まるで自分を追い込むように仕事を詰め込んでいた。
いつもなら、この代価を短い時間に求め、とある店へと通ったことだろう。

あの人に会うために。

何をするというわけでもなく、ただ一緒に呑み、たわいも無い話をするだけの関係。
「今」は。
ただ、この先この人を「恋人」、いや「妻」にすることが出来たら・・・。
こんな思いが心の奥でくすぶっていた。
傍から見たらガキっぽいような事もしてみたが、それすら僕にとっては必死の行動
の結果であり、この気持ちはあの人に届いているものと信じて疑わなかった。




その「今」が突然根底から覆されてしまった。
あの人から来た年賀はがきには、何があったのかを想像するのが難しい写真と一文。
「あけました」
頭の中で疑問符だけがぐるぐる回っていた。
「誰が?誰と??何を???」
事の真偽を確かめたくって、あわてていつものドアを開けた。
いつもの様にあの人はそこに居て、一見何も変わっていないように見えた。
しかし・・・。
その後のことは良く覚えていない。覚えているのはその日、いつもよりも多く酒を飲み
それでも酔うことも出来ず抜け殻のように家に帰ったことだけだ。



あれから、あの店には行っていない。
何度か「あの人」からの誘いの電話が入っているのに、その電話に出ることすら出来ずにいる。

自分でも、とことんガキっぽいと思う。
自分の想いがどれだけのモノであるのか、自分の基準だけで勝手に相手に理解を求め、
その結果が当然帰ってくるものだと信じて疑わなかった。
もちろんそんな自己中心的な想いなど、相手に伝わるはずもなかったのだけれども。

今度のことは自分の中で、何かが変わるいいきっかけになったのかもしれない。
まだ、気持ちの整理をつけるには時間が足らないけれども、次にあの店のドアを
あけるときには「あの人」と素直に向き合える様になって居たい。
そうすることで、少し成長した大人の自分になれるような気がする。
こんなことを思うこと自体がまだまだガキなのかも知れないが、せめてもの慰めになればそれでいい。
さぁ、次にあのドアを開ける日はいつだろう。




逃げるように仕事漬けの毎日にふと、思ったある日の出来事。