『台湾通信』編集後記

<2008年09月05日付>

○8月30日に行われた独立派のデモを見に行った。民進党が政権を失い、陳水扁・前総統のマネーロンダリング疑惑が発生して間もない時期だけに、どうなることかと思っていたが、かなりの見ものだった。デモは忠孝東路の太平洋崇光百貨(そごう)の少し先、それに万華の龍山寺から出発し、2つのコースに分かれて総統府前の凱達格蘭大道(ケタガラン通り)に終結するというものだった。まず、そごうのそばの忠孝東路で眺めていると、寂しいデモだった。どうしても、今年3月の総統選挙の最終日曜日に行われたデモと比べてしまう。 ○この時のデモは、主催者によると100万人以上が参加したとのことで、勢いがすごかった(20080321号の「編集後記」で紹介)。沿道でも多くの人が手や旗を振り、声を掛け合っていた。それに比べると今回のデモは閑散としていて、沿道で応じる人は少ない。気付いたのは、デモを眺める通行人の目が冷たい。しばらく見ていると、1人の中年女性が「つまらないことをやって、何になるの」とつぶやくのが聞こえてきた。デモ隊は「台湾」「加油(頑張れ)」と繰り返しているのだが、音頭を取っていた宣伝カーから、「もっと大きな声で」という檄(げき)が飛ぶほど、元気がなかった。

○ところが、終点の総統府前に行くと、人がびっしり集まっている。午後5時前で、集会はまだ本格的に始まっていなかったが、デモを歩き終わった人たちが続々と到着しており、人が増え続けた。路上に作られたステージには近付けそうにないので会場から離れようとしたら、集まってくる人たちと逆流することになってしまって、しばらく立ち往生した。総統選挙の投票前日に国民党が同じ場所で集会を開いたが、その時と同じぐらいの人がいただろうか。主催者の発表で30万人、警察発表で5万人。随分と差があるが、ざっと見渡したところ、人の移動の多さもあるので5万人ということはなかったようだ。デモの数日後、このデモについて馬英九総統が参加者4万5000人などと軽く流したので大いに反発を受けたが、デモの参加者の意思をそれほど軽く見てはならないだろう。3月の総統選挙の時に民進党の謝長廷・候補が開催した投票日前日の集会に匹敵する規模になっていたのではないかと感じた。

○参加者を見ていると、確かに圧倒的に年配者が多かったが、若者も決して少なくはない。「この人たちは、変わっていない」というのが私の感想。この人たちはどうあっても中国との統一は認めないし、国民党の馬英九総統も支持しないだろう。これだけの人が集まるのであれば、中国が台湾の現状を変えることはかなり難しい。しかもこのデモは民進党の主催ではなく、独立派団体の「台湾社」が中心になって企画したものだ。独立派団体の大集合といった感じで、各種のまた台湾各地の独立派団体の旗が林立していた。民進党の色合いはあまり強くなく、民進党の党旗は少数である。民進党の政治家の名前を書いた旗も見られたが、各種のグループの旗がより目立った。組織的な動員は多いようで、グループごとにそろいの格好をしている人たちが多かった。周辺道路には観光バスが並んでいたので、地方からの参加者だと分かる。

○主催者側は、マネーロンダリング疑惑を起こした陳水扁・前総統の影を今回の活動ではできるだけ出さないようにしていたようだ。陳水扁支持のスローガンを掲げたプラカードを持つ人も確かに見かけたが、大部分は「台湾支持」の色彩が強かった。馬英九反対、陳水扁支持などではなく、あくまでも台湾がテーマだったようだ。これがこの活動に集まった人たちの、本来のそして基本的な共通項なのであろう。馬英九政権の対中国友好政策の中でも、「台湾人アイデンティティー」は依然として強いことを感じさせられた。ともかく独立派はここのところ悪いこと続きである。政権を失い、陳水扁・前総統には金銭スキャンダルで非難が集まっている。そうした中での今回の活動で、久しぶりに思い切りうっぷんを晴らすことができたのではなかろうか。

○1日からかなりの雨が降っている。これを書いている時も、激しい雷雨である。台湾でこの秋最初の前線通過だとか。確かに気温がかなり下がっているようで、クーラーなしでもすごせるほどだ。ただし雨がたたきつけるので、しばらく窓を開けられない。(早)



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