| <2007年5月18日付> |
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○4月27日付の編集後記で「大中華経済圏」の話を書いたら、台湾に駐在されている日本人の読者からご意見をいただいた。私が書いたのは、ある民進党の関係者から「大中華経済圏」など存在しないとしかられた話だ。ご意見を寄せてくださったこの方は台湾でのお仕事に英語を使われているようなのだが、台湾の人たちが「大中華経済圏」の意味で「Great China」と英語で表現するのに「最初耳を疑った」というのである。「誰かが裏で意図的に言わせているとは思いませんが、少し無神経すぎると感じています」とのご感想である。
○考えてみればこの政治状況の中で大それた表現だ。現在、台湾の政権を運営している民進党は、「台湾は中国の一部ではない」と主張しているのだから、そんな中で「Great China」などと言うのなら、自ら白旗を挙げたようなものである。あるいは中台統一を願う統一派とも受け取られても仕方ない。独立派の人たちから見ると聞き捨てならぬ表現だろうが、本人たちはおそらく何も違和感なしに使っているのだろう。経済活動だけを見れば、そう使って特に否定されるものではないだろう。アメリカには「Greater New York」「Greater Los Angels」という言い方があるそうだ。中国にも「グレート・シャンハイ」という言い方はある。台湾にも実は「大台北」「大高雄」という言い方があって、大台北であれば台北市と台北県を合わせた範囲を指している。もう少し広くして、「Great China」でもいいではないかという程度の意識だろう。おそらくそれが、台湾ではかなりの部分の人の感覚ではなかろうか。 ○中国大陸、台湾、香港・マカオを含めた「大中華」という概念があるとすれば、これをどう英語で表現するかというと、確かに「Great China」になるのかも知れない。それが台湾の主体性を否定する表現なのかというと、そういうわけでもないだろう。もともと台湾の人たちの間には、本省人、外省人を含めて台湾と中国との区別が不明確なところがある。異論はあるものの、そもそもここの国名は中華民国である。中国は、必ずしも中国大陸の現政権である中華人民共和国を意味しない。台湾は中華人民共和国に属していないとしても、中国に属していないというわけではない。文化的概念として「中国」「中華」という言葉が使われることが多く、台湾と対立する中国という概念が形成されてきたのは近年のことに属する。李登輝時代より前の国民党時代は、台湾と中国との対立は、中国の内戦の延長として位置付けられていたのである。 ○実は逆のこともいえる。このご意見をいただいた日、新聞を見ていたら、統一派の『聯合報』の記事に「台湾は、デパートとショッピングモールの密度で世界最高の国家」と書かれているのであきれた。台湾がいつの間にか「国家」になってしまっている。統一派は最終的な「中国」統一を望み、中華民国を守ることに固執していたはずではないのか。そして、台湾独立に反対しているはずだ。台湾と中国。台湾の人たちにとってこの2つの言葉の概念は、日本人が持つ概念とはかなり違うように思う。この無用心な言葉遣いは、台湾の人たちのいいかげんさともいえる。だが、もともと曖昧で、人によっても使い方が違うところに混乱の原因があるのではなかろうか。「台湾独立」と一口では言うが、中国そのものを拒否する場合、中華人民共和国つまり中国共産党を拒否する場合があって、その幅は広い。台湾と中国との間で揺れる心情、それが現在の台湾の微妙な立場を象徴しているようである。(早) |
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