| <2008年09月19日付> |
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○先週に続いて映画の話。先週はこのところ話題になっている「海角七号」の話を書いたが、実はこれとは別に最近、「練習曲(Island Etude)」(陳懐恩・監督)のビデオを見付けて買ってきた。この映画は昨年の作品で、一部でかなりの話題を呼んでいた。昨年、台湾を代表してアカデミー賞に参加した作品でもある。これも台湾の味を十分に出した好作品だ。「悲情城市」など侯孝賢の映画の撮影を何本も手掛けてきた、美しい画面を撮ることで定評があるカメラマンの陳懐恩が監督とあって、さすがにきれいである。 ○聴覚障害の大学生が、卒業を目前に控えて「今やらなければ一生できないことがある」と、自転車での台湾一周に出掛ける物語である。高雄から出発して東海岸、台北、西海岸と時計と反対周りに走る。映画のロケ隊、兵役間際の青年、リトアニアから来たモデル、退職が近い教師、繊維工場の元女性労働者とバスの運転手、ストリートペインティングの2人組、祖父の家と媽祖の巡行、自転車で台湾を一周するサイクリスト、彫刻を趣味とする退役軍人。さまざまな人たちとの出会いが繰り広げられる。 ○それぞれの出会いが簡単なやり取りで構成されるが、その積み重ねを通じて台湾という土地とそこに住む人たちが持つ悲哀と優しさが十分に描き出される。侯孝賢の映画の伝統を引き継いだ芸術映画である。一部はドキュメンタリーの手法を取り入れており、現実と物語の境が分からなくなる。ゆったりしたテンポで進む物語、行く先々でのそれぞれの人たちとの出会いが、1つ1つ心に染み込んでいくようだ。台湾映画ならではの味を持っている。とにかく台湾の海岸線の景色が美しい。 ○ただし、派手さのない単調な流れのこうした映画は、好き嫌いがはっきり分かれるところ。ハリウッド映画好きの大部分の台湾の観客が好むとは言えないのが残念だ。昨年、この映画が話題になったのは、映画そのものの評価ばかりでなく、ここ2〜3年の台湾での自転車ブームも背景にある。自転車で台湾一周をする人も増えているという。この映画は台湾最大の自転車メーカーである巨大機械(GIANT)がスポンサーで、このメーカーのロゴがやや目立つのは仕方がないだろう。 ○ということで、遅まきながらこの「練習曲」を見たのだが、なかなか後を引く映画である。すべてを語り切らずに、象徴的な事象を連ねていく。そうすることで長く余韻が残る。そのうえに続けて「海角七号」を見てしまうと、もう台湾映画の世界に浸りきってしまう。やはり台湾映画には独特の魅力があると思う。それが、台湾の映画不況の中で絶えていなかったことは喜ばしいことだ。ということで、最近、封切られたばかりの「orzboyz」(楊雅普E監督)もついでに見てしまった。子供が主役の映画である。それぞれ家庭に問題を持つ腕白な2人の男の子の友情と別れを描いたもの。万華の下町と淡水の河口が良く撮れている。最近、NHKがこの映画の放映権を買ったというニュースが伝えられた。 ○子供が登場する映画だから子供でも楽しめるのかと思っていたら、とんでもない。これがかなり難しい内容なのである。子供には恐らく分からないのではなかろうか。従来の台湾の芸術映画の系統を踏襲している映画である。話が分かりやすい「海角七号」はともかく、「練習曲」より難しいだろう。最近、大ヒットの「海角七号」と並べて論じられることが多いが、台湾の観客の好みではないらしく、残念ながらこちらは売れ行きがもうひとつのようである。ただ実は私はこうした雰囲気の売れない映画が嫌いではない。特に大人になって相棒の子供と出会う最後の部分は、この映画で言いたかったことがすべて凝縮されていて、思わず感動してしまう。なかなかの好作品である。ということで、このところ続けて台湾映画を見たが、癖になってしまって新しいDVDを買ったり、以前の映画を引っ張り出したりしている。時間があれば引き続き見てみようと思っている。 ○ここ数日、弊社の上の階で改装工事をやっている。壁を崩したりするかなり大掛かりなものだ。ところが工事が始まる前日、この家の人が菓子折りを持ってきた。「うるさくなって申し訳ないが我慢してくれ」というあいさつである。台湾の人たちはビルの内装を変えるのが本当に好きで、ひっきりなしにビルのあちこちで工事をやっている。部屋にいてスタッフの話も聞こえないほどの轟音が響くこともある。こうなると、電話など掛けられない。しかしこれまで、あいさつに来た人はいたが、菓子折りを持ってきた人は初めてである。珍しいこともあるものだと、感心することひとしきり。(早) |
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