過去拍手お礼文(血豆のFPSおよびRPSばかりです)
南国バカンス的日常(ラスイア)
その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10 その11 その12 その13
ラスイア的日常(ラスイア) スミスさんの家庭の事情(ジョン・スミス×006)
その1 その2 その1 その2 その3
血豆 血パト的日常(レジスタンス血×パートリッジ)
その1 その2 その1 その2
一期一会 (血メリ&血リッチ) あくまめさんと血天使さん(血天使×あくまめ)
片道切符エピローグ(豆神さま)

南国バカンス的日常 〜その1〜
「イアン、何飲んでんだ?」
「ココナツミルク」
「うえ。よくそんなもん飲めるな」
「嫌いか?」
「嫌い」
「何だ、今ちょうど、お前とキスしたいと思ってたんだけどなあ」
「……う……っ……」
「どうする?(ニヤ)」

++++++++++++++


もちろん、ラスは誘惑に負けました。


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南国バカンス的日常 〜その2〜
「イアン、何飲む?」
「あれ(きっぱり)」
「あれって……あの花火のついてるやつ? 子どもが飲んでる?」
「そう、あれ(きっぱり)」
「……一応言っておくけど、あれ、酒じゃねぇよ?」
「あれだと言ってる(イラっ)」
「はいはい。(変なとこ子どもっぽいんだよなあ、このひと)」

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アイスクリームも生クリームもたっぷりで、花火がパチパチしてる、スペシャルナントカフロート、とかそういうの。


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南国バカンス的日常 〜その3〜
「イアン。イアーン(コンコン)」
「…………」
「Please、open this door」
「…………」
「恥ずかしがらなくてもいいんだぜ、ダーリン」
「…………」
「日焼けの薬と保冷材買ってきたからさー」
「……………………(ガチャ)」

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日焼け止めを塗るのを忘れてました。(ショーがいないので、注意してもらえなかったから)


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南国バカンス的日常 〜その4〜
「イアン、そんな格好で何やってんだ?」
「……何やってる、だって?(冷ややか)」
「プールサイドまで来て、何でシャツとコットンパンツのままなのかって、ことなんだけど」
「お前が、体中にキスマークを残したりするからだろう!(怒)」

++++++++++++++


ありがち。(笑)


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南国バカンス的日常 〜その5〜
その日、イアンは不機嫌だった。
もうほとんど昼に近い時刻に起きてきたのに、まだ、目許はすこしばかり疲労を残して、はれぼったい。
その原因は9割がた自分にあると知っているラスティは、イアンの寝坊を責めるようなことは一言も口にせず、プールの中から「ハイ」とあいさつしただけだ。
しかし、イアンはそれに対してうんともすんとも返さず、ちらりと冷たい視線を送って、さっさとデッキチェアに腰を下ろしてしまった。
おや、機嫌が悪いな、とは思ったものの、それもそれほど珍しいことではなかったから、身軽に水の中から飛び出すと、ねそべるイアンを、頭のほうから覗き込んだ。
「なんか飲む? 取ってこようか」
「……いらない」
「でも」
「俺より、あっちの女たちに持っていったらどうだ?」
「女?」
嫌そうにひょい、とあげた顎の先で、イアンの言う『女』の姿を探す。そこには、シンプルな白いビキニと、逆に色も飾りも派手派手しいビキニをつけた二人の女性がいた。片方は金髪、片方はブルネットで、どちらも美人の部類に入るだろう。
「何で、彼女たちに」
「さっき、彼女たちと何か話してただろう」
「見てたのか?」
照れくさそうに首元をかくラスティに、イアンはますます眉をしかめる。
それは確かにラスティは、いかにも女受けのするハンサムで、独りでぶらぶらしていれば、声をかけられることも珍しくはないけれど。
何より、そんなことにいらつく自分が、一番苛立たしい。
それなのに、当の恋人は、まるで気軽に笑っているから、腹立たしさは倍増だ。
何か痛烈皮肉でも言ってやろうか、と開きかけた口を、ちゅ、と軽いキスでふさがれた。
「ラス……!」
「あれは、彼女たちに、忠告を受けてたんだ」
「……忠告……?」
「『あなた、背中の爪あと、すごく目立ってるわよ』って」
「!」

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イアンは慌ててホテルに逆戻りしました。


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南国バカンス的日常 〜その6〜
ラスティが連れ立っていた男は、見るからに崩れた生活を送っていそうな人間だったから、イアンは不審げに眉を寄せた。もちろん、そう言った相手との付きあいが珍しいような暮らしではないが、仕事でもないのに、わざわざここで、そんな知り合いを増やす理由がわからない。
「イアン、ここにいたのか」
片手を上げたラスティは、すこぶる機嫌が良さそうだ。
イアンは用心深く唇を閉じ、ラスティが、そばに立つ男の素性を明らかにするまでは、微笑も威嚇も見せずにおいた。代わりにちらりと翠の瞳で相手を見上げる。やはり、どう見たところで〈まとも〉な一般市民ではなく、と同時に、とても仕事仲間にはなり得なさそうな安っぽい悪党だと思い、いったいラスティはどうして、と改めて不思議がった。
そんな相手の心理には気づいたふうもなく、男は、あきらかにあからさまな意図を持って、イアンの身体を上から下まで眺め回した。向けられた視線の露骨さに、イアンの眉間がますます深いくぼみを作る。長い指の先が、苛立たしげにテーブルを叩いた。
男はその手の形にまで目を配り、とうとう肩をすくめてラスティを見ると、諦めたように背を向けた。
「………………」
男の姿が視界から消え去る前から、はっきりと不機嫌な顔をして、イアンはラスティをにらみつけた。
イアンは──実のところ──あんなふうに見られることは珍しくもなかったし、その先のステップを求めてアクションを起こそうとする輩にも慣れたものではあったけれど、だからと言って、気分がいいはずもない。
「何なんだ、あれは。いったい誰だ?」
「ごめん」
隣の椅子に腰を下ろすと、ラスティはすこしも悪びれずに、怒るイアンに微笑みかけた。
「ラウンジで声かけられてね。『遊び相手』はどうか、って言うからさ。『恋人と来てる』って断ったんだけど、信用しないから、嘘じゃないってことを教えてやったんだ」
「で、『恋人』が男だったんで、驚いて引き下がったってわけか」
「……まあ、そんなとこ」
ふうん、とすこし唇を尖らせて、それでも、それで納得したらしい。
「あいつ、今ごろお前のことを『ホモ野郎』とか何とか言ってるぞ」と皮肉っぽく笑ったイアンは、実際は、ラスティと男の間で、どんな会話が交わされたかについてなど、想像してもみなかったのである。
偶然見かけたラスティを、上客だとふんだらしい男は、何度「No」を突きつけても懲りるようすはなく、ブロンドでもブルネットでも、グラマーでもスレンダーでも、必ず好みのタイプを用意できる、と執拗についてまわった。
最初のうちこそ適当にいなしていたのだけれど、しまいに面倒くさくなったラスティは、男の鼻面に人差し指を突きつけると、ひとつだけ条件を提示した。

いわく。

「俺の恋人より美人でセクシーなら、考えてもいい」。

++++++++++++++


イアンたんより美人でセクシーな娼婦はいません。(え?)


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南国バカンス的日常 〜その7〜
「イアン、どう? 気持ちいい?」
「…………」
「……じゃあ、こっちは?」
「…………」
「──ここ、は?」
「…………」
「なあ……恥ずかしがらねぇで、イイとこ言えよ。でないと、俺はわかんな……」
「髪を洗ってるだけなのに、いやらしい訊き方をするな!(赤)」

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イアンたんは、自分がいやらしいことを言うのは平気だけど、他人に言われるとちょっと恥ずかしがるタイプ。だといい。(希望かよ!)


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南国バカンス的日常 〜その8〜
「……イアン、あんた、何考えてんだ」
「前に、映画でこういうシチュエーションを見たことがあるんだ。一度やってみたくてな」
「絶対イヤだ」
「大丈夫だって、ラス」
「何がだよ」 「痛くしないから」
「嘘つけ」
「ラスティ」
「近寄んな」
「怖くないって」
「機械ならともかく、カミソリであんたにヒゲ剃ってもらうなんて、怖いに決まってるだろ!(逃)」

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「受の髪を洗う攻」と「攻のヒゲを剃る受」は私の憧れのシチュエーションです。
……憧れなのに、なぜこんなところで使っちゃったのか……(笑)。


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南国バカンス的日常 〜その9〜
「……お前、ほんとに器用だな」
 改めてしみじみとした口調で言われ、ラスティは面食らった。
 一体、いきなり何を言い出すのだろう。
 これが、鮮やかなリフルの途中だとでも言うならともかく、ごくありきたりの朝食風景だったからなおさらだ。
 先日までのホテルを引き払い、今滞在しているのはロッジタイプの宿泊施設だった。食事は自炊か、外へ出かけていくしかないのだが、長く滞在するつもりはないので、まあいいか、ということになったのだ。
 朝から外食というのも面倒だから、と、朝食だけ、ラスティが食事の支度を引き受けた(一食抜く、という選択肢はどちらにもなかった)。
 テーブルにあるのは、 そば粉のクレープ ガレット に、卵とハム、トマトを乗せた、コンプレート風の一品とコーヒー、それにシロップ漬けの桃とヨーグルトだけだ。器用だ、などといわれる要素はどこにもない、とラスティは思う。
「器用って、何が?」
「だって、卵」
「卵?」
 フライドエッグは嫌いだったろうか? いや、そんなはずはないのだが。
「つぶれてないから」
「………………は?」
 ええと。
「あんた……ひょっとして、卵割れねぇの」
 まさか、と思いながら問い返した質問に、イアンは悪びれもせず、こくりとうなずいた。
「絶対、黄身がつぶれるんだ。殻が入ったりするし」
 だから、スクランブルドエッグしか作ったことがない、と真面目な顔をしている。
「……オムレツは」
「ひっくり返せるわけないだろう」
「………………」
 いや、そこは自信満々に答えるところじゃないだろう。
 たしかに、卵もまともに割れないようでは、オムレツの形を整えるのは難しいかも知れないが。だいたい、スクランブルドエッグだって、何度作ったことがあるのやら。というか、そもそもそれ、食べられるものになったんだろうか、という疑惑までわいてくる。
 ラスティは、「これ、うまいな」と邪気なく言って、二つ目のコンプレートに手を伸ばしている恋人を、まじまじと見つめた。
 表・裏は問わないにしても、イアンの経営手腕には目を見張るものがある。無事アメリカへ帰ったら、自分のホテルのアドバイザーとして迎えようかと思うくらいだ。
 けれど。
「……ついてるよ、イアン」
 口の周りに飛んだヨーグルトをぬぐってやりながら、このひと、大人としては決定的に失格なんじゃないか、とラスティはこっそり考えた。
++++++++++++++


ラスがくいしんぼなのは周知の事実ですが、イアンもあの体格であるからには、きっとごはん食べるの好きに違いないと思います。


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南国バカンス的日常 〜その10〜
「イアン」
どことなくシリアスな顔で、ラスティが言いだしたのは、午後のお茶の時間だった。
まだ、この国が英国領だったころに端を発しているこのホテルは、本場におとらぬ豪華なアフタヌーンティが自慢で、イアンたちも、何度かここに足を運んでいる。
名前を呼んだなり、ラスティは何も言おうとはしない。スリーティアスタンドの向こう(中身はとっくに空だ)の恋人を、イアンはいぶかしげに見返した。
「何だ?」
「──こんなとこで言うのも、アレだと思うんだけど」
「ああ……?」
「ひょっとしたら、あんた聡いから、気付いてたかもしれねえけど」
「何を?」
回りくどい言い方に、イアンは苛立たしげに眉を寄せた。
基本的に短気なたちだ。
「実は俺……、好きな奴ができた」
「………………な、………………。…………………………ああ」
何だって、と訊き返す前に、かろうじて理解が追いつく。
自分は、別れ話を持ちかけられているのか、とイアンは他人事のように考えた。
「──なるほど」
他に言いようがなくて、仕方なくそう言った。まるで、簡単に納得しているかのようだ。そんなことが、あるはずはないのに。
気付いてたかも、とラスティは言ったけれど、まったくそんな予兆は感じていなかった。
昨夜だって。
二人、口々に難癖をつけながら、人気だというドラマを見ていただけなのに、いつの間にかそういう雰囲気になってしまい、結局そこでことに及んだ。アルコールに火照った身体で、どこか混じり合いそうなセックスをした。
した、から。
改めてラスティに目をやれば、生真面目そうな顔でイアンを見ている。
知り合って、まだ三年になるやならずやだが、まるで一生分の付き合い方をしたかのような、濃密な時間を共有した。
けれども。
……考えてみれば……、こんなところに二人、向かい合っていることのほうがおかしいのかもしれない。
「──そうか」
そうか、とイアンは言い、笑顔さえ浮かべた。
「それじゃしかたがないな。いいさ、お前とは今日限りってことにする。俺も新しい相手を探すよ」
「…………」
「…………」
「…………、イアン」
自分から別れを言い出しておきながら、ラスティは傷ついたような目をした。
「何」
イアンは静かにそれを見返した。
別離を決意した恋人同士というには、お互いのまなざしは剣呑で、どちらも、相手の腹のうちを確かめようとする、勝負師の顔をしていた。
無言のやりとりがかわされて、結局、先に勝負を投げ出したのは、ラスティのほうだった。
「──エイプリルフールだろ?」
「Uh-huh?」
イアンは、つん、と顎を上げて、恋人の仕掛けてきた遊びを笑った。
「お前こそ」
くだらない真似を。
ラスティは、カードを放り出すように両手を広げた。
「そうだよ」
「俺もだ」
珍しく簡単にお互いの手の内をさらし、ラスティとイアンは、それぞれ、心地のいい椅子に深く座りなおした。
窓の外には午後の陽射しが降り注いでいて、ティールームを明るく照らしている。
そうやって、何でもなげに、テラスに目を向けた二人は、相手に気づかれないように、そっとため息を吐き出した。
(……あせった……)
(……びっくりした……)
彼らはどちらも、他人の顔色を読むことには長けていたけれども、このときばかりは、自分の混乱を押し隠すのに気を取られていて、相手が胸のうちで呟いた言葉には気がつかなかった。

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ひきわけってことで(笑)。
「スリーティアスタンド」は、ケーキやスコーンの乗ってる、あの三段のケーキスタンドです。
※この話は4/1にアップされました。


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南国バカンス的日常 〜その11〜
──ラスティが、そんなことを言い出した理由は知らないけれど。

たまには、触っとかないと勘が鈍る、と、気ままにカードをシャッフルしているようにみせかけながら、あちらにストレート、こちらにフルハウス、と意図どおりの役を作りだしていたラスティが、ふと顔をあげた。
「そういや、あんたって、誕生日いつ?」
「何だ、急に?」
「いや、なんとなくだけどさ。考えてみたら、聞いたことねえなあ、と思って。いつ?」
イメージとしては夏生まれっぽいよな、と言われ、どういう意味だろう、とちょっと考えた。
「夏じゃない。4月17日だ」
「……昨日じゃん! 何で言わねえの」
強い調子で言われ、イアンが目を丸くする。
「何でって、……別に、この歳になったら、特に嬉しいイベントでもないし」
今さら、ケーキにろうそくを立てても仕方がない。──ケーキが嫌いなわけではないが。
「でもさ」
不満顔で黙り込んだラスティに、イアンは、二度三度とまばたきをした。
おやおや。
知らなかったな、とあごの先をなでる。
ラスティが、恋人の誕生日にはブーケを贈らなくては、というような──まあ、ブーケはものの例えとしても──古典的手法に重きを置いていたとは思わなかった。
女性でもあるまいし、と言いかけて、そうではないのか、と考え直した。
女性は、いつになっても、いくつになっても、そういった気遣いを喜ぶものだ。
さて、一体誰にそんなことを教えられたのか、と、聞いたこともないラスの過去をすこしだけ思った。訊ねてみたりは、しないけれど。
優雅に時を刻んでいるホテルの時計に目をやって、イアンは珍しく鷹揚な微笑を浮かべた。
「ラス」
「何」
「お前、離れて長いから、忘れてるんだろう」
「? 何を?」
「アメリカじゃ、今はまだ、17日だと思うんだが?」
ん? と小首をかしげてみせる。
グリニッジを中心にして、東から西へと時間は流れていく。狭くなったと言われてはいても、地球はいまだ変わらず、24時間をかけて、くるりと一周しているのだ。
「あ」
「何時間くらい残ってるのか、はっきりはわからないが……」
プレゼントでもくれる気なら、楽しみにしておくが、とイアンは上機嫌に目を細め、ラスティは文字盤をのぞき込んだあと、急いでカードを片づけた。

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豆さんのお誕生日ネタでした。
でも私、時差の関係があんまりはっきり理解できてないんで(←バカ)、何か間違ってたら教えて下さい……。


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南国バカンス的日常 〜その12〜
ラスティとイアンがレストランに降りてきたのは、ピークの時間をやや過ぎたあたりだった。眺めのいいテーブルに案内されたと言うのに、二人とも、景色には目もくれず、疲れた顔をして、目元を押さえたり、首筋に手をやったりしている。
食事がだいぶ終わりに近づいてきた頃、ラスティは、とうとう、あーあ、とマナーもへったくれもなく、大あくびをした。
こら、と諌めるイアンのほうも、うつむいて、ふかぶかと息を吸っている。顔をあげると、目元はみずみずしく潤んでいて、やはり、あくびをしていたのだと簡単に知れた。
「あんただって、してるじゃん」
「おおっぴらにやるな、というんだ」
「だって、眠ぃ。あんた、毎晩毎晩激しすぎじゃねえ?」
「そのために、このホテルに来たんだろう」
「そりゃそうだけど。変な時間に寝たり起きたりすっから、体内時計狂いっぱなしだよ」
「ん……」
それはイアンも同じであるようで、ぱちぱちとせわしなげにまばたきをした。
「明日はちゃんと起きないと……昨日も今日も掃除してもらってねえよ」
部屋ん中ぐちゃぐちゃだ、とラスティは苦笑する。
「リビングも寝室もバスルームも、ぜんぶ。あんた、場所なんかおかまいなしだしね」
「うるさいな、お前だって、実は楽しんでるだろう」
「そりゃまあ、人並にはさあ。でも、あんたみたいにめちゃくちゃじゃない」
「何言ってるんだ、おとなしいもんだ。俺は生が良かったのに」
「ひょっとして、まだ根に持ってんの? さすがに生はヤバイって、我慢してよ」
「じゃあ、ごちゃごちゃ言わずに付きあえ」
「はいはい、わかりました。今夜も?」
「当然」
「ほんと好きだよな、あんたって」

それきり、慌ただしく二人が食事を終えて出て行くと、レストランには、何とも言いがたい、居心地の悪い空気だけが残された。ことに、ラスティたちの近くにいた客や、サービスに当っていたスタッフは、皆、顔を赤くして、わざとらしく視線を外している。
はやばやと出て行ってくれてよかった、と、その場の全員がほっと胸をなで下ろした。


────当然のことながら。

イアンが、熱狂的と言っていいほどのサッカー好きであり、現在開催中の、四年に一度の大祭典を見るのに夢中だ、などということは、彼らには知るよしもなかった。
ましてや、それ以外のこと──時差の関係で、どうしても、変則的な時間に起きていなければならないことや、二人が最近まで宿泊していたホテルでは、バスルームにテレビが設置されてなかったこと、逃亡中の身でありながら、「ドイツに行って生で試合を見るんだ」、とイアンが何度も主張していたこと、自国のチームをそれはそれは激しく応援していること──などは、まったくもって、想像の埒外のことだったのである。

++++++++++++++

このネタ作ったとき、ワールドカップ中でした。
「じゃましないでね」の札をかけておいたら、掃除せずに放っておいてくれるものなんでしょうか。


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南国バカンス的日常 〜その13〜
「……退屈だ」
大きな窓ガラスを洗い流そうとするかのように大量に降り続く雨を眺めながら、イアンは、憮然とした声でそう言った。
返事はない。
今、この部屋にいるのはイアンだけだからだ。
由緒ある古いホテルなら、ひょっとして姿もないのに返事が返ってくることもあったりするかもしれないが、あいにくと、ここはできたての新築ホテルで、隅から隅までピカピカなのが自慢なくらいだ。
「悪くはないがなあ」
自堕落にベッドの上でごろごろと転がる。
ここは、ラスティの持つホテルの一室だ。一番とは言わないが、たぶん、二番目か三番目にいい部屋をイアンは独占している。
──否、ここのオーナーも常時いりびたっている状態なので、「独占」とは言えないかもしれない。
だが、何にせよ、イアンがここのところずっとこの部屋を使用しているのは事実で、このオンシーズンに、そんなことをさせておけるということは、このホテルの部屋にゆとりがある……というか、まあ、極めて率直に言うなれば、あまり流行ってはいないからだ。
気の毒なので、イアンはちゃんと宿泊費を払ってやっている。
恋人の気遣い(半ばいたずらっ気ではある)に、あからさまに傷ついた顔をしたここのオーナーは、今、古い友人に会うために数日前から出かけていた。
ダニー。ダニエル・オーシャン。
イアンの中では「チーズ頭」でインプットされている、ラスの相棒だ。
何でも、彼ら共通の友人が、誰だかのせいで入院しているとか何とか、あまり詳しいことは知らないのだけれど、「しばらく留守にするかも、でも連絡は入れるよ」と慌ただしく言い残して出て言った。
『仕事』なのだろうか。そうなのだろう。背中がうすく緊張していた。
ああいうのは悪くない、とイアンは思う。何かをしようとする意志に満ちた身体。双眸。
この頃ではすっかり気の抜けた生活が身についてしまって、まあそれはイアンも同じなのだけれども、だらだらとなにをするでもなく、一日を終らせるような、実に正しいバカンスを満喫していたので。
先天性のギャンブラーのくせに、用意周到なラスティは、たぶん、今頃、勝率を上げるために、ちまちまと準備を整えているところに違いない。「運を天にまかせるのは性に合わない」と言うのが口癖なので、賭博師というより、詐欺師と呼ぶほうが正解か。
「裏の仕事は、何をさせても、たいがい上手くこなすのにな」
ホテルの経営のほうは、ちっとも上手くいってない。
当人も、気にはしているようで、赤字の帳簿を見てため息をついたり、その穴埋めに大金を盗み出す計画を立てたりしているが(それは実によくできた計画で、詳細を知ったイアンは素直に感心した。その発想力と実行力が表の仕事に活かされないのが不思議でならない)、それでは意味がない。
ホテルなんか売っぱらってしまったらどうだ、と進言もしてみたが、そういうつもりはないらしい。となれば、ちゃんとホテルの経営で採算を合わせていく方法を考えないと、いつまで経っても事態は改善されないのだ。
「…………」
このホテルは、特色がないんだ、とイアンは思った。
星の数ほどあるホテルの中から抜きん出るには、どうしてもここに泊まりたいと思わせるような、独自性が必要だ。
ラスティと二人、色々な土地を転々としていたときに、沢山のホテルを見た。印象に残るホテル、もう一度泊まりたいと思うところには、やはりそれだけの「何か」があるものだ。
立地条件はそれほど悪くはないし、オーナーの個人的嗜好で、コックは割と腕がいいのがそろっている。建物や調度品も、みすぼらしかったり、センスが突飛だったりするわけではないのだ。どうにもならないとは思えない。
「となると、もうちょっとターゲットを絞れば……」
手近に転がっていたボールペンを取り上げると、イアンは、ベッドに寝そべったまま、備えつけの便箋に何ごとかを書き込み始めた。やがてそれは、座った姿勢になり、すぐに場所はライティングデスクに移り、カバンの底から眼鏡を引っ張り出す頃には便箋が無くなったので、イアンは、新しい用紙を届けさせるために、電話の受話器を取り上げた。

***

そうして。

バンクに一泡吹かせて、〈合法的に〉潤沢な資金も手に入れ、意気揚々と帰ってきたラスティを待ちかまえていたのは、すっかり実業家モードになった恋人と、ホテルの経営再建のための、厚さ数センチになろうかという企画書だった。

END

++++++++++++++


二人をアメリカに戻してみました。ついでに、「13」に出てきた、ラスの彼女についてのあれこれは、きれいさっぱり無視してみました(笑)。
「南国バカンス」は、これでおしまい。
でも、ラスイアは、この先も思いつく限り書いていきたいと思います。
とりあえず、イアン、あなたを慕ってる部下たちのところへ顔見せてあげたらどうですか(笑)。デイヴィッドも心配してますよ!


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ラスイア的日常 〜その1〜
「……どこにいるって?」
「だから、『バンダル・スリ・ブガワン』だと言ってる」
「それって、地球上にある場所か?」
雑音の多い電話機の向こうにいる相手に、ラスは皮肉げに片方の眉を上げて見せた。見えないとわかっていても、それくらいのことはしたくなる。
もうこれで三ヶ月も恋人の顔を見ておらず、今どこにいるのか、と訊ねれば、そんな、何語なのかも不明なほど辺鄙な(これはラスティの一方的な決めつけであったが)場所にいるだなんて。
「いつ帰ってくんの」
「……わからない」
「あそ」
あからさまにそっけなく、何でもないことのように、ラスティはうなずいて見せた。
わからない、と来た。とどめだ。
ラスティはもう、イアンに会いたくておかしくなりそうだと言うのに。
「あんたは……仕事が一番大事なんだもんな」
俺と仕事とどっちが大事なんだ、なんて、まさか、そんな情けないことを口に出すわけにはいかない。──一番情けないのは、「仕事」と即答されてしまう可能性の高さだったけれど。
ふう、と諦めのため息をつくラスティに、イアンのほうも苛立ちを浮かべた。
何だ、自分ばかりが被害者のつもりでいるのか。会いたいと思うのは、自分のほうばかりだと。
イアンとて、ラスティのことを思い出さないわけではないのに。
「当然のことだろう」
つん、とした口調で言われ、ラスティは、はいはい、と肩を落とした。これ以上言い募れば、イアンはどうしようもなく機嫌を損ねるだろう。
わかったよ、じゃあまた、と通話を切りかけたラスティの耳に、呟くようなイアンの声が聞こえた。
「………でも、そっちが来るなら、会ってやらない事もない、ぞ…」


「……は? どこにいるって?」
「バンダル・スリ・ブガワン」
「それってどこだよ。ていうか、今日は、次の仕事の打ち合わせをするはずだろ?」
「悪いな、適当にしといてくれ」
「適当って……いつ帰ってくるんだ」
「わからない」
「おい!」
あっさりと沈黙した携帯電話を片手に、ミスター・オーシャンは、相棒の唐突な行動に盛大に眉を寄せた。

++++++++++++++


原案:凌さん、文責:吉野でお送りいたしました。凌さんのイアンはニューヨーク滞在だったんですけど(笑)。
バンダル・スリ・ブガワンは、ブルネイの首都です。


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ラスイア的日常 〜その2〜
……ラスティの機嫌が悪い。
ような、気がする。
 イアンは、自分の方がよっぽど不機嫌な顔をして、籐椅子の肘掛部分を指先で叩いた。
 ラスティは、基本的にむらっ気のあるタチでもなければ、執念深いタイプでもない。些細なことで怒ったりもしないし、ましてやそれを、あっさりと他人に気取られるような真似はするはずもない。
だからイアンも、確信が持てずにいて、イラついているのはそこのところだ。
「どうして不機嫌なんだ」と訊ねて「何が?」と聞き返されたら、間が悪い。
 ただ、原因があるとすれば、それを突き止めるのは簡単だ。
 先日、ラスティはダニー・オーシャンに会うからと、数日ヨーロッパに行ってきた。一緒に行く? と誘われたけれども、別にミスター・オーシャンに会いたいとは思わなかったので、一人で残ることを選んだ。
 そうして帰ってきたのが今日の夕方なのだから、何かあったなら、その間の出来事に違いない。
 たった三日の滞在だと言うのに、初めのうちラスティは、何度も電話をしてきて、ちゃんと食事はしてるかだの、怪我はしてないかだの、冷たいものは飲みすぎないようにだの、ごちゃごちゃと口うるさかった。
 さすがに三日目には飽きたのか、帰る間際に、「これから帰る」と連絡が一本あっただけだ。
 お土産、と渡されたのは巨大なチョコレートの箱で、まあこれはたいそう美味であったのでそれはいいのだが、イライラの勢いのままぱくついていたら、もう三分の一ほどが空になってしまった。
 口の中が甘ったるい。
 ふと、ラスティと目があった。彼の視線はイアンの口元から、指の先を経て、チョコレートの箱へと注がれた。
 ひょい、と眉尻が下がる。
 ラスティの言いたいことがわかったので、イアンは先回りして、唇を尖らせて見せた。
「イアン」
「……何だ」
「食べ過ぎ」
「…………」
 そんなことはわかっている。美味しいものをたくさん食べるのは幸せなことだけれど、何につけ適量──というか、限界量はあるものだ。
 正直、自分でもちょっと食べ過ぎた、とは思う。
 でも、そんな無茶なペースで食べてしまったのは、イラついていたせいで、どうしてイラついていたかといえば、ラスティの様子がおかしいからで、そもそもこのチョコレートだってラスティのお土産なわけで、結局全部ラスティのせいじゃないか、とイアンはしごく理不尽な三段論法(?)を自分の中で完結させた。
「ほっとけ」
 一応、チョコの箱にはふたをして、でも、素直に言うことを聞いたと思われるのも、何となく腹立たしい。
 乱暴な言葉だったけれど、そんなのはいつものことだ。
 けれど、ラスティは、ちょっと目を見開いたあと、困ったような顔で笑った。
「イアン、俺、うるさいか?」
「何?」
 うるさい、の意味を考えた。
 この状況からするに、騒がしい、という意味ではあるまい。
 口うるさいか、という意味であるならば……。
「そうだな」
 イアンはいたって正直に答えた。
 ただ、〈仕事〉の時は問答無用だが、日常生活において、イアンは他人に手出し・口出しされるのは、割とよくあることであったので、たいして気にはならない。──もちろん、そんなことを親切丁寧に解説してやったりはしないが。
 そんな、ぶっきらぼうなやり取りだって、二人の間では珍しくはないのに、ラスティは、深々と息をついて「これからは気をつけるよ」と力なく言った。
 まったくもって、らしくない態度に、イアンの眉間は、これ以上ないと言うほどに近寄った。
 元来、短気なたちである。
 早々に堪忍袋の緒が切れた。
「おい、ラスティ! 一体何なんだ、さっきから! 俺は、うるさいとは言ったが、やめろとは言ってないだろう。大体、帰ってきてからお前、おかしくないか。おかしいだろう。おかしいんだ!」
 はっきり言い切って、イアンはああすっきりした、と溜飲をさげた。
 そうだ、おかしいんだ。もっと早く、そう言ってやればよかった。
「あっちで何かあったのか。仕事のことか。あのチーズ頭が、また何か言ったのか。うじうじしてないで、あらいざらい吐け!」
「…………」
 台詞だけは取調室の刑事みたいだったが、言い方は駄々をこねる子どものようだ。
ラスティは、怒る恋人の顔をまじまじと見上げ、わずかばかりの沈黙の後──降伏の証に両手をあげると、笑い出した。

「俺さ、正直言って、ほんとあんたのこと心配なんだよ。頭はいいし、世慣れてるし、金だって持ってるけど、変なとこガードが甘いっつーか、まあ、何てえの、あんた、はっきり言ってうかつじゃん」
「うか、…………うかつ?」
 イアンは、信じられない言葉を聞いた、とばかりに、同じ単語を繰り返した。
 うかつ?
 うかつだって?
 誰がだ。
 この俺がか!
「お前……俺を何だと……」
 しかし、ラスティは、イアンの抗議など聞いてもいないらしく、「だから、もう、目を離すと、何かやってないか、ハラハラしてさー」と、片手に顔を埋めて、まるで悲劇のひとのように、ため息をついている。
「それで、あっちからも何度も電話してたんだけど、そしたらダニーが」
──お前は、彼の保護者か?
 さも呆れたように、そう言ったのだという。
 さらに「知らなかった。お前、恋人にするとうるさいタイプだったんだな。でも、あんまり束縛すると、しまいにうざがられるぞ」とまで言った。
「なんか、すげーショックで」
 それは(イアンのほうが年上であるのに)「保護者」と言われたことに対してなのか、「うるさい」と言われたことにであるのか、「うざがられる」という未来像に関してなのか、はわからなかったが。
 まあ、おそらくそのすべてであろう。
 言われてみれば、確かに、心当たりはありまくりで、イアンが嫌がるそぶりもみせないので、まったく気付かずにいた。
 保護者って。
 そんなポジションは、ちっとも嬉しくないし、欲しくもない。
「……お前……」
 本気で落ち込んでいるらしいラスティに、イアンは何度か言葉を発しかけ、口をぱくぱくさせたものの、結局、言葉ではもどかしかったのか、直接行動にでた。
 ずかずかと近寄ってくるイアンの足──靴もスリッパもはかずに、長い指の先をさらしている──に、ラスティは驚いて顔をあげる。
 その膝の上、ラスティの足をはさむようにイアンが向かい合って座ってきたので、ますます驚いてやや身をのけぞらせた。
「イアン」
「お前、馬鹿だろう」
「……そうかな」
 目の前に、緩い襟元とそこからのぞく白い首や鎖骨があって、ラスティは半分上の空でそう答えた。往復の移動時間を合わせて、もう五日も離れていたのだ、ということに、今気がついたからだ。
 腰に手を添えても、イアンは大人しくしている。
 それどころか、ちゅ、と唇にキスされた。
「俺は、保護者とセックスはしないぞ」
「イアン」
「そうだろうが」
 難しい顔をしているのは、怒っているからだろうか。いや、イラついてんだな、俺のせいか、と、もはや読み慣れた表情から推察する。
「そうだな」
 たしかに、その通りだ。
 こんな体勢で、キスをしたりもしない。
 近づいた唇に、ラスティはそっと目を閉じた。
 二度目のキスは、深く。
 脇腹のあたりを何度も撫で上げれば、イアンがふるりと身を震わせた。そんなしぐさですら、扇情的だ。
 一度離れて、吐息をもらすころには、お互いの衣服はだいぶ乱れていた。場所を移動するなんてもどかしい。
 そのまま、行為の続きを再開しようとして、ラスティがふと思いついたように目を上げた。
「イアン」
「何」
「後で、ちゃんと歯を磨かないと、虫歯になるぞ」
 やっぱり父親のようなことを言う恋人に、イアンは、反論の代わりとして、その唇に軽くかみついてやった。

++++++++++++++
原案:凌さん、文責:吉野第二弾。
メッセの間に出てきた「保護者みたいって言われて落ち込むラスティ」が元ネタです(笑)。


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スミスさんの家庭の事情。 〜その1〜
その日、ジョンはいつもどおり、7時の夕食に間に合うように自宅へ帰った。
 ダイニングの入り口まで行くと、これもいつもどおり、アレックが料理をセッティングしているところだった。万事器用なアレックは、結婚してから調理の楽しさに目覚めたらしく、毎日、きちんと手をかけた食事を作る。
 香ばしい匂いに、ジョンは深く息を吸った。今夜のメインは、たぶん、シェパーズパイだ。懐かしい、と、アレックがときおり作るメニューである。ロシア生まれじゃないのか、と訊いたら、イギリスにいた期間が長かったから、と言っていた。
 なるほど、それであんなにきれいなクイーンズ・イングリッシュを話すのか、と、ジョンが思ったのはそのていどのことだ。
 出会ってから数時間でベッドインして(これはあまり珍しくもないが)、一週間後には結婚を申し込んでいたので(これはちょっと珍しい)、お互いに、知らないことがいろいろとあるのは仕方がない。大体、ジョンは元々おおらか(大雑把だ、とは友人諸氏の評である)なたちなので、あまり根掘り葉掘り相手の過去を尋ねることはしなかった。
「ただいま」
「ああ、おかえり」
案の定、アレックはオーブンからポットを取り出したところだった。熱々の陶器に触れないように気をつけて、11時間ぶりの再会を祝うキスをする。
それも、いつものとおり。
だが。

「……あれ? アレック、あんたのは?」
 テーブルに供されているのは、ジョンの食事ばかりで、アレックの席には、グラス一杯分の野菜ジュースがあるだけだ。
「うん、今日はいいんだ。君は遠慮しないでちゃんと食べてくれ」
「いいったって……」
 ジョンは困惑して、いったんフォークを戻した。
 「いつもと違う」というのは、それだけで警戒の対象になる。これは、ジョンのような〈職業〉についているものの、第二の本能だ。
 もっとも、まさか本気でアレックに疑いをかけたわけではなく、心情の99.9%は、妻の様子を心配してのことである。
「何かあったのか?」
「そ……うじゃない。君が、心配するようなことは」
「心配だよ。体調が悪いなら、無理しないで休んだ方がいいし、何か理由があるなら、聞かせて」
 けれど、アレックは居心地悪そうに目をそらしただけで、かたくなに「何でもない」と言い張った。
「……アレック」
 静かに席を立って、テーブルをまわる。冷めていくパイのこともちょっと気になったが、アレックのことが心配でしかたないのだから、きっと許してもらえるだろう。
 腿の上に置かれた両手をとって(その造形はいつ見ても美しくてほれぼれする)、翡翠色の瞳(コロンビアの強烈な太陽の中で、それは、どんなに鮮やかに輝いていただろう!)を覗き込んだ。
 アレック、ともう一度名前を呼ぶと、彼の妻は覚悟を決めたのか、切なそうに眉を寄せて、そろりと口を開いた。
「ふ……太ったんだ」
「太…………?」
太ったって? とデリカシーなく聞き返されて、アレックは、不機嫌丸出し、という顔をした。でも、それは、彼が羞恥のあまり消えてしまいたいと思っている、と言うことなのだ。
 けれど、ジョンは、自分に非があるとは気づいていない。それは彼が鈍感 だからではなく、目の前の妻の、いったいどこがどう太ったのかが、まったくわからなかったからだ。
 アレックは、黒い服を好んで着たし、今も、黒のシャツに同じく黒のパンツ姿ではある。けれど、色の持つ収縮効果とは一切関係なく、アレックの身体はきれいに引き締まっていた。いっそ、腰の細さなど、心配になるほどであるのだが。
「……ぜんぜんわかんねえけど」
「う、嘘だ」
「いや、ほんとに。どれくらい変わったって?」
「………さ……3lbsポンド(1.4kg)」
「………さんぽんど………?」
 それくらい、揚げ物を肴に大酒でも飲んで一晩騒いだら、あっという間に変動してしまう気がするが。
 過去からの習慣で、自身の身体を完全にコントロールする術を叩き込まれているアレックには、たとえ3ポンドといえど、許しがたい怠惰なのだ──というようなことを、もちろん、ジョンは知らない。
「それで、ダイエットしようと思ったの?」
「…………」
 そう、とアレックはしぶしぶうなずいた。
「あのさ。あんた、今までダイエットとか、縁がなかったろうから知らないかもしれないけど、食事抜きのダイエットはかえって太るんだぜ?」
「え、ほんとか!?」
 アレックは、10代のころから、ずっとトレーニングを欠かさない生活を続けていたけれども、それは身体を鍛えるための訓練であり、痩せることが目的ではなかったので、そう言った情報には疎かった。
「そうだよ。それより、三食ちゃんと食って、運動するのが一番いいんだ」
「そうなのか」
じゃあ、明日からのトレーニングメニューをもっとハードに組直して……と、内心でさっそく計算を始めたアレックに、ジョンがニヤリと意味あり気な笑顔を見せた。
「とりあえず」
「うん?」
「1〜2ポンドくらいのカロリーなら、今晩、ベッドの上で消費できると思うけど」
 もちろん、俺も付き合うよ、とアレックの夫は〈寛容に〉言った。
「──なるほど」
 それはグレートなアイディアだ、とアレックは、機嫌のいい猫のように、緑色の瞳を細めた。
 セクシーな微笑を浮かべた薄い唇に、誘い込まれるようにキスをする。いたずらな舌が入り込んできて、口の中に残っていたドライマティーニの香りを残らず奪っていった。
 お返し、とばかりに今度はジョンが、アレックの中を蹂躙する。
 そうする間にも、つなげていた手はだんだんと上にあがって、そろそろお互いのひじの辺りを抱き寄せようとしていた。

────どうやら。
アレックのダイエット計画は、夜を待たずに始められることになりそうだった。

++++++++++++++

ジョン・スミスさんとアレック・T・スミスさんは、たとえ結婚10年たってもラブラブです。銃撃戦とかしなくても、大丈夫。
スミスさんちの辞書に「倦怠期」の文字はありません。
ポンドの複数形は、ほんとは「パウンド」らしいです。


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スミスさんの家庭の事情。 〜その2〜
「アレック」
 ジョンが寝室に上がっていくと、一足先にベッドに入っていたアレックは、ひどく真剣な表情で本を読んでいた。
 日中はぴったりとなでつけられている金髪が、今はさらさらと額の周りへ落ちかかっている。時折うっとうしげに、それをかきあげる指の形の美しさに、ジョンはいつものことながら、つくづくと感じ入った。
「ああ、ジョン。映画は終わったのか?」
「さっきね。あんたも見れば良かったのに。けっこう面白かったぜ」
 テレビで放映していた、古い映画だ。単なる娯楽作だが、肩ひじはらずに楽しむ分にはちょうどいい。
 アレックはふふ、とやわらかく笑った。
「すまないが、スパイ映画はあまり好きじゃないんだ」
「ふーん」
 何故、と訊いてみてもよかったけれど、それよりもジョンは、妻のベッドに腰を降ろして、甘い香りのする髪の毛に触れることを選んだ。咽喉をなでられた猫のような顔で、アレックが目を閉じる。
「アレック」
 キスをしながら、パジャマのうちあわせに手をかける。だが、ボタンを外そうとすると、やんわりとした仕種で止められた。
「だめだ、ジョン」
「え、何で」
 まさか断られるとは思わなかったジョンは、きょとんと目を丸くしている。
「どしたの。体調が悪いのか?」
 気分がのらない、って選択肢はないのか、とジョンの同僚のエディあたりが聞いたら、呆れたように言うだろう。
「風邪? 頭でも痛ぇの。それとも…………あ、もしかして、昨日無理させたとか?」
「そうではなくて」
 のぞきこんでくる夫の鼻面を、読んでいた本で押しのけた。
 ペーパーバックの分厚い本だ。本屋で買ったときのまま、店名の入ったブックカバーがかかっているから、何の本かはわからない。
「今、物語が佳境なんだ。これを読み終わるまでは、何もしたくない」
「本〜?」
 そんなことが原因か、と夫はふくれっつらをした。
 まるきり、おやつをもらえなかった子どものようだ。
「ジョン、ジョン」
 くすくすと笑いながら、アレックの指がジョンの頬をなでる。甘やかすようなしぐさと、甘えるような表情は、抗い難く魅惑的だ。
「そんな顔をしないで。今夜だけ、許してくれないか。その代わり……」
 明日は今日の分もサービスする、と、アレックは、それはそれは艶めいた囁きで、夫の不機嫌をあしらった。


「……で? それ何の本? ベストセラーかなんか?」
「まあ、そうなんだろうな。本屋で山積みになっていたので、つい一巻を手に取ったんだが……割と面白い」
「『ANGELS & DEMONS天使と悪魔』?」。
 ジョンの知っている今の話題作、といえば、それだった。
 否、実際に話題なのは、その次の「THE DA VINCI CODEダ・ヴィンチ・コード」らしいが、それはシリーズの第二巻目にあたるのだそうだ。
 けれど、彼の妻はその名前を知らなかったらしく「いや?」と小首を傾げた。
 ぺり、と本屋のカバーをめくってみせる。
 その表紙には、大きな活字でこう書いてあった。
HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONEハリー・ポッターと賢者の石』。

++++++++++++++

アメリカでは本にカバーかけてくれるんでしょうか。
ジョン、全シリーズ制覇まで、相手してもらえなかったら笑え……もとい、可哀想ですね(笑)。


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スミスさんの家庭の事情。 〜その3〜
その日、ジョンはいつもどおり、7時の夕食に間に合うように自宅へ帰った。
ただいま、と声をかけ、リビングに足を踏み入れた時点で、異変に気付いた。
いつもなら、すぐさま「おかえり」と言う声が返ってくるはずなのに、キッチンはしんと静まり返っている。耳を澄ましても、何の音も聞こえてこないし、食欲をそそるような匂いも漂ってこない。代わりに、どこかきな臭い空気がうっすらと残っていた。
これはただ事ではないのではないか、とジョンは薄く緊張して(何せ、心当たりはありまくりなのだから)、そっと腰にさした銃に手を回した。キッチンの壁に身を寄せて、いるはずの妻の名前を呼んでみた。
「…………アレック?」
「──ジョン」
身構えた割に、アレックの返事はすぐに返ってきて、ジョンは盛大に息をついた。良かった、とりあえずは無事でいるようだ。
だが、まだ安心するわけにはいかない、と、充分に警戒しながらのぞき込んだキッチンには、けれども、アレックが独りでぽつんと座っているだけだった。
人影もなし。
気配もなし。
ようやく背を伸ばして、ジョンは銃の安全装置を元に戻した。
「アレック、ただいま。あんまり静かだから、どうしたのかと思ったよ」
「…………おかえり」
条件反射のようにそれだけ言ったが、アレックは顔を上げようともしない。
いったいどうしたと言うのだろう?
ジョンが最初に懸念したような出来事は起こっていなかったけれど、ただ事でないのは確かなようだ。
たまらなくなって、ジョンは妻の顔を覗き込んだ。
「アレック、ほんとに、どうしたんだ? 何があった?」
聞かせて、とうながされ、アレックは長い沈黙の後、ようやく、唇を震わせた。
「わ……私は、とんでもない過ちをしでかしてしまった。君に、何といってわびればいいのかわからない」
「あ……あやまち?」
深刻な顔でそんなことを言われ、ジョンが反射的に想像したのは、アレだった。
まだ少年の頃に見たような、安っぽいポルノビデオの『お、奥さんっ!』『いけません、私には主人と子供が!』という、アレである。
今思えば、馬鹿馬鹿しさ極まれり、という感じだが、あの頃はあれでも充分役にたったのだから、ティーンエイジャーなんて他愛ないものだ。
……って、そんなことを思い出してる場合じゃない。
だいたい、こんな美人がそのへんを普通に歩いてたら、そりゃあ、ストーカーの一人や二人、ひっかかってもおかしくはない。
いや、むしろ当然だ、とジョンはごく真剣にそう思った。
ジョ●ィ・フォ●ターにほれ込んだ、ジョ●・ヒン●リーやトマ●・ハ●ス(後者は別にストーカーではないが)の常軌の逸脱ぶりを見れば、そういった輩が何をしでかすかわからない、というのは周知の事実ではないか。
だが、当然だからといって、それが許されるものではない。
もしも、そんな奴らが、最愛の妻に何かしでかしたのだとしたら。
────殺そう。
ジョンは、それこそ、ごく当然といえば当然の結論に、一瞬で達した。
〈仕事〉のときなら、なるべく簡潔に、手早く処理することを優先するが、この犯人は、じりじり、じわじわと寸刻みにして、なるべく長く苦しむように、あらゆる手をうち、生まれてきたことを後悔させてやろう、と深く決意する。
すう、と目元を尖らせたジョンに、アレックはますます小さく肩を丸めた。
「あ」
いたたまれなさそうな妻の様子に、ジョンは慌てて膝をつく。
彼には何の罪もないことなのに。
「アレック」
「…………」
「アレック、例え何があっても、俺の愛は変らないよ」
ずっとずっと永遠に愛してるよ、と妻を見上げるジョンは、先ほどの冷酷非常な決意を固めた人間とは、同一人物とは思えなかった。
アレックは、まだ、しばらくためらっていたが、心配そうなジョンのようすに、ようやく決心したらしく、すん、と鼻をひとつすすって、きれいな指先でキッチンを指した。
その延長線上にあるのは、大きなゴミ箱だ。
何だろう。
ストーカーからの脅迫状でも捨ててあるのだろうか。
ちらちらとアレックを振り返りながら、ジョンはごみ箱のフタを開けてみた。
「────」
しばし、無言で中身を凝視しする。
もう一度妻を見、それからシンクの中ものぞきこんだ。
アレックは、うなだれたままだ。
やがて、無言のまま戻ってきた夫は、思いやりを込めて、妻の肩を抱いた。
「あのさ……とりあえず、どっか外に飯食いに行かね?」
こないだ新聞にチラシが入ってたじゃん、新しくオープンした日本料理の店、あそこ行ってみたくねえ?
「すまない」
「気にすんなよ、アレック」
「私は主婦失格だ」
大丈夫、大丈夫、とジョンは明るい笑みを浮かべた。
「──どんな優秀な主婦だって、一度や二度くらい、鍋を丸焦げにしたことはあるさ」
++++++++++++++

鍋を焦がしたのはわたしです……フライパン、黒焦げにしちゃった……。
でもネタになったからまあいいや。
アレックさんがみすみすストーカーなんかに何かされるわけないのですが、ほら、ジョンは知らないから。俺が守ってやらなくちゃ、とか、力みかえっているわけです。


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ギリシア彫刻のひみつ。(血豆だけど、出演は襟&花)
「ハイ、エリック。ここいい?」
「いいとも、My lovely brother」
「あのさ」
「何」
「……ブラッドどうしたの? 機嫌悪そうだよね」
「ショーンといざこざしてるらしい」
「え! 何で? ブラッドってば、何したの」
「……お前の中じゃ、ブラッドが悪者だって決まってるのか」
「だって」
「今回は、原因を作ったのはショーンのほうなんだ」
「ええ〜? 珍しい〜」
「ただ、ショーンは悪くはないと思う」
「じゃあ、やっぱりブラッド?」
「ブラッドも悪くない」
「……? それじゃ誰が悪いのさ」
「誰も悪くないよ」
「それでケンカになる?」
「そりゃ、なることもあるだろうさ。ただ、今回はなあ」
「どしたの」
「ショーンがな、ブラッドに『君なら、そのままでギリシア彫刻のモデルになれるね』って言ったらしいんだ」
「……? うん。誉め言葉じゃないの? 俺もそう思うけど?」
「ショーンはもちろんそのつもりだったさ。悪気も皮肉もない」
「でしょ?」
「でもなあオーリ、みりゃわかるだろ? ギリシアの彫刻てのはさ」
そこでエリックは、さも恐ろしい秘密を告げるように、声をひそめた。
「ナニが包茎って決ってるもんなんだよ!」

++++++++++++++


……ってことを知って、ふむふむ、と感心したので(笑)。
いえ、美術書だったかに、「身体の割にナニが小さい」というのは書いてあるのを見たことがあるんですが、包茎、とは書いてませんでした……。
古代ギリシア人は、〈中身〉がむき出しなのは、いやしい(いやらしい、ではない)、と考えてたそうで、運動するとき(もちろん全裸)は、ナニの先を、かわいくリボン結びしたりして競技したそうです。
リボン結………っ………(ばんばん)。
あと、古代ギリシア人には仮性包茎が多かった……というか、人間のナニがむけはじめたのは、下着をつけて保護するようになったからだ、という説もあるそうですよ。
ただ、欧州のひとなんかは、真性でなければ、それほどは気にしないらしいです。


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homme fatalオム・ファタル(ちょっといつもとは違うテイストで。)
「……あんたって、ほんと、ダメな大人だね」
 逮捕とか、ありえないし、とブラッドは疲れたように笑っている。
 何で私がそこまで蔑まれなきゃならないんだ。DVで逮捕された男は世界中で私だけじゃないし、逮捕された俳優も、私ひとりじゃないはずだ。
 その思いが素直に出たのか、ブラッドは、「ああそう、あんたの友達も同じことしてたっけ」と肩をすくめ、「類友?」と言った。
 言ってることは失礼なのだが、別段、バカにするつもりではないようだ。ただ呆れている。同じような失敗を繰り返す私に、あるいは、もしかしたら、そんな私を見切れない彼自身にも。
 ほんっとにさあ、と、ブラッドはだらしなく片肘をついて、その上に頬を乗せた。
「止めたよね、俺。止めたでしょ。恋人はいいけど、結婚はやめたほうがいいって。彼女がどうこう言うんじゃなくてさ、女変えてもダメなんだよ。問題があるのは、あんたのほうなんだからさ。だいたい、三回も失敗するなんて普通ありえないわけで、そしたら大概のひとは学習するよ、ああ、自分は結婚向きじゃなかったんだな、って。懲りないのってあんたくらいなんじゃねえの」
 案の定、こんなニュースになっちゃってさあ、と、彼はネットからわざわざプリントアウトした記事をひらひらと振ってみせた。何でそんな記事チェックしてるんだ、ストーカーか。
「知ってる? 男には離婚遺伝子ってのがあるんだって。それを持ってると離婚の危険性が倍になるらしいよ」
 あんた、絶対それ持ってるよね、とブラッドは案外真剣な顔でそう言った。
「離婚遺伝子」
 そんなものがあるとは知らなかった。もしそれが彼の創作でないというなら、確かに自分は持っていてもおかしくないと、自省と自嘲を込めて思う。けれど、「心あたりあるだろ」とニヤついているブラッドは、自分だけはマトモだとでも思っているのだろうか。
「そういう君は、どうなんだ」
 美しい恋人がいて、その彼女との間に、養子と実子を含めて六人も子どもがいて、仕事も順調、人生に何の不満もないような立場にありながら、こうして私なんかのために英仏海峡を越えて来る男。ただ、しょぼくれてる私を甘やかすために。
 これだって、到底まともな大人とは言いがたい。
 けれど、これまで散々悩んで迷って傷つけあった挙句に開き直った男は、もう今さらそんな台詞くらいでは、動揺することさえなかった。
「俺? 俺は、そう、ほんとにダメな大人に心底惚れてる、どーしょーもない男、かな」
 ダメな大人とどうしようもない男か、と言うと、似合いだろ、とブラッドはあの銀幕を魅了する顔で笑っていた。
「俺とのこと、秘密にするからだよ」
 それでぎくしゃくしちゃうんだろ、と、確信を込めて言う。それは事実だったが、ブラッドが、いかにも優越感を滲ませているのが腹立たしくて、自慢の顔を指先で弾いてやった。
「たっ! 何すんだよ、もう。役者の顔だぜ」
「君のところと一緒にするな。世の中の女が皆、同性のパートナーを持ってるわけじゃない」
「そりゃそうさ。運が良かったのは認めるよ。俺にあんたがいるように、彼女にも大事な相手がいた。でも、俺はそれを知ってて彼女に近づいたわけじゃない。ちゃんと最初に確認した。俺には大切なひとがいて、彼は、俺の中で、誰よりも優先されるべき存在なんだって。それで彼女に捨てられても、それはそれで仕方ないと思ってたよ。公正だろ。──俺は、あんたとは違うもん」
 ブラッドが責めたいのが、彼女と結婚したことについてなのか、彼女にブラッドとのことを黙っていることについてなのか、あるいは、その両方なのかはわからなかった。
「逃げ出したいの?」
「何が」
「俺から逃げ出して、今さら『普通の』生活に戻りたいとか」
「……今度はその鼻っつらを折ってやろうか」
 二割くらいは本気で言った。むかつく。
 今さらそんなことを思うくらいなら、とうの昔に逃げ出してる。
 それならいいけど。ブラッドはうっすらと唇の端を持ち上げた。
「怖いのか」
 冗談まぎれに訊いてみると、ブラッドはあっさりと、怖いよ、と言った。
「怖い。そんなことになったら、俺、自分が何しでかすかわかんないからね」
 ラチカンキンとか、非建設的だもんね。
 あまりにさらさらと言われたので、言葉の意味をつかむのが一瞬遅れた。
「拉致監禁」
「やろうと思えばできるんだと思うけどさ」
「しなくていい」
「なるべく努力する」
 その返事はおかしいだろう、と思ったが、おそろしいことにブラッドは大真面目だ。
「……したいのか?」
 念のために訊いてみた。
「したくはないよ。そういう趣味はないからね。でも、あんたは相変わらずふらふらしてるし、離婚遺伝子持ちだし、逮捕なんかされるし、撮影現場ではあの笑顔を振りまいてるに違いないし、もう色々危なっかしすぎて、面倒だから捕まえておきたくなるんだよ。ときどきね」
「面倒だからか」
 そこは普通、愛してるから、とかそういう言葉が入るところじゃないのか。
 抗議すると、ブラッドは「愛してるから面倒に思うんじゃないか」と言った。
「──ほんとは、わかってるんだろ、ショーン。あんたみたいにダメな大人、ずっと変わらず愛してやれるのは、世界中で俺だけだって」
 あんたの運命の女ファム・ファタルなんて、どこにもいないんだよ、とひどいことを言いながら、ブラッドは慰めるような優しいキスをしてきた。


 ────でもブラッド。
 君はそういって私を笑うけど、手のかからない私なんか、好きじゃないくせに。
 私が君の言う「ちゃんとした大人」になったら、もう私に興味は抱かないだろう?

 だから私は失敗を繰り返す。同じことを、何度も、何度も。


 そういう私のたくらみを、彼が気付いているかどうかはわからない。
 何にも知らずに私のことを笑っているように思うときもあるし、本当は全部知ってて、そういう私だからこそ離れられないのかもしれない、と思うときもある。

「愛してるよ、ショーン」
 もう全然ダメなところも含めて全部。
 そう言いながら髪をすくブラッドの指が心地良くて、うっとりと目を閉じる。
 次に目を覚ましたとき、知らない場所だったらどうしようか、と半ば恐れ、半ば楽しく思いながら、私は、ゆっくりと夢の中へ落ちて行った。

END
++++++++++++++


ちょっとばかり病み気味の血豆。
たまにはこういうのも楽しい。


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血パト的日常。(血×パートリッジ)
ブラッドは、並んで座ったパートリッジの顔をのぞき込んで、そわそわと指先を遊ばせた。
白い頬を伝ってこぼれ落ちる涙は、たいそう美しいものに見えたけれど、やはり、恋人の泣いている姿というのは、どうにも落ち着かない。
それが、自分のせいだとすればなおさらだ。
「エロル、ごめん。ごめんな」
「…………ううん」
君のせいじゃない、ということを、ずいぶん不明瞭な発音で告げて、パートリッジはぐすぐすと鼻を鳴らした。
「……っこ、これって……どうしたら、と、止まる、のかな」
涙が止まらない、と、彼にしてはやや乱暴な仕種で目元をぬぐう。けれど、溢れる水分は、一瞬たりとも途切れはしなかった。
「こすると、腫れるよ」
「でも」
「かまわないから、気のすむまで泣いちゃいなよ」
ね、と優しい声で言われて、パートリッジは、ますますたくさんの涙をこぼした。丸まった背中を抱きこむと、肩の辺りに、じんわりと温かな水がしみこむのがわかった。
やがて、パートリッジは、そのままの体勢でことりと眠ってしまった。
泣く、というのは、慣れないうちは、これでなかなかに疲れるものなのだ、ということを、ブラッドは自らの体験で知っていたから、無理に起こすようなことはしなかった。
力の抜けた恋人の身体をそっと横たえると、眉根の当たりが、まだかすかに悲しみを残すように浅い溝を刻んでいた。
「……しまったなー……」
まだ、これはエロルには早かったよなー、と、吐息のような小さな声で反省を口にする。
手の中のDVDケースには、手書きで、〈ニュー・シネマ・パラダイス〉と、タイトルが書かれてあった。
「……今度は、〈サウンド・オブ・ミュージック〉にしとこ」

++++++++++++++


ニュー・シネマ・パラダイスのところは、皆様お好きな感動物を入れてくださるとよろしいかと思います(笑)。


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血パト的日常。2 (血×パートリッジ/remindシリーズ)
「もし、二人が生き残ってたら」設定のお話です。
エロル、エロル、と心配そうな声にうながされて、パートリッジは目を開けた。視界はぼんやりとして、滲んだ輪郭が見えるばかりだ。
 どうしたんだろう、とまばたきをしたら、目のふちから、ころりと水が流れ落ちた。
 ……水?
 ──違う。
 涙だ。
 目尻から頬にかけての皮膚が冷たくなっているのがわかった。
「エロル、大丈夫か?」
「ブラッド……? 私は……」
「あんた、泣きながら寝てたんだぜ。どうかした?」
 心配そうにのぞきこんで来た恋人の顔に、ようやく焦点が合った。一緒に暮らし始めて三ヶ月、一日の初めに会うのも、終わりに見るのも、お互いの姿だという毎日にようやく馴染んできたところだ。
 それは、新しい世界が生まれて三ヶ月、ということでもある。
 まだ、程度の多少はあれ、違和感のある毎日が続いている。
 プロジアムを摂取するふりをしなくていいことや、手元に銃を置かずに眠ること、さまざまな嗜好品をこそこそ隠さなくてもいいこと。
 何よりの変化は、人前で感情を殺す必要がなくなったことで、けれど、これにはパートリッジたちのみならず、すべての人間が慣れたとは言いがたい。
 それでも、世界はようやく、本来の姿を取り戻した。
 政府の欺瞞が暴かれ、偶像としてのファーザーが〈殺された〉、あの日以来。
 白い制服を血で染めて帰ってきたプレストンを、フリーダムのメンバーは歓声で迎えた。プロジアムの工場はレジスタンスの手によって抑えられ、薬の供給を断たれた人々は、元々自分のものであったはずの喜怒哀楽を取り戻した。
 それは、幸福ばかりをもたらしたわけではないが、確かな変遷の証でもある。ぎこちないながらも、ようやく動き始めた世界。
 秩序の名の下に、愛する者を奪われなくてもいい世界。
 そこで、パートリッジは、自分が泣いていた理由を思い出した。
「夢を……」
「夢?」
「夢を、見たんだ」
 どんな、と訊く前に、ブラッドはパートリッジを抱きしめた。寝起きの温かい身体を重ねて、二人して安心する。パートリッジは、震えるような細いため息をついた。
「いったい、どんな悲しい夢?」
 眠りながら涙を流すほどに。
「君が。……君が、死んだ夢を」
 夢の中のブラッドは、この新しい世界を見ないまま、自分だけを遺して先に逝ってしまった。あのときのあの世界では、単純で、ありふれた死。報告書の中では、名前さえ与えられず『7名処分』──死亡、ではなく、処分、だ──と記されたばかりで、彼ら一人一人が生きた人間であることや、それぞれに友人や恋人や家族がいることなど、かけらも想像できない無味乾燥さだった。
 事実、その書類を見て涙を流したのはパートリッジだけだ。
 そうして、置いていかれたパートリッジは、後を追うことすらできずに、己を断罪してくれる誰かを待ち続けていた。
「……君はひどい。あんまりだよ」
「ええ〜? それって、俺の台詞じゃねえの」
 思いだすうちにまた悲しくなってしまったらしく、ぐすぐすと鼻を鳴らして泣く恋人に、ブラッドは情けなさそうに眉尻を下げた。
「だって」
 それは、あまりにも嫌な話で、そんな夢を創造した自分の脳を怨みたくなる。
「──大丈夫だよ」
 パジャマ代わりのTシャツを濡らされながら、ブラッドは、子どもにするように、パートリッジの背中をぽんぽんと叩いた。
「俺はエロルを遺して死んだりしないし、あんたがそういう夢を見た理由もわかってる」
「理由?」
 何故、何がわかるんだ、と訊ねる前に、そんなものがあるなら是非教えて欲しいと思った。
「俺も、ユルゲンからの受け売りだけどね。悪夢ってのは、『本当に怖いこと』は見ないんだってさ。現実にありうるかもしれない、って心底怯えてることは、脳だってチョイスしない」
 だって、自分の脳なんだからさ。
〈あるじ〉は覚えていないことを記憶していたり、無許可にデータをひっぱりだして適当なストーリーを創ったり、無意識のうちに潜む欲望を露にしたり、と勝手気ままなたんぱく質の塊だが、それでも元は〈あるじ〉と一緒だ。持ち主が本当に本気で嫌なことは、脳だって同じように感じている。
「でも、実際に……」
「だからさ、もうファーザーはいないじゃん? 俺たちは〈レジスタンス〉じゃないし、当然、銃撃戦もしない」
 今は、『諍い』はあっても『闘い』は必要ないのだ。
「エロルの脳は、もう、俺がレジスタンスとして殺されることはないってちゃんと知ってて、安心してる。だから、いたずらっ気を出してそんな夢を創るんだよ」
「……迷惑だよ」
「そうだな。もっといい夢を見るように言っておかなきゃ」
 頼むよ、と子どもにするように額にキスを落とす。
 きょとん、と一度まばたきをした後、今のそれって、私の脳に言ったのか、とパートリッジはようやく笑った。


「エロル、今日も遅くなりそう?」
 朝はいつも慌しい。6時にセットしてある目覚ましが鳴ったのはあれからすぐで、そうなると二人ともベッドを抜け出して身支度にかからねばならない。
 コーヒーを片手に時計をにらみながら、ブラッドが恋人を振り向いた。今朝は、いつもよりさらに早くに出勤して、ユルゲンと打ち合わせをしておかなくてはならないのを思い出したのだ。自分ですらこんなに忙しいのに、いったいユルゲンはいつ寝てんのかな、とふと疑問に思った。
「そうだね、たぶん。君も?」
「sure。まだ、しばらくはこんな感じだよなあ」
 ファーザーが消え、それと同時に副総裁までいなくなった。つまりそれは、リブリアの政治の中枢部が崩壊したということだ。けれど人間の営みは絶えることなく続いていて、彼らには指針としての政府がどうしても必要だった。
 というわけで、ユルゲンを筆頭に、彼の仲間達は否も応もなく、新政府として、社会の中心としての役割を担わされている。
 ことに、ブラッドやパートリッジは、ユルゲンの最も近くにいるメンバーの一人であり、間違いなく、今のリブリアで最も忙しい人間の一人だ。朝は早々に出かけて、帰りは日付の変わるころ、休日も24時間休めることはまずありえない、という生活がずっと続いている。
「ちぇ、これだけはプレストンがうらやましいよ。子どもがいると、勤務時間の上限が決められてるもんな」
「あれはあれで大変みたいだよ。彼は片親だから特に」
 もっとも、あの家の長男はかなりのしっかり者なので、もう立派に父親の支えになっているようだ。
「あー、聞いてる聞いてる。頭もいいんだろ。早いとこ学校卒業して、仕事のほうも手伝ってくれねえかな」
「そりゃあ頼りになりそうだけど、ロビーが卒業するまでこの状態が続いてたら大変だよ」
 先の見えない作業の連続に、正直うんざりすることもある。けれど、そのたびに「うんざりする」と肩をすくめ、あるいは唇を尖らせて、言葉にしても構わないのだ、という自由が彼らに幸福感をもたらすのも事実だ。
「なあ、せめて一緒に夕飯食おう。19時。どう?」
「いいね」
「どんな急ぎの仕事でも、俺との約束優先ね」
「わかった。君もね」
 こつん、と拳をぶつけ合って、笑顔のままでキスを交わした。ありふれた光景であり、それが当たり前だと思える日々を誇らしく思う。
 あわ、もう行かねえと、とブラッドは残りのコーヒーを飲み干して、空のカップをシンクに放り込んだ。
「じゃ、先に出るから」
「ん、気をつけて。後でね」
「後で」
 せかせかと消えた後姿を見送って、パートリッジも出勤の準備をした。恋人ほど慌ててはいなくても、ゆったりと時間が残されているわけでもない。やらなくてはならないことは、いくらでもあるのだ。
 遮光フィルムの代わりに、簡素ながらもカーテンがかかる窓から外を見る。今日はなかなかにいい天気のようだ。そういえば、近頃、晴天の日が増えた、と気象観察官からの報告もあがっていた。
 弱いながらも確かな日光を浴びて、パートリッジは、眠気を振り払うように伸びをした。
 こんな日に、泣きたくなるような夢は似合わない。
 たぶん、今夜はいい夢を見る、と何の根拠もなくそう思った。

END

++++++++++++++


幸せバージョンの血パトです。
……楽しいなあ……(笑)。
ブラッドが死んでないので、パートリッジもちゃんと生き延びました。プレストンとも仲良しです。メアリーも元気にしてます。
平行世界のどこかでは、こういう未来もあり得るのかも、と思ってみたり。
ネタを提供してくださったM.Kさま、ありがとうございました。


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一期一会  (血メリ&血リッチ。それぞれの世界観はあまり深く追求しない方向で……)
広々とした空港の建物と、そのスペースさえ埋め尽くすようにごった返す人込みの中で、メリックは、突如ぽつりと一人で取り残されて、苛立たしげに周囲を見回した。
 サングラスに入っているカラーは、せいぜい紅茶程度の濃度しかなかったけれど、慣れない色つきのレンズは、随分と視野を遮っている。それでなくとも、間に合わせのそれは、もう数年も前に購入したもので、今ではまったくと言っていいほど度が合ってないのだ。
 確かについさっきまで隣にいたはずの人影は、「ちょっと、あっち見てくる」という言葉だけを残してどこかへ行ってしまった。最初の五分こそ、何も考えずにそこに立っていたけれど、待ち時間が十分を過ぎるころになると、見かけによらずせっかちな医師はいぶかしげに辺りを見回すようになり、十五分を過ぎた今では、十秒ごとに、どんどんと不機嫌を募らせていた。
 もっとも、その本当の原因は、自由気ままな恋人の行動ではなく、これから乗らなくてはならない飛行機への恐怖心だったのだけれど、メリック自身はそのことに気付いていなかった。そこに思い至るほどの余裕がないのかもしれないし、無意識のうちに考えまいとする、プライドの成せるわざであったかもしれない。冷静で鳴る博士でも、自分のこととなるとさすがに勝手が違うようだ。
「あ」
 ようやく探し人を見つけて、けれどメリックは、安堵ではなく、怒りに染まった息を吐いた。
 てっきり向こうも自分を探しているはずだと思っていたのに、まるきりそんな様子もなく、のんきに腕時計など見ていたからだ。
 つかつかと歩み寄ると、彼にしては珍しいほどの乱暴さで、相手の肘を引いた。
「ブラッド! 探したんだぞ。『ちょっと』だなんて適当なことを言って、私を放ったらかして! 君がいないと、私は身動きがとれない──」
「失礼ですが、ミスター?」
 流れるような苦情の申し立ては、わずかに笑いを含んだ、やわらかな言葉にせき止められた。
「もしかして、人違いをなさっておられるのでは?」
 その声は確かに恋人のものであるのに、その口調や言い回しは、明らかに 他人のもので、メリックは驚いて、ぱちぱちとまばたきをした。
 まじまじと顔を寄せて、相手を確認する。
 ぎゅうっ、とすがめられた目に、腕をつかまれた方は、「おや」と二つの発見をして、やや驚きの表情を浮かべた。
 鼻先が触れあいそうな距離まで近づいて、ようやくメリックは、自分が引き止めた相手が、探していた恋人ではなかったことに気がついた。
 よく似ている、と思う。けれど、彼が着ているのは、明らかにどこかの航空会社の制服だった。今日のブラッドは(彼にはやや珍しく)白っぽいシャツを着ていたので見間違えたのだ。
「わっ!」
 焼けた鉄板にでも触ったかのように、慌てて相手の腕を離し、メリックはしどろもどろに謝罪した。
「し、し、し、失礼!」
「いいえ。どうやら、責任はあなたではなく、あなたのサングラスにあるようですね」
「あ、これはその、眼鏡を、今朝ブラッ……いえ、友人が落してしまって……ええ、ほとんど何も見えてない状態で……」
「ああ、それは大変だ」
  明るく、けれど真摯な言い方は、やはり、ブラッドによく似ている。
「本当に、失礼を。でも、あなたは私の友人によく似ています。体格や、声や……全体から受ける感じが、とても」
「──それは不思議ですね。あなたも俺の友人に良く似てるんですよ。今も似てますが、ちょうど彼があなたくらいの年齢だった頃に。そう、うり二つと言ってもいいですね」
「本当に?」
 それは確かに不思議だ、とメリックは、ようやく少し微笑んだ。
「笑顔まで似てる。俺は、彼の笑顔には100万ドルの価値があると思ってるんだけど、あなたもそう言われるでしょう」
「そんな変わったことを言うのは、今探してる友人と、あなたくらいです」
 それは、メリックが普段、笑うということをほとんどしないからなのだけれども、そのことに気付くほど、メリックは自分自身に気を配ってはいなかった。
「なら、あなたのお友達は目が高いということになりますね。──遅くなりました、俺はピット。AALTO社のパーサーです」
「あ、私はメリック──が……ピット?」
 差しだされた手を握り返しながら、メリックはもう一度相手の顔を見た。うすぼんやりとした視界では、どう目を凝らしても細部まで確認することはできない。
「それは──本名?」
「……そうですが」
「じゃあ、名前まで私の友人と同じだ。ひょっとして、彼と血縁関係があるのかもしれませんね」
「だったらすごい偶然だ。でも、それより、俺の名前を聞いてそういう反応をする方は珍しいです」
たいがい、笑われるんですよ、とパーサーは苦笑した。
「何故です?」
「有名な俳優と同名で………」
 そう言いかけた彼も、まさか、その話題の当人に台詞を遮られるとは、想像もしなかったに違いない。
「ヘンリー!」
 いた、と遠くで一言叫んで、大きなストライドで近寄ってきた男は、メリックの姿を見つけると、ホッとしたように肩の力を抜いた。
「ブラッド」
「ああ良かった、どこ行っちまったのかと思ったよ」
 心配した、と言われ、メリックはつん、と冷たい声を出した。
「私はどこにも行ってない。君こそ、どこに行ってたんだ」
「あ、そうだ、眼鏡さ、すぐ作ってくれるってとこ見つけてきたんだ。とりあえず……って……あ、れ?」
 濃いサングラスをかけたその男は、ようやくメリックの向かいに立った制服姿に気がついたらしい。そこに、姿見か等身大の立て看板でもあったのかというような仕種で手を伸ばし、生身の人間だと気付いて、「うわ」と声をあげた。
「な……何だ? 彼は、誰?」
「彼は……彼も、ミスター・ピットだそうだ。良く見えなかったから、君と間違えた」
「うわ〜……」
 サングラスをずらして、まじまじと上から下まで凝視する。「パーサーのピット氏」は、ここでようやく驚きから立ち直った。
「どうも。……ブラッド・ピット氏、ですよね。俺もです」
「え?」
「ブラッドリー・ピット。友人は『ブラッド』と呼びますが」
「本当に?」
 これにはメリックも驚いたようだ。
「言ったでしょう? たいがい笑われる、って。これが原因ですよ」
「顔も似てる。──親戚じゃないよね、俺たち」
「残念ながら、違うと思いますよ。それより、ミスター・メリックとうちのキャプこそ、血縁関係があってもおかしくなさそうだけど」
「うちのキャプ?」
「もう来るでしょう。すぐそこのスタバに、コーヒー買いに行ったんですが」
 ひょい、と視線を流した先に、ちょうど、両手にカップを持った制服姿の機長が歩いてきた。
「マーク、こっち」
「ブラッド? ……どうかし……」
 他人と一緒にいる同僚に、何かあったのかと訊ねかけたリッチは、その顔触れを確認して後の言葉を飲み込んだ。
まるで、合わせ鏡だ。
 ドッペルゲンガー、などと、古い迷信さえ思いだしてしまう。
 無言で立ちすくむ四人の中で、一番に立ち直ったのは、パーサーのブラッドだった。現実に引き戻すようにちいさく咳払いをすると、最後に加わったメンバーを示した。
「──紹介しましょう。我がAALTO社の誇る有能なキャプテン、マークス・リッチ。マーク、このかたがたは、ブラッド・ピット氏とメリック氏。ピット氏はあんたも知ってるよな」
「知ってる、が……何故、君と?」
 スクリーンの向こうにいるばかりだと思っていた存在が、いきなり目の前に現れた驚きに、リッチは紙コップをささげ持ったまま、きょときょとと二人を見比べた。
「ここにいる、ミスター・メリックに、間違えられたんだ。な、メリック氏とあんたって、そっくりじゃねえ? もちろん、彼の方が若いけど」
「…………」
 言われてリッチとメリックが顔を見合わせた。確かに似ている、ように思う。けれど、自分の顔というものは、目にした回数の割に客観視できないもの だから、確信はない。
 そうして、彼らは、反射した虚像のようにまるきり同じタイミングで小首をかしげたので、二人のブラッドは、「は、」と短い声をたてて吹き出した。
「あんたたち、ほんとに……」
「親戚か、年の離れた兄弟なんじゃねえの」
 それぞれの想い人に向けられた言葉は、何の遠慮もない。
「「ブラッド」」
 ぶしつけな笑い声をたしなめる言葉さえ同時で、とうとう本人達も困った顔ではありながら、そのおもてに、かすかな笑みをのぼらせた。
「ミスター・メリック? あいにく、お名前に聞き覚えはないのですが……」
「私もです。他人の空似でしょう。私たちより、あそこで笑っている彼らの方がよっぽど不自然だ」
「元々、ブラッドは──ああ、つまり、うちのパーサーは、彼に似てると言われてはいたんですが」
 リッチは、線対称に立つ『ブラッド』を見比べた。
「失礼ですが、ミスター・ピットとブラッドは、画面で拝見するときより、よく似て見えます。双子のようにね」
「そう?」
「君、カメラの前では格好つけすぎなんじゃないのか」
 ちらりと皮肉っぽく笑ったメリックを気にする様子も見せず、「ていうか、あんたといるからくつろいでるってことじゃねえの」と、言葉通りに気安げな笑みを見せた。その切り返しは予想外だったので、メリックはうろたえ、言葉を無くして、唇を噛んだ。メリックは、どうしても、そう言ったやり取りに慣れない。
 不機嫌そうにうつむくしぐさが、実のところただの照れ隠しだと知っている恋人は、気にも留めずに、強張った背に、そっと手を添えた。
 もう一人のブラッドは、相似形の相手に目を向け、それから隣のリッチへと視線を戻して「似てる?」と小声で訊ねた。自分も、あんなふうにてらいない笑顔を、隣のひとに向けているのだろうか。
「そうだね、とても」
 向けられるまなざしの優しさまで。
 向こうのブラッドが、メリックとどういった関係なのかを想像するのは下世話に過ぎるにしても、だ。
 わかるとは思う。けれど、追求するべきではない。無粋でもあろうし、プライベートな事柄でもあるからだ。それは相手の知名度には関係のないことだけれども、その上で、これほどのセレブでは、うかつなことを言えば、問題が大きくなりすぎる。
 ちらりとそちらを見ると、ブラッド──俳優のほうの──は、二人の心うちを悟ったらしく、唇をゆったりと緩めると、連れの後ろで黙って人さし指を立てた。
 リッチとブラッド──パーサーのほうの──は、了承のしるしに、ほんのわずかあごをひいて見せた。
彼も、リッチたちの関係に思うところがあるのだろう。奇妙な連帯感は、そのせいだ。
 ──こういったことには、いささか鈍感そうなミスター・メリックのほうはどうだかわからないけれど。

 ぴる、と一瞬、電子音が響いた。
 パーサーの胸ポケットだ。取り出してみなくてもわかっている。携帯電話のスケジュール機能が、タイムアウトだと告げたのだ。
「時間だってさ」
「ああ」
 二人は、コーヒーカップとクルーバッグを一つずつ分け合って、それぞれの酷肖の相手に軽く会釈した。
「では、私たちはこれで」
「ああ、どうも。……なんて言ったらいいのか……めったにない体験をさせてもらったよ」
「それは俺たちのほうですよ」
 なあ、とブラッドは、同僚と笑顔をかわした。彼の娘たちが聞いたら、何でサインをもらってこなかったの、と、ひとしきりむくれるのは間違いないだろう。
「これから、お仕事なんですね。気をつけて」
 メリックは、相変わらずはっきりしない視界に目を眇めながら、制服姿の二人を労わった。
「あなたたちも。良い空の旅になるよう、お祈りします」
「……ええ」
 メリックにとっては、『良い空の旅』なんてものは存在しないも同然だったけれど、まさかそんなことを言うわけにもいかないので、どうも、と口の中でもぞもぞ言った。
「また、会えるかもしれないね? 他人じゃないみたいな気がするよ」
「そうですね、ご縁があれば」
「縁があれば、か」
 いいね、旅立ちには似合ってると、その容姿で世界中の銀幕を制することのできる俳優は、清々と笑った。
 おそらく、もう二度と会うことはないだろうけれど、この先、一年、五年、十年経っても、お互いが傍にい続けるかぎり、自分たちは、この奇跡のような時間を話題にするだろう。
 昔、あんなことがあったな、と。
 例えば、テレビさえも静まり返った、二人きりのリビングで。
 例えば、急ぐことなく走る、車のシートで。
 例えば、季節を告げる花が彩る公園で。
 まるでそれは、約束された未来像のように、彼らの脳裏に鮮やかな残像を残した。
「……それじゃあ」
 お互いに幸運と平安を祈りあう。
 そうして、親しい友人にするように気軽な別れの言葉を告げ、二組の恋人たちは、それぞれの道へと歩き出した。

END

++++++++++++++


ほんとは、フライトプランの世界には「ハリウッドスターのブラP」は存在しないんですが……お遊び企画ということで。
AZUREを読んでくださった方が、リッチ・ブラッド・クルージェが乗務してるなんて夢のフライトですね、とおっしゃって下さって、じゃあ、そこに誰か血豆カプが搭乗してたら面白いかなあ、と思ったのがきっかけでした。
血メリになったのは、メリック先生の視力がお悪いから。それだけ(笑)。
ネタ提供してくださったM.Mさま、ありがとうございました。


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あくまめさんと血天使さん。(血天使×あくまめ)
わあ、とこぼれた声は、まるで子どもそのままだったから、ブラッドは思わず吹き出しそうになるのを、懸命におさえこんだ。
 目の前の対象物に夢中で、なおかつ、普段から気配に聡いとは言いがたい、のんき者の悪魔は、まるきり気付いたふうはない。
「これ、何、どうしたんだい?」
 何で何で、と翡翠色の瞳をきらきらさせて、ブラッドの顔を見上げてくる。
 二人の間にあるのは、豪華なホールケーキで、色とりどりの果物やクリームが繊細な模様を描いている。真ん中には「Happy Birthday」と書かれた板チョコのメッセージボード。
 まごうかたなきバースデーケーキだったが、あいにく、人外の自分たちには「誕生日」など存在しない。だから、ショーンは、「どうしたのか」と訊いて来たのだ。
 ずいぶん嬉しそうなのは、多少は期待があるからか、あるいは単に甘党としての本能なのか。仮に、これはこれから他所へ持って行くんだ、と言ったところで、怒りだすようなショーンではないけれど、がっかりしないはずはなく、そうと告げるには、多大な罪悪感を持たずにはいられないだろうと思われた。
「食べてもいいぜ」
「え」
「ていうか、食べて」
これもどうぞ、ともう片方の手に持っていた、ピンクのバラも押しつけた。
「……女の子宛てのプレゼントみたいだね?」
 ほんのすこし、声のトーンが落ちる。
 かわいらしいやきもちを妬いてくれているのがわかるから、ブラッドは今度ははっきり笑顔を見せた。誰にでも平等に愛を示してみせる優等生の神父が、こうして、わずかながらも恋愛感情らしいものを見せてくれるのがとても嬉しい。
「うん、まあ、女の子宛てっちゃあ、女の子宛てだけど」
 人妻だしね、とおどけて肩をすくめる。もっとも、ブラッドに浮気願望がないのは、「他人のものを貪るな」と戒められているからではなくて、現在進行形の恋愛に満足しているからなのだけれども。
「覚えてるだろ、こないだ結婚した俺の友達」
「うん……。18歳年下の女性と結婚したっていう彼だね?」
「そう。今日は、その彼女の誕生日だったんだよ」
 バースデーパーティを開くから来い、と招待を受け、じゃあ、ケーキくらいは持ってくな、とそんな約束になっていたのだが。
「何かあったの」
「夫婦ゲンカ。ものっそいヘヴィなやつ」
「……誕生日に?」
「sure」
 本来なら、おめでとう、おめでとう、と温かな言葉と笑顔が交わされるべきはずの日に、いったい何があったのか、二人の間に飛び交っているのは、怒号と泣き声、いらだちまぎれに投げつけられる本やクッションの類いだった。
 ブラッドと同じく、パーティに招待されていた友人連は、プレゼントを手にしたままドアの前で困った顔を見交わしていたのだけれど、もっと困った顔のホストが中から顔を出し(その片目に青アザができていたのを、ばっちり全員が目撃した。新妻は、スローイングの心得があるのかもしれない)、今日はちょっと、と口ごもりながら告げたので、いやいやいいんだ、気にすんなよ、とことさら何もなかったように手を振って、その場で解散とあいなった。
「プレゼントなら後で渡すこともできるけどさ、ケーキは食っちまわないとしょうがないじゃん。あんたなら喜んでくれるかなあ、と思って。花も」
「……そりゃ、私は嬉しいけど……。そのケンカの原因は?」
「さあ」
 とても訊ける雰囲気じゃなかった、と両手を広げる。
「そう……。気の毒にね」
「それは誰に同情してんの、ファーザー・ショーン? 彼女? 彼? 俺たち?」
「みんなだよ。せっかくだったのに。誕生日は楽しく過ごすものだろう?」
 生まれてくれてありがとう、祝ってくれてありがとう、今までも、これからもよろしく、と。そんなふうに親しい人たちと喜びを分かち合う日のはずなのだから。
「ま、大丈夫だよ。一応視たけど、嫌な空気は感じなかった。明日か、明後日にはけろっとしてるさ」
 パーティは、仕切り直しをすればいいんだし、ケーキはそのとき買い直せばいい。
「ってわけだから、これの所有権はあんたに移ったから。好きなだけ食っちまって」
 いいのかな、他人の不幸につけこむみたいで申し訳ない気がするけど、などと言いながらも、ショーンはいそいそとナイフを持ちだし早速にケーキを切り分けた。君も食べるだろう、と訊かれたブラッドは、ほんの少しだけ、お相伴に預かることにした。
 折しも、時計は午後三時を指していて、ティータイムにはちょうどいい。
 甘いミルクティのカップをお供に、行儀良く、けれど一心にケーキを頬張っている悪魔と言うのは、やっぱりちょっと珍しいよなあ、と、ブラッドは、見慣れてしまった今でも時折、おかしくなってしまう。
「旨い?」
「とっても」
 変わり者の悪魔は、誕生日っていい日だねえ、とにこにこ笑っている。ケーキと花束でこんなにも幸せそうに笑ってくれるなら、毎日だって持参したいとブラッドは思った。
「あんたも、誕生日わかればいいのにな」
「私?」
「そしたら、その日は、あんたのためにケーキ持って来るよ。ワンホールひとりで食べちゃってもいいぜ」
 まあ、今目の前にあるケーキも、最終的に85%以上はショーンひとりで消費されそうな勢いではあるけれど。
「無理だよ。ひょっとして、ルーに訊けば知ってるかもしれないけど」
「え、それはダメだ」
 そんなことのために魔界へ帰るなんて、とんでもない。
「帰らないよ。たぶん、ルーも知らないだろうし」
 ショーンはくすくすと笑い、それに、そんなこと訊かれたら、さすがの彼も驚くんじゃないかなあ、と楽しそうに付け加えた。確かに、自分の誕生日はいつか、と訊ねる悪魔はいないだろうと思う。
「いいんだよ。だって、誕生日がなくったって、こうしてケーキを持った君が訪ねてきてくれるものね」
 お菓子は甘いし、紅茶もおいしいし、目の前には大切に思う相手がいて。
 私って幸せだよね、と、フォークを手にしたまま、真面目な顔でそう言った悪魔に、ああ、俺も幸せだよ、と天使は甘ったるく笑って見せた。

END
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2007年豆誕祝い。10日遅れで(ごふっ)。
ここでケンカしてる夫妻は「Happy-go-Lucky」に出てきたあの二人です(笑)。


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片道切符エピローグ(血×豆神さま)
ドアを開けた途端、「ああ〜ん」とあからさまに〈ソノ時〉の女の声がして、ブラッドはぎょっと立ち止まった。
 誰だ? てか、何で?
 今、ここにはショーンしかいないはずで……。
「あ、おかえり、ブラッド」
 いつものようにリビングのソファに陣取り、リモコンを片手に、ショーンはけろりと家主を見上げた。
「な……ちょ、あんた、何見て……!」
 いつもならサッカーの試合が映っているはずのテレビ画面では、全裸の女性が、豊かな胸を揺らしながら、今まさにクライマックス、と言った様子の甘ったるい声をあげていた。ケーブルテレビのピンクチャンネルだ。
 ブラッドは慌ててショーンからリモコンを取り上げると、スイッチを切った。
「何をするんだ」
「何って、それはこっちの台詞だよ! 何であんなの見てんの!?」
 おかしなほどパニックに陥ったブラッドの声はほとんど悲鳴じみていた。
 ……考えてみれば、ショーンが生きてきた年月はブラッドとは比べ物にならないほど長いのだし、大きくなったときの外見は、ブラッドよりもいくらか年上なくらいなのだから、こういった番組を見てても、全然問題はないはずのだが。
「いや……なんていうか、勉強しようと思って」
「何を!?」
「愛し合ってる人間同士は、ああいうことをするんだろう?」
「あ……ああいうって……そりゃそうだけど……」
「でも、具体的に何をするのかよく知らないから」
 君と<する>なら、知っておかないとまずいかと思って。
「男同士のは見つからなかったんだ。君、わかるか?」
「…………」
 ショーンはあくまで大真面目だ。彼が間違いなく本気だとわかるから、ブラッドは本当に叫びだしたくなった。
 ついこの間までキスの仕方すら知らなかったくせに、舌で唇の表面をなぞっただけで飛び上がって真っ赤になったくせに、今だって息継ぎが上手にできなくて、キスした後は、はあはあ言ってたりするくせに、ああもうまったく、そんな状態でセックスのやり方を覚えてどうしようってんだ!
 もちろん、ブラッドは健康な成人男子だから、好きな相手(ちゃんと両想いの)がそこにいて、触れることを許されているとなれば、キス以上のことをしたいとは思っている。でもそれは、あくまで今後の話だ。今のショーンに手を出すなんて、小学生に悪戯をする性倒錯者とレベルが変わらないとさえ、ブラッドは思っているのに。
「あー、いや、別に知らないならいいんだぞ?」
 がっくりと床に両手をついてしまった恋人(たぶん)に何を思ったのか、ショーンは、慰めを必要としている人に対するみたいに、ぽんぽんとブラッドの肩を叩いてきた。
「気にしなくていい」
「いやそうじゃなくて」
 ズレまくってはいても、ショーンの心遣いは真摯で、だからブラッドは肩に置かれた彼の手を握って、苦笑しながら顔を上げた。
「チャンネルは、わからないよ……でもやり方は知ってる」
 あくまで知識として、ではあるけれども。
「でもさ、ショーン、そういうことする前に、あんたはもうちょっと知るべきことがあると思うよ」
「そうなのか?」
「そうなの」
 男同士のセックスが、どういったふうに行われるかを教えたら、この神様は目を回してしまうんじゃなかろうか、と思う。
 逆に「そうなのか」と素直に納得される可能性もあるが、そんなことになったら、ブラッドのほうが目を回しそうだ。
 大事にしたい相手だから、急いで道を間違えるようなことはしたくないと思う。
 そっと顔を寄せると、ショーンは素直に目を閉じた。柔らかくくつろいだままの身体を抱き寄せる。
 最初の頃は、これだけでも全身を緊張させていて、ガチガチに力が入っていた。そうでなくなった分、自分たちの距離はちゃんと近づいている。
 舌を差し込むと、ショーンが「ふ、」と甘ったるい息をこぼした。
 もどかしいくらいの優しさで口内を愛撫されながら、ショーンは、ふとさっき見たテレビを思い出した。
 ええと、あの番組に出てた女性はキスをしながら、確か、手を動かしてて──。

「…………ぎ、…………」

 キスの合間、まるで不似合いに淫靡な仕草でショーンに股間を撫でられて、今度こそブラッドは、ぎゃー、と大声で悲鳴をあげた。


おしまい。
++++++++++++++


血さんは、豆神さまに何か夢を見てるといいと思います(笑)。


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