『台湾通信』編集後記

<2008年05月23日付>

○馬英九総統の就任演説。それまで上昇していた株価が、大きく下がった。演説に新味がなかったからと解釈されているが、もともと株と政治はあまり関係ないのか。これまでの台湾の総統就任式の日は、いずれの総統の場合も株が下落している。

○就任演説は無難な内容で、これまでの主張の総まとめとなった。しかも感情を込めるところはそれなりに入っていた。なかなか良い演説ではなかっただろうか。演説を聞いての台湾の人たちの評価はいろいろだが、選挙で馬英九総統に投票しなかった友人がこんなことを言っていた。馬英九総統は、演説終盤に「私は台湾生まれではないが、台湾は私が成長した故郷であり、私の家族が骨を埋める場所である。特に台湾社会が私のような戦後の新移民を受け入れ、育ててくれ、抱擁してくれたことに感謝している。私は躊躇(ちゅうちょ)せず、疑念を持たず、勇気を持って前に進み、全力を尽くすしかありません」と語り、やや涙ぐんで演説が止まってしまった。大きな拍手が沸いた。友人はここの部分を聞いて、涙が出そうになったという。非常に複雑な気持ちであり、馬英九総統が本当にそう思ってくれているのなら、台湾人として彼を信じてもいいのではと感じたという。ただ、それ馬英九総統の本心なのかどうかは分からないという警戒感は依然として残っているようだった。

○馬英九政権、出だしはまずまず。今のところいわゆる世論との蜜月期にあるようだ。陳水扁政権の発足時と違って、政府幹部の任命もスムーズ。準備はできているという感じ。さすがにかつて台湾を半世紀にわたって統治した経験を持つ政党であり、政府運営は手馴れたものである。しかし就任式の一連のイベントを見ていて、文化が感じられないのは相変わらずだ。選挙の時からこの点だけは民進党に負けていた。民進党政権が新鮮味のある台湾の文化を提示したのと違って、再び文化的に不毛だった以前の国民党時代に戻ったような感じである。官僚文化の権威主義的な臭いなのだろか。もっとも、馬英九政権の売り物は対中国関係も含めて経済発展なのであって文化ではないのだから、仕方がないかもしれない。ただ、馬英九総統の夫人の周美青さんが、国民党の高官夫人たちが好む中国式改良チーパオを着ていなかったことだけは救いだった。この着こなし、かなり評価が高かったようだ。確かに男勝りの感じがする総統夫人には似合っていた。このスマートさが国民党政権の新しい文化になれば、それはそれで悪くないだろう。ただし、総統夫人がこれまで勤めていた銀行の職を辞したということは、立場を考えてのことだろうがやはり伝統の圧力が強いのだろう。せっかくのキャリアウーマンのファーストレディー誕生は成らなかった。

○昨日、韓国の李明博大統領が、テレビで頭を下げている場面が目に入った。何事かと思ってみていたら、アメリカ産牛肉の輸入解禁問題で国民の反発を受けたのだという。選挙公約の経済成長目標も達成できないことが確実。昨年末の大統領選挙直後に80%台だった支持率が、今や20%台に落ちているという。台湾と韓国の政治は非常に似ていて、今回の政権交代も事情はそっくりだった。出だし好調の馬英九政権だが、半年後に韓国大統領と同じような境遇とはなってほしくないものだ。

○昨日から急に暑くなった。しかも、午後には大雨がやってくる典型的な台湾の梅雨だ。湿度が高くて不快感が急上昇である。(早)



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