『台湾通信』編集後記

<2008年12月26日付>

○すっかり忘れていたが、一昨日はクリスマスイブだった。捷運(MRT)に乗ると、おめかしをしたカップルやグループが目立った。それでも以前に比べるとおとなしいものだ。25日は台湾では憲法記念日であり、以前は休みだった。このため翌日が休みとあってイブはなかなかにぎやかで、台北の街も大混雑となっていた。しかし週休2日制の導入で代わりにこの日は休みでなくなった。翌日の出勤・学校があるので騒ぐのもほどほどに、というところだろう。この夜、聖歌を流しながら街中を回る人たちに出会った。こちらは本当のクリスチャンのようである。

○ご存知のように、本物のクリスチャンのクリスマスは静かなものである。以前、台湾のラジオ局に勤めていたころ、お父さんが外省人、お母さんが先住民のタイヤル族という大先輩がいた。漢民族と違って、精悍(せいかん)な顔つきをした人だった。台湾の先住民には、キリスト教徒が多いのは良く知られている。ある年のクリスマスイブ、この先輩に自宅に呼ばれてごちそうになった。食事の後、近くの教会に行くというので、私も誘われた。木柵の街中のとある教会だった。台湾の教会というのは、それなりの形はしているが、結構、普通の建物が多い。ここも教会というよりは、学校のような感じである。ごちゃごちゃした装飾もなく、質素なものだ。台北のことだから、もちろん先住民だけでなく漢族も来ている。そこで、信徒ではない私には全く分からない中国語のミサを聞いた。その後、信徒の人たちは聖歌を歌いながら街を回ったようである。その静かなことには驚かされた。大騒ぎをするのは、結局のところ偽クリスチャンなのである。

○ところでこの大先輩、宗教の中でクリスチャンが一番良いというのだ。なぜかというと、仏教なら殺生が戒められて動物は食べてはいけないと言われるし、ヒンズー教はウシがだめだし、イスラム教はブタがだめ。「でもキリスト教なら何でも食べられる」。さすがは現世実利主義の台湾のクリスチャンである。しかもタイヤル族はもともと山で狩猟をしていた人たちだから、肉がだめというのは確かにつらいかもしれない。

○さてこのイブの日、台東の先住民アミ族を研究している日本の学者さんと話をする機会があった。たまたまその場所に、アミ族の人がいたのである。何と2人がアミ語で話を始めたので、驚いた。アミ語を話す日本人というのも珍しい。研究者としてなかなか本物だと見直した次第である。台湾の先住民は日本語を話す人が多いから、日本の研究者が入って行きやすい対象ではある。しかし、現地の言葉まで覚えるというのは大したものである。長年台湾にいながら、台湾語がほとんどできない自分を恥じてしまった。

○ところで、台湾の先住民はやはりほとんどキリスト教だという。この学者さんの話によると、宗派はいろいろで、天主教(カトリック)、基督教(プロテスタント)、長老教会(プロテスタント)、そして新耶蘇教(中国で広まった新興宗教系のキリスト教)などがあるそうだ。先住民の宗教はもともとシャーマニズムで、日本時代には神道が入って来た。戦前は日本がキリスト教を抑圧していたため先住民にも普及していなかった。キリスト教が広まったのは、布教が自由になった戦後だという。ところが最近では、多くの先住民の若い人たちは漢族の寺廟にも行って拝むのだそうだ。キリスト教では異郷の偶像崇拝はタブーのはずだ。同席していたアミ族の人によると、「ご利益があるなら何を拝んでも同じじゃない」ということ。ただしお年寄りにはそんなことは許せないらしく、「おじいちゃんたちには内証なんだよ」とのことだった。

○来週はもう正月である。毎年のことだが、旧正月を祝う台湾ではこの時期、相変わらず年越しの気分にはならない。ただし4連休になったので、行楽を予定している人が多いようだ。ただし、1カ月前になって突然決まった連休なので、台湾内での旅行が多いだろうとのこと。不況の中ですが、皆様良いお年をお迎えください。(早)



このウエッブサイト(URL: http://www.iris.dti.ne.jp/~taitsu/)において公開されているドキュメント及びデータは、特に明示されている場合を除き、その著作権は通達翻譯出版有限公司にあります。無断複製、転送、配布、転載を禁じます。
Copyright(C) 通達翻訳出版有限公司『台湾通信』 <taitsu@ms17.hinet.net>