| <2007年12月21日付> |
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○韓国の大統領選挙で野党ハンナラ党の李明博氏が当選し、政権が交代することになった。「危機にある韓国経済をよみがえらせる」というのが当選の言葉だったが、盧武鉉政権下の韓国経済は相当にひどくて、経済立て直しを選挙の主軸に据えた李明博氏が勝ったのだという。ここでおやっと思うのは、台湾では韓国は台湾より経済的に優れているという印象があることだ。以前から、1人当たりGDPだとか、経済成長率で、韓国経済がいかに台湾より良いかを強調した報道はよく見掛けた。サムスンだとかLGだとかいったブランドは世界的に知られるようになっているが、台湾には世界ブランドといえるものがない。韓国のテレビドラマやアニメ、ゲームなどコンテンツ産業は台湾にないものだ。一時、「韓流」といって、韓国のテレビドラマが大流行した。さらに韓国のビジネスマンと直接接触すれば、あのがむしゃらぶりに台湾人は圧倒される。そうした中で、特に最近は台湾が韓国に大きく負けているという野党系メディアによる報道が目に付いた。「韓国が台湾から労働者を導入する」(台湾人が外国人労働者になってしまう)、「韓国の新卒者の初任給が7万元(24万円くらい)」(もちろん台湾の初任給はもっと少ない)などといった内容だ。 ○こうした報道の目的はもちろん、民進党の陳水扁政権による経済運営がいかにだめかということを突出させることにある。ところが、「韓国が台湾から労働者を導入する」は根本的にウソだったようだ。「韓国の新卒者の初任給が7万元」というのもかなりの誇張であり、しかも支出がどのくらいなのかを考えない、単純な金額比較にすぎないようだ。こうした事実に反する情報で、「韓国は発展しているのに台湾は取り残されている」という印象を植えつけようとしているわけだ。この程度の単純な比較なのだが、台湾の人は「韓国に負けた」と思うようだ。しかも台湾の人たちはほとんど韓国事情を知らないため、こうした情報を簡単に信じてしまう。もともと台湾人は韓国が嫌いな人たちが多いから、韓国に負けるとそれは悔しい。その心理を逆手に取っているわけだ。かといって、民進党政権側もこれに反論できる具体的な材料を持っていないから、言われっぱなしである。 ○そうした「韓国賛美、台湾卑下」に怒った韓国専門家の台湾人が、「韓國經濟真的很危險!(韓国経済は本当に危ない)」(http://www.rickchu.net/detail.php?rc_id=1505&rc_stid=14)という文章を発表し、大反響を受けたという。これまでは多くの人が野党系メディアの報道に反論したくてもそれができるだけのデータを持っていなかったのだが、彼の文章はそれに応えてくれたわけである。詳細は省くが、今回の大統領選挙でも経済が大きなテーマだったように、韓国では経済が危機的な状況にあり、問題は台湾の比ではないことが分かる。中国への産業流出によって景気衰退に悩んでいて、それが陳水扁政権への不満を招いている台湾だが、この文章を読むと台湾はずっとましだと感じる。韓国に数字ではかなり負けているが、台湾の方がはるかに安定しているようだ。 ○ところで、台湾と韓国の政治は瓜二つと言われてきただけに、来年の台湾の総統選挙の行方を考える上でも、韓国での政権交代は非常に重要な出来事だ。特に2000年に当選した陳水扁総統、2002年に当選した盧武鉉大統領は、双子のリーダーだとまで言われるほど似ている。反政府運動の弁護士出身。強いアイデンティティーに基づいた政治。アメリカとの対立。経済運営のつたなさ。高支持率からの急速な低下。いずれもそっくりである。また今回の総統選挙で野党候補が経済を主題にしている点も似ている。そうした中で韓国が政権交代だから、台湾もということになるのだろうか。野党の国民党側は大喜びだ。しかし台湾の場合は経済も確かに大きなテーマだが、依然としてアイデンティティーの問題、つまり「台湾独立か、中国統一か」の問題が選挙を大きく左右しているように感じる。つまり中国とどう付き合うかの問題だ。この点、韓国とはかなり違うように思える。 ○国民党総統候補の馬英九氏は確かに李博明氏と同じように経済を主題にして民進党の陳水扁政権を批判している。台湾アイデンティティーを強く打ち出して中国との対決をあおるばかりで、経済運営がさっぱりで、しかもスキャンダルまみれという陳水扁政権に対して、台湾の人たちが嫌気を感じているのは確かだ。ただ、馬英九氏本人は法律家であって韓国の李博明氏のような経済畑ではないし、民間企業での経験もない。また、李博明氏が貧しい出自だったのに対して、馬英九氏は出自が良くて、ずっとエリートだったという脆弱さがある。貧しい出自といえば、台南の農家出身の陳水扁総統である。李博明氏がソウル市長時代にどぶ河をきれいにしたという逸話は、むしろ高雄市長時代に愛河を復活させた民進党総統候補の謝長廷氏を思い起こさせる。馬英九氏も台北市長だったが、特筆するような業績は上げていない。 ○李博明氏の「神話」を聞いていると、「台湾でもどこかで同じような話を聞いたことがある」と感じるのだが、台湾の場合はそれが1人の人物の実現しているのではなく、バラバラに表れているようだ。決定的に違うのは、台湾の政治リーダーは与野党共に法律家ばかりで、経済が分かりそうな人はいない。国民党副総統候補の蕭万長氏は経済専門家と見られているが、あくまでも官僚出身である。台湾でも民間企業の経験があるリーダーが求められているのだろうが、今のところそうした人物は現れていない。台湾と韓国、似て非なるものなのかもしれない。 ○民進党総統候補の謝長廷氏が日本を訪問した。馬英九氏は11月に日本訪問を済ませているから、これに対抗する意味合いが強い。台湾の総統候補が競って日本を訪問するのは、それなれの効果を期待してのものである。台湾でいくら発言しても誰も話を聞いてくれないが、外国だと注目を集める。外国での発言が逆輸入されて台湾に伝わり、大きく取り上げられるのである。そうした意味で、今回の謝長廷氏の訪日は、台湾ではあまり注目されなかったといえる。目新しいのは日本語で講演したという程度で、それ以外の発言はこれまでのものを踏襲しただけだし、思っても見ない人と面会したということもなかった。むしろ馬英九氏の場合の方が、外省人で反日の馬英九氏だというのでなかなか注目を集めた。自分は反日派ではないと主張することで、弱点を少しでも逆転させることができた。2人ともまだ最大の海外イベントであるアメリカ訪問は行っていない。どちらが先に訪問するか、駆け引きが繰り広げられることだろうが、タイミングを誤ると効果が薄れる。 ○きょう(21日)は、最高気温が摂氏26度との予報。日差しの強さはまるで夏である。このところ良い日和が続いている。12月ももう末とは思えない陽気だ。上着を着ると汗ばんでくる。(早) |
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