けれど最後にクラウスをあのグラーフのナイフで刺し殺し、そして、最後に自分が残り、爆薬のしかけられた扉を開けるから皆に逃げるように促す。ミヒャエルと本当はミヒャエルだったエーリヒを連れて、ギュンターは立ち去る。そしてマルガレーテも。「僕のために祈ってくれるのはあなたしかいない」というフランツの言葉に従って。けれど、フランツが扉を開けようとしたその時、マルガレーテは戻ってくる。手を取り、二人は秘宝の扉を開けた・・・。

ふう・・・。休憩10分しかない、正味3時間以上のお芝居を上手くまとめることはむずかしいですね(^_^;)

2幕の辺りは良く分っていないかも・・・。とりあえず大人になったエーリヒは実はミヒャエルだったって事です。じゃあミヒャエルとして育てられたミヒャエルは誰の子供だったんだ?

ぽや〜ん(笑)

まずこの劇団は全て男の方です。逆宝塚って言うの? 女役も男性がやるわけですから、なんか「どうしよう?って感じだったら耐えられないよなー」なんて思っていたんですが、なんのなんの。全然不自然じゃないです。むしろきれい。返って良いのでは?

キャストで気になったのはなんと言ってもモニカ役の藤原さん!!! 怪演です! すごむ・怒鳴るなどなどって女性だとヒステリックに聞こえがちだと思うんですが、藤原さんはわざと男性の声(地声?)でやっていて、それがまた上手いんです。声の硬軟の使い分けがすごかったです。モニカの裏表ありまくりの人格も憎たらしいでは無く、子憎たらしい、って感じで嫌味っぽくなり過ぎずに。それとですね、一番せりふが聞き取りやすかったかな。

それからブリギッテの山アさん。こっちは憎たらしいです(笑) だけど本当に自然で、マルガレーテをちくちくとやったり、それからしぐさがかわいいですね。山崎さんは2幕ではクラウスの助手のスミスをしていましたが、初め同じ人だと分りませんでした。「あの人、声良いな」と思ってたら、山崎さんだったんですねー。ブリギッテの時と全然声が違うので、やはり女役の時は声を作っているんですね(当たり前か)。

グラーフの高根さんも良い味出してました。ただ、片足が不自由な役なんですが、特に意味はあるの? グラーフはところどころでしか出てきませんが、結構印象に残りました。

ヘルムートの澤さんは、かっこ良かった(笑) 背も高くて、細くて、見栄えも良くて、良いんですよ(笑) 格好良い人がちょっと抜けてるおかしさみたいのが良かったです。

マルガレーテの瀧澤さんはほんっとうに細いです! ムキュって感じ。で、やっぱり自然な感じなんですよね。女性より女性らしいんじゃ無いの? だからと言って無理して作っているという感じもしないし。

キャストの皆さん、本当に熱演で、劇場内を走り回っていて、座っていてもどたどたというのが伝わって来ました(笑) 通路側に座っていたら、役者さんの走り抜ける時の風を感じられるんだろうな(笑)

話しのほうでは、ところどころに出てくる印象的な言葉や、ものが、良かったです。子供時代、クラウスに愛されていたエーリヒと、もしかしたら愛されていないかもと怯えるフランツ。クリスマスにクラウスからもらった顕微鏡を思いだし、復讐をしたいと思いながら顕微鏡を欲しがる大人のフランツ。「僕のために祈ってくるのはあなたしかいない」と唯一心を許した大人だったマルガレーテが、自分を裏切ってエーリヒの手術に手を貸した、その事への絶望。フランツの純粋な心が、誰かに愛されたい、抱きしめられたいって思いが、後半にいくにつれて切なくなって来ました。

でもね

とにかくすごい長いです。見ている時はそんなに感じはしなかったけど、話しについて行くのが必死で、見終わった後にどっと疲れが。

まず人間関係が複雑で、それから専門用語。時間経過。原作がずいぶん長いらしいので、それを全部いれるのはちょっと無理だったんでは無いだろうかと・・・。1回見ただけでは全てを理解出来ないです。絶対。

それとセリフを聞き取りづらいときが多かったです。あれはマイクあったのかな? 円形なので反対側を向いて芝居してる時もあり、そんな時はほぼアウトでセリフ分っていませんでした。うーん・・・。

この作品をまた見ようとはあまり思わないかもしれないけど、他のスタジオライフの作品は見てみたいなと思いました。やっぱり前回の「トーマの心臓」見とけばよかった。

後日談

原作本、買ってしまいましたよー。思いの他速く読み終わりました。で、やっぱりあの量を全て舞台化するのは無理があったんじゃないかなと思います。あと謎なのが、舞台では「グラーフ」として出てきたキャラは原作では「インゲ」と言う女性でした。わざわざ男のキャラにしたのは意味があったのかな。