『台湾通信』編集後記

<2007年3月16日付>

○中国石油が、「台湾中油」に名前を変更した。台湾に中国石油という会社があるということは、なんとも紛らわしいことだった。何せ中国にも「中国○○石油」という名前の会社がたくさんあるので、いちいち「台湾の」中国石油と注釈を付けなければ分からない。いきなり台湾石油に変えればいいものを、政権は民進党に変わったとはいえ、国民党がかつて中国大陸から持ち込んできた「中国」の名称を消してしまうことには当然、強い抵抗がある。そこで名称変更にはかなりの時間が掛けられている。

○この話は、2年余り前にさかのぼる。2004年の総統で再選された陳水扁総統は、同年末に行われた立法委員選挙の前に、盛んに台湾人アイデンティティーの色濃い、分かりやすく言うと、台湾独立色の強い政策を相次いで打ち出した。その1つが政府系業の名称変更だ。中国、中華が付いているものを「台湾」に変更するというのである。結局この時の選挙は、与党連合が過半数を取れずに事実上の敗北となった。この政策もさんざん批判されたが、この時の政策表明が免疫となったのだろう、今回、2年余りを経て本当に行われた名称変更は、大きな抵抗を受けなかった。国民党の息の掛かった労組は抗議行動を発動し、野党は反対を表明した。反対理由は、名称変更には看板書き換えや契約変更が必要で、無駄なお金が掛かるというものが中心だった。しかしこのような理由は、「台湾」名称がいけないという理由にはならない。最も説得力があるのは「経済がこんなにがたがたの時期に意味のないことばかりやって。もっと景気対策などまともなことをやるべきだ」という一般の人たちの感覚だが、それは名前を変えてはならないということではない。名前を変えてはならないという主張に説得力はなく、こうしてなし崩し的に名称変更が実現することになった。

○名称変更が必要な政府系事業(民営化したが政府が株を持つ企業も含む)のうち、今回は中国石油、中国造船、中華郵政の名称が変更になった。中国鋼鉄はこれから名称変更が推進される予定。中国国際商業銀行はすでに兆豊銀行に名称変更した。中国農民銀行、中央信託局は合併によって名称は自然消滅。こうして見ると、すでにかなりの「脱中国化」の名称変更が実現している。まだ残っている企業には、中華電信、中華航空、中華開発、中華電視(テレビ)、中華票券、中国輸出入銀行などがある。そのうち「チャイナ・エアライン」という最も紛らわしい名前を使っている中華航空が、最も抵抗が大きいだろう。

○名前を変更するとどうなるのか。こうした政府系企業で名前が最も身近な存在は、ガソリンスタンドを経営する中国石油だ。わがオフィスの隣にも1軒ある。すでに名称が変更されてしばらくになるが、最近、ようやく看板が「中油」に変えられた。「台湾」の文字は付けていない。名前が書かれている表面の膜をはがして張り替えるだけだから、比較的に簡単な工事のように見えたが、それでも台湾全土で変更しようとするとかなりの費用がかかるだろう。そのため、まだ旧名のままになっているところも少なくない。ただ、新名称を「台湾中油」として、皆が通常使っている略称「中油」を残したところに何とも味がある。もともと、ガソリンを入れに行く人が、「中国石油のガソリンスタンドに行く」などと言っているのを聞いたことがない。普通は「中油のガソリンスタンド」と呼ばれる。これをそのまま使えると、非常に便利だ。あるガソリンスタンドでは臨時措置だろうが、元の中国石油の「国石」を塗りつぶして「中○○油」にしている所があった。消した後が残っているが、これでも確かに新名称の看板が出来上がりだ。(早)



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