『台湾通信』編集後記

<2007年5月11日付>

○民進党の総統候補が謝長廷・前行政院長に決まった。これによって、民進党・謝長廷氏と国民党・馬英九氏の対決となることがほぼ決定した。民進党支持者の間には、予備選挙を争った4人以外の登場を願う声も相変わらず存在しているが、ここまでくれば第3の有力な候補者が出てくることは難しいだろう。 ○それにしても今回の予備選挙では中傷合戦が激しく、民進党支持者の中にはこうした対立にあきれて、「4人の候補のいずれも、総統になるような気がしない」という人もあった。しかしいったん候補が決まると、他の候補全員が支持を表明した。手をつないで謝長廷氏の当選を誓ってみせた。民進党はもともと、いわば英雄・豪傑の集まりである。国民党専制時代に、圧力を受けながら反国民党運動に携わり、革命家として人々の支持を得てきた人たちだ。当時は政党結社が禁止されていたので、民進党も成立していない時代。組織のバックなしに個人の力だけでのし上がってきた人たちだ。このため反国民党勢力が結集して民進党が成立しても、統制が取れているわけではない。党に頼って今の地位を築いたわけではないから、それぞれの党員は党の言うことなど聞かない。平気で党の批判をするし、他の党員の批判もする。これを「山頭主義」という。ただ、決まるまではいろいろな意見が出てくるが、お互いに同士だからいったん事が決まると全力で支持する。

○これが民進党の伝統的な性格だといわれてきた。討論しながら下から意見を集約していく方法は、アメリカ型民主主義ともいえる。また、喧々諤々(けんけんがくがく)でそれぞれが勝手な意見を言い合うのは、普段の生活でもよく見掛ける台湾式だともいえる。野党時代はこれで問題がなかったが、政権を獲得した後も同じように党員が党の批判をやっていたため、世間の人たちから民進党政権はバラバラだという印象を持たれてしまった。今回の予備選挙を見ていて、政権を担う民進党がかつてと同じようにまとまるのかと疑問を持っていたが、最後には民進党の伝統は健在であることが証明されることになった。これには、4人が革命家の精神が残っている世代の人たちだということもあるだろう。時代が下り、政権も獲得すると、民進党に集まる人たちは以前のような革命精神は薄くなり、育ててくれた親分に付き従う人が多くなるが、初期の民進党は違うようだ。

○これに対して上意下達型の国民党では、権力を目指す者はあまり表立った論議はせず、そのかわり暗闘を繰り広げる。同じ中国大陸生まれの共産党とそっくりであり、旧ソ連のレーニン型政党ともいわれる。自分の意見をはっきりと表明した場合、それがその当時のリーダーの意にそぐわない意見であれば内部で粛清されてしまい、二度と日の目を見ることができない。国民党は政権を失ってから随分と変わったが、この暗闘の伝統が残っているは、今回の馬英九氏と王金平・立法院長の対立を見るとよく分かる。特に王金平氏の動きは、権謀術数が渦巻いているという印象がして仕方がない。 ○謝長廷氏は毀誉褒貶(きよほうへん)が激しい人だが、今回の民進党での党内予備選挙を見ていても、選挙の巧みさは確かに抜群である。日本留学の経験者で、京都大学に留学していた当時、哲学の道が好きだったという、知日派でもある。これに対して馬英九氏はいわずと知れた人気政治家だ。どちらが勝つか。ある台湾の人から、「馬英九氏の実力をあなどってはいけないよ」といわれた。なぜかというと、台湾をガタガタにしてしまった民進党政権に対する人々の失望が深いからだという。

○それにしても、民進党の4人の候補が陳水扁総統と並んでいるところを見ると、游錫コン・民進党主席以外、いずれも背が低い。これも台湾的なのだろうか。台湾の人たちは南方系なので中国の中でも背が低い方といわれる。だが、外省人である国民党の馬英九氏はまあまあ背が高いが、本省人でも李登輝・前総統はそれ以上に背が高かった。李登輝・前総統と1996年の総統選挙を戦った民進党候補の彭明敏氏も、同じ本省人だが李登輝・前総統に劣らず背が高かった。一概には言えないということか。(早)



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