『台湾通信』編集後記

<2008年05月09日付>

○このところ、パプアニューギニアとの外交樹立交渉をめぐる話題で持ち切りである。それまで大騒ぎで、政権を獲得した国民党の内部から非難ごうごうだった頼幸媛氏の行政院大陸委員会主任委員内定の話など、どこかに吹き飛んでしまった。選挙も終わったこの時期にこんなスキャンダルが出てきてもあまり意味はない。政府内部の確執が、この話が明るみに出たきっかけのようだ。だまされたと悟った黄志芳・外交部長が、この事件の仕掛け人である邱義仁・行政院副院長に資金回収を求めたが応じないので、シンガポールの裁判所に資金の差し押さえを求めた。そこでばれてしまった、ということのようだ。そのため、最初に報道したのはシンガポールの聯合早報である。

○陳水扁政権はここに来て、全くの死に体である。しかしそもそも、金銭で外交を買おうというのは国民党時代から行われてきたことだ。問題は、せっかく民進党から政権を奪い取ることに成功した民進党が、新しい思考で外交を展開せず、自分たちが批判していた国民党の金銭外交をそのまま引き継いだことにある。結局、外交関係を持つ国は減り続け、現時点でわずか23カ国である。今回の事件の相手側であるパプアニューギニアとは国民党時代の1999年に一時的に外交関係を樹立したことがあるが、すぐにだめになった。怪しい仲介人を使って再びこの国との外交関係を買おうとしたのは、功を焦ったからだろう。国連などの国際組織に入れない中で、台湾としては支持してくれる国が必要だというのは分かるが、中国の重みが増す中でそれではやっていけないことは分かっている。そうした中で新しい思考ができなかったのは、民進党に創造性がなかったということだろう。少なくとも李登輝時代には、日米との外交関係強化を可能にした「実務外交」という新基軸があったはずだ。陳水扁総統が就任後、それまでと同様にアフリカや中南米の国との外交にこだわったことに驚いたものだ。台湾の内部でも評判は悪かった。ともかくここに大きな落とし穴がここにあった。もっとも次期総統の馬英九氏も、外交に関して新しい思考は提示できていないようだ。中国との和解推進の中で、これから外交をどう展開するのだろう。

○このパプアニューギニアのニュース、本当に見たくない。というのは個人的な理由だ。なぜなら国防部副部長を辞任した柯承亨氏の姿が毎日のように目に入ってくるからだ。この人、陳水扁総統の秘書からここまで出世したのだが、1960年生まれで今年48歳。私より若いではないか。それなのに、ものすごいおやじ顔である。おそらく若いころからこんな顔なのだろうが、見るたびにがっかりしてしまう。もうやめてくれという感じだ。これに対して事件の主役で行政院副院長を辞した邱義仁氏は、58歳で雰囲気は年齢相応だが、非常におしゃれである。とにかくネクタイをしない。長髪でいつも詰め襟の学生服のような服を着ている。文人風で、台湾の大学の歴史学科や中文学科の教授が好みそうなスタイル。ビジネスマンならお客さんから相手にされないし、サラリーマンならすぐにくびになるだろう。普通の政治家にもあり得ないスタイルだ。三国歴の諸葛孔明のように「軍師」と呼ばれてきただけのことはある。仲介人で逮捕された呉思材氏は白髪混じりのひげ面で、いかにも悪役風で凄みがある。いろいろと個性がある人たちだ。最も普通なのがもう1人の主役で外交部長を辞した黄志芳氏。1958年生まれで今年50歳と、若くして大臣にまで上り詰めた人だ。スーツにネクタイで、いかにも外交官僚らしい。自分の外観もこの程度ならまあ安心である。ただし、目標は邱義仁氏だ。

○最近、民進党支持というか台湾人アイデンティティーの強い人たちは、台湾の現状に大いに失望しているようだ。中国人アイデンティティーの強い国民党の馬英九氏が総統に当選し、台湾人アイデンティティーを代表する民進党が死に体だから仕方がない。そこで、「政治は自分たちとあまり関係がない」という解釈で、失望感を解消しようとする人が多いようだ。これが数々の外来政権を受け入れてきた台湾人の性格なのだろうか。(早)



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