かくも長き不在への

 

あなたがいなかったから
私が誰なのかわかった

はじめからいないでくれたら
こんな苦痛と出会わずにすんだのに
私は私だけの物でありえたのに
言葉は確かなものでありえたのに

同じ車両に居合わせた
見知らぬ他人であってくれたら
同じ階段を上ったことがあるだけの
顔も見ぬ人々の一人であってくれたら

こんなにも
私が私でなくてよかったのに
誰からも
知られぬままでいられたのに