『台湾通信』編集後記

<2007年4月13日付>

○5月末の党内予備選挙の結果を待たずに、国民党の総統候補が馬英九氏に確定した。対抗馬だった王金平・立法院長が、2日に予備選挙への出馬断念を宣言したためだ。ところがかつてあれほどの人気を誇り、世論調査では今でも他の候補を大きく引き離している馬英九氏に対して、ここのところ風当たりが強くなっている。政治討論番組を何となく見ていたら、国民党の肩を持ってきた論客が、馬英九氏を厳しく批判していた。台湾の人たちの政治的傾向は族群(エスニック・グループ)が大きな決定要素だから、馬英九氏を批判をしても結局は民進党の候補を支持するわけではないだろうが、その批判の激しさに驚かされた。市長特別費事件で公判が始まったが、被告である馬英九氏のころころ変わる主張も批判の対象となっていた。これまでは人気の高さを誇るだけで本格的な試練を受けてこなかった馬英九氏が、この難局をどう乗り越えるか、政治家としての資質を問われることになる。しかし一方で、ある民進党支持者は馬英九氏の集票能力を甘く見てはいけないと言う。政権獲得以来、民進党は能力不足が明らかとなり、ダーティーなイメージが付きまとうようになったからだ。

○ところで王金平・院長は不出馬宣言に際して、国民党は「少数の族群のエリートが多数の族群を統治することが適切なのかという問題について直視すべきだ」と指摘し、族群対立をあおる発言だとして非難された。「少数の族群のエリート」というのが馬英九氏を指しているのは明らか。一方の馬英九氏も、テレビのインタビュー番組に出演した際、外省人第2世代であることが総統選挙でのハンディーになることはなく、「非本省籍の総統が生まれることは、台湾が省籍問題から脱却したことを意味し、台湾にとっての幸せだ」と指摘して非難を浴びた。これまで族群対立をあおるのは民進党だといわれてきたが、国民党内部でもこうして族群対立があおられている。族群問題が台湾政治の根本にあることは間違いない。馬英九氏は今回も、「自分は台湾に50年以上住んでいるが、いつまで外省人と呼ばれ続けるのだろうか。現在ではすでに多くの人が族群の観念を捨てている」との持論を繰り返したが、「非本省籍の総統…」の発言は、観念を捨てても無意識に持ち続けていることの証明となっている。

○最近、上海を訪れて「上海の台湾人」を尋ね歩いたが、本省人が紹介してくれるのはすべて本省人だった。掛かってくる電話に、どの人も台湾語で応対しているのだろからまるで台湾にいるようだった。一方、少数だが外省人から紹介してもらったのはやはり外省人。もちろんほんの一部を見ただけだが、それでも本省人と外省人では上海でも人間関係のネットワークがかなりはっきり分かれているように見えた。(早)



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