かくも短き季節
南国の花の下には、やわらかな耳朶があった。
陶器 チャイナ の色のそれをじっと見ていたら、花が揺れ、黒い瞳がこちらに向けられた。
生まれての耳のように、この国の微笑みは柔らかだ。
「どうぞ」
と多分言われたのだろう。
この国の言葉で。あるいは癖のあるフランス語だったのか。
氷の触れ合う音ともにテーブルにグラスが置かれた。
ありがとう カムオン
唯一覚えた現地の言葉に、はにかむような微笑がかえってくる。
ふいに懐かしい時間に引き戻されたような気がして、ショーンは優しい気持ちになり、それからその思いがけない心の動きに密かに狼狽した。



「HEY」
と、ふいに背後から声がかかって、ショーンは慌てて振り向いた。
振り向いた途端、ビーチチェアから転げ落ちそうになった。
いや、実際半分は転げ落ちていたのかもしれない。
駆け寄ろうとしてパラソルの支柱に蹴躓き、今度は危うくプールに落ちそうになる。
「何やってんだ、あんた」
大きく開いたサッシにもたれ、気だるそうに前髪をかきあげながらこちらを見下ろしているのは、天下のハリウッドスター、ブラッド・ピットだ。
バスローブを羽織っただけの姿に、寝起きのくしゃくしゃ頭。
それすらアポロン神のように美しい、天下無敵のムービスターだ。
それはいい。
ブラッド・ピットが、二十四時間ハリウッドスターであることに、意義を申し立てるつもりはさらさらない。
だが、しかし。
『ブラッド!』
と、叫ばなかったのは、ショーンにしてはできすぎの反射神経だった。
そんな声を上げて、年若い客室係りの注意をひいてはならなかった。
かわりにショーンがやったのは、1秒でも早くこのアポロン神の彫像の前に立ち、そのありがたい立ち姿を、周囲の目から遮断することだった。
「き、君こそ何をやってるんだっ!」
ショーンは息を切らせつつ、息を押し殺すという芸当を、セリフつきでやってのけた。
「WHAT?」
前がはだけてるじゃないかっ! と小声で叫びながら、掻き合わせろというジェスチャーをする。ジーザス! なんてことだ。 バスローブしか着てないんだぞ!
何かまずいか? とでもいうように、ブラッドが両手を広げて肩をすくめたので、事態はますます悪化した。
そもそも、部屋とプールサイドにはステップ3つ分の段差がある。
ショーンは目のやり場に困って、後ろを気にする仕種で視線をそらした。
幸い客室係りのアオザイは、後姿のままプライベートエリアを退出するところだった。
「盗撮の心配でも? ここはセキュリティの高さじゃ、アジアでも三本指に入るホテルだって夕べ言わなかった? この部屋とプールサイドでなら、あんたが真っ裸で歩いてたって大丈夫だよ」
「別に真っ裸で歩きたくてここに来たわけじゃない」
少々むかっ腹を立てながら、ショーンは手を伸ばしてブラッドのバスローブを掻き合わせた。
もちろん視野に健全な光景を取り戻すためだ。
「カメラマンがいなくたって、彼女がいたじゃないか。あんな若い娘に失礼だと思わないのか? それとも君は、人種差別者(レイシスト)か?」
「ショーン、あんたはフェミニストだ」
顎を少しだけ上げて、ブラッドがつややかな微笑をみせる。
頬に血が昇るのは、その笑顔のためだけではない。
ショーン。
その名前を、あまりに美しくブラッドが発音するからだ。
それはかすかに夕べの名残をはらんでいて、どこか甘くて挑発的だ。
(ジーザス……)
ショーンはまるで呪いの言葉ででもあるように、再び神の名を呟いた。
もう充分いい年をした男が、名前を呼ばれただけで頬を赤らめるなんて、悪魔の呪いでなくてなんだというのだ。
「大丈夫。彼女には見られていない。加えて言うなら、アジアンにも、女性にも、客室係りの仕事にも敬意をもっている」
宣誓するように真面目にブラッドが答えたので、ショーンは別の意味で羞恥を覚えた。
「すまない。本気じゃなかった。君のことを人種差別者(レイシスト)だなんて……」
「本気だなんて思ってないさ。それよりショーン……」
ふいにブラッドの目が、剣呑にすがめられた。
「あんたはそこで何をしてたんだ?」
「これを持ってきてもらったんだよ。目覚ましに君もどう?」
にこにこと、目じりから音符がこぼれそうな笑顔とともに鼻先に差し出されたのは、カトレア付きのストローだった。ルビーオレンジの色をした液体から甘ったるい匂いが立ち昇ってきて、ブラッドは鼻の上に小さく皺を寄せた。
「朝っぱらからフレッシュジュース? 随分健全だな」
しぶしぶ一口啜り、「甘い」と口を離す。
「そう?」
と言ったショーンがストローをくわえ、「確かに甘いな」と調香士のような顔つきで断じた。
「でも悪くない」
ブラッドはふん、と鼻先で不満を表明した。
「英国紳士がモーニングにジュース一杯? そんなことのために彼女を?」
「朝食はブラッドととるつもりだったからさ。でも君はぐっすり眠っていたし。……ブラッド。ひょっとして、君の分を注文しなかったことを怒ってるのかい?」
ブラッドは三段高い場所から、年上の恋人をあきれたように見下ろした。
人をまるで駄々っ子のように言うこの男は、いったい自分の内面のどこまでを理解して、こんな東の果てのリゾートくんだりまでついてきたというのだろう。
貴重なオフのやりくりをして、醜聞のリスクを犯してまで。
彼の役どころには、しばしば「権謀術数」「知能犯」的なダークでクールな形容が付随しているが、素顔のショーン・ビーンがかなりのうっかりものだということは、人の知るところである。ひょっとしてその「うっかり」の中には、自分との関係も含まれているのではないかという疑惑が、間欠泉のように湧いてくる今日この頃だ。
ブラッドは、ショーンの姿を眺め降ろしたついでに、小言をひとつ優先させた。
「ショーン。その足もと、何?」
「え?」
と靴の裏をのぞき込むような仕種で、ショーンが右足を上げる。
「違うよ。何でプールサイドに革靴なの? で、その靴下は?」
「おかしいかい?」
シックなグリン地のアーガイル。膝丈の白いコットンパンツも、フェアウェイで見るならおかしくはない。まるっきりゴルフ場にいる上品なイギリス紳士そのものだ。
「たのむから靴下は脱いでくれ。ついでにいえば、デッキシューズを推奨する」
「あぁ。そうか。うん、ちょっと改まり過ぎているかな」
ドレスコードに無頓着だという自覚はあるらしく、ショーンは素直に靴を脱ぎ、靴下を脱いだ。
あるいはホストに敬意を表したのかも知れない。
「これでどうだい」
などと。
両手を広げて、真っ直ぐに立って見せる。
くらり、と眩暈がしたのは、この島の湿潤のせいではない。
膝。ふくらはぎ。踝、踵、足の指。そしてその全ての先にある形のよい爪。
ビーチチェアに無造作に投げ出されたショーンの素足を想像し、ブラッドはそのあまりに危険な光景に一瞬身震いをした。
前言撤回。
ドレスコードもTPOもくそくらえだ。
ビーチでスキーウェアを着てくれたって構わない。
と、ふいに、不機嫌の理由が甦ってきて、ブラッドはショーンの鼻先に指を突きつけた。
「見とれてただろう」
「え?」
「俺の目はごまかせないぞ。チェックインの時と、夕べ枕の交換を頼んだ時と、ついさっきと。これで三度目だ。あんたがアジアンビューティに弱いなんて知らなかった」
「ブラッド?」
「俺の眠っている隙に、あんたはクソ甘いジュース一杯を頼むために彼女を呼んだってわけだ」
「彼女って……あぁ。グエンのことか?」
ははは、ばれていたかなどと悪びれずに笑って見せるので、ブラッドは本気で面白くなくなった。
おそろしく奥手のようで、ナチュラルに人たらしなのがこの男だ。
いやいや。ちょっと愛らしい客室係りの名前までチェックしているなんて、案外手が早いのかも知れないと思い、ブラッドは予想外のボディブローをくらったような気分になった。
「……ここは拗ねてもいい場面だな」
ブラッドはそう宣言して踵を返すと、あろうことか唯一の着衣をショーンに投げつけて部屋の中に消えた。
おーい、ブラッドー、と、のどやかな声をかけながら、ショーンはプールサイドから部屋に上がった。
部屋の中央にでんと据え置かれているのは、三面をシルクのカーテンで囲われた天蓋つきの巨大なベッドだ。チェックインの時、シーツ一面に花びらが撒かれていて、ショーンに人語にならない唸り声を出させたそこには、今花のかわりにおそろしく完璧な裸体がうつぶせていた。
役柄を離れた身体は幾分細くはなっているが、相も変わらず同じ人間とは思えない奇跡のような造詣で、「英国一セクシーな俳優」のランキングから即刻自分の名前を抹消したくなるほど、ショーンを存分にへこませてくれる。
だいたい背面だけでこんなにセクシーだなんて、不公平にもほどがあるじゃないか。
溜息を胸にしまい、ショーンはベッドのそばに立って声をかけた。
「どうした。朝食にはいかないのか?」
返事がないので仕方なくベッドにのぼり、匍匐前進してその背中を叩いた。なにしろこのベッドときたら、ブラッドとショーンが二人ずつ眠っても充分なサイズなのだ。
「ブラッド」
ピタピタと。滑らかな背中はよい音がする。
「なあ、飯を食わないか」
ブラッド、ともう一度言いかけた瞬間。
世界が反転した。
腕を掴まれ、スプリングの上で何度か弾んだ。
ブラッドの下に巻き込まれたのだと認識したのは、グラグラと視界の定まらない頭を両手でホールドされてからだ。
青い瞳が至近距離でのぞきこんできた。
「人の話を聞いてないだろう」
何もかも、近すぎて焦点が合わない。視界も脳みそも。
ブラッドはショーンの両頬をつまんで横に引っ張った。
何? と、蛙のようにへしゃげた声で、ショーンは問い返した。
「俺が嫉妬に荒れ狂っているっていう話をだよ」
嫉妬?
どこからそういう話になったのだろうと、ショーンはシェイクされた脳みそを働かせた。
直前までの会話は、そう、靴下を脱げとか、ジュースがどうのとか、そういう話だったはずだ。
「あんたと会うのは何ヶ月ぶりだ? 三六五日二十四時間あんたの視線の先まで監視するつもりはないけどな、せめて一緒にいるときくらい俺だけを見てくれ!」
一息にそう言い、言いおわった途端、ブラッドはひどく傷ついたような顔をした。
ちぇっと舌打ちすると、ブラッドはショーンの上から落ちてゴロリと仰向けなった。
「最低のセリフだな。言うんじゃなかった」
「ブラッド?」
「できれば忘れてくれ。……つまり、焼餅ごっこをやってるつもりだったんだ」
「…………」
「だけど、半分は本気だったみたいだな」
最悪だ、とブラッドは吐き捨てるように言った。
「こういうことを自分が言うなんて思ってもみなかった」
もぞもぞとショーンが腹這いで近づいてくる気配がして、額の方から覗きこまれた。
緑色の目が柔らかな弧を描いてブラッドを見下ろしている。
何か優しいことを言うつもりなんだなと、少しシャクに思う。
時々思い出したように年上になるんだ、この人は。
しかしショーンの唇が近づいてきたので、ブラッドは素直に瞳を閉じた。
プライドとか、話の流れとか、そういうのを全部無視しても、ショーンとのキスは気持ちがいい。
だが、しかし。
ペロリと。あろうことか鼻先を嘗められた。
そのままあぐあぐと押し包まれるように唇で噛まれ、最後は鼻の中に長々と息を吹き込まれたので、ブラッドは悲鳴を上げて鼻を覆った。
「ショーン!」
ははは、と頭の上で愉快そうな笑い声がした。
「拗ねている子供の機嫌を直すにはやっぱりこれが一番効くな」
鼻を覆ったまま、ブラッドはショーンを睨みつけた。
「レイプされたみたいな気分だ」
「うちの娘たちには大受けだったけどね。ただし五才までだけど」
「そのあとは?」
「さぁ。気配を察しただけで、子猫みたいに毛を逆立てて怒るから試していない」
ブラッドは小さく吹き出し、それから両腕を投げ出してゲラゲラ笑った。
笑っていると、今度は本当に小さなキスが唇に落された。
ブラッドは仰向けのままショーンを見た。
「私が彼女を……グエンを見ながら考えていたのは、こういうことだよ。つまり」
ショーンは、ブラッドのすぐそばで頬杖をついていた。
「つまり、子供がはにかみながら笑う時間は、なんて短いんだろうってことさ」
ブラッドは笑いを収め、右手だけのばしてショーンの顎に触れた。
「彼女たちと何かあった?」
ショーンは微笑みながら首を振った。
「正確に言うと、単数形だね。だけどそれほどシリアスな話じゃない。何しろ私はこういう父親で、相変わらずいろんなことをやりそこなっている」
それからちょっと慌てたように付け加えた。
「君とのことを言っているわけじゃないよ」
「わかってる」
「難しい年頃なんだ」
「わかるよ」
ブラッドはそのままショーンの顎を引き寄せ、長くも短くもないキスをした。
ふーむ、とショーンの形のいい指が、考えるように顎を撫でた。
「それにしても何とも色気のない話で申し訳ないな。 彼女 グエン にも随分失礼な話だ」
「内緒にしといてやるさ」
「君にもだったね」
ブラッドはゆっくりと首を振った。
いくつもの役割や立場やあるいはしがらみのようなもの。
この年になれば、誰もがそんなものを沢山束ねて生きているのだ。
だがその中のひとつを確実に自分に振り向けてくれようとする意志をブラッドは信じることができたし、それを幸福と感じられるくらいには失敗もしてきたのだ。
ブラッドもショーンに向き合うように頬杖をついた。
「俺のことしか考えてないショーンってのも見てみたいけど、まぁ思いつめるのは若者の特権だしね」
そういって年上の恋人を揶揄するような顔をするので、ショーンは少しだけむきになった。
「おいおい。私にだって君のことしか考えてない時くらいあるよ」
「……へぇ」
猫のようにブラッドが目を細めたので、ショーンは会話の角度がややよからぬ方向にずれたことに気づいた。
方向修正。
ショーンは手元にあった枕を引き寄せ、顎を乗せるようにして抱きかかえた。
その枕は、夕べブラッドが「ちょっと硬さが違う」といってフロントに交換させたものだった。
どう違うのかはショーンにはわからない。
ただ枕が使われた時間は、実際はかなり短かかったはずだ。
「まあ確かに君といると、思いつめるより思い出すことが多いかも知れないな」
「思い出す?」
「そう。どういうわけかね。子供の頃のこととか、娘たちが小さかった頃のこととか。いろんなことを思い出す」
「ふうん?」
「私は随分ヘマばっかりしてきたけど、結構その途中には悪くないことも多かったって。例えばこんなふうなさ」
といってショーンは、抱えていた枕をいきなりブラッドの顔に押しつけた。
「ふかふかの柔らかい時間もあったってことをね」
「ショーン!」
ブラッドは枕を跳ねのけて飛び起きると、脱兎のことく逃げ出そうとする恋人の足首をつかまえて捕獲した。
うわっと間抜けな声をあげて倒れたショーンに背中から覆い被さり、仰向けにひっくりかえして体の下に敷き込んでしまう。
ショーンはしばらくじたばたともがいていたが、岩のように動かないブラッドに観念して、ついに両手を投げ出しくったりと力を抜いた。
「この乱暴ものめ……」
「俺に枕を投げつけた罰だ」
「よそ見をしていた罰じゃなくて?」
「違うって言ったろ」
ブラッドが随分子供っぽい表情をしたので、ショーンはクスクスと笑った。
「さぁ」
と、小学校の先生のような明るい声でブラッドの肩に手をかける。
「遅くなったが朝食にしよう。君も腹がへったろ?」
「……」
ブラッドは返事をしなかった。
「君がイングリッシュブレイクファストの有名なホテルだって言うから楽しみにしていたんだよ。さすがにリゾートに来てコンチネンタルじゃへこむからね」
「……」
ショーンは軽く咳払いをした。
「覚えてるかい? マルタでさ、寝坊してきたオーリーが冷えたミルクが残ってないって拗ねちゃったろ? そしたらエリックが、『じゃあ明日寝坊しても大丈夫なように、乳牛でも買ってきて繋いどけよ』って言ってさ……」
ブラッドの顔の表情筋はピクリとも動かなかった。
物真似はどうも似てなかったらしい。
「重い……ブラッド」
視線をそらしながらそう言うと、わざとのように体重をかけられ、ショーンは小さく呻いた。
そういえば、ブラッドは今何も着ていないのだ。
腕や脚やシャツのめくれ上がった部分に、ブラッドの体温が直接あたる。これだけの筋肉だし、きっと熱効率がいいのだろう。ブラッドの身体はいつでもショーンより少しだけ熱い。
何か言葉をつがなければ、気づいていることに気づかれてしまう。
つまり、その。腿の内側にあたりはじめたブラッドの熱に。
本当はもう、大分前から気づいてはいたのだけど。
「ショーン……」
と、耳元で呼ばれビクリと肩をすくめる。
何かうまいセリフを言わなくてはと思うのに、頭が回転しない。
「あんたがうまい朝飯を食いたいなら、どこへだってシェフごと空輸してやるさ」
「……」
「別にここの飯が最上級ってわけじゃない」
ぐっと腰を押し付けられ、分かってるんだろ?というように動かされる。
ほとんど泣きそうになってショーンは言った。
「でも、私は腹が減ってるんだよ」
「じゃあ食いに行こう。四十分後に」
「四十分!?」
その微妙な時間は何なんだ!?
「ショーン」
甘い声で名前を呼びながら、ブラッドの両手の指が髪に挿し入れられる。
「今はあんたが食べたい」
NO……と、ショーンは苦悩にみちた呻き声をあげた。
「ブラッド・ピットともあろうものが、そんなベタなセリフをいわないでくれ!」
「ロバート・レッドフォードだって、ベッドの中じゃチープなセリフを言ってるさ」
「知ってるのか!?」
「単なる想像」
ははは、と明るい声をあげて。
今ちょっと嫉妬した? などと愉快そうに笑う。
ショーンはブラッドの肩に手をやり押しのけようとしたが、鍛えぬかれた身体は当然のことながらピクリとも動かなかった。
ブラッドの唇が、骨から肉をはずそうとするような動きで、首筋や鎖骨の上を啄ばんでゆく。
本当に食われてしまいそうな気分になって、ショーン半ばやけくそで毒づいた。
「そういう意味なら君はゆうべさんざん食ったじゃないか」
「うん。確かにね」
「だったら……」
「大丈夫。ショーンは別腹だから」
メインもショーン、デザートもショーン、と歌うように言われて、ショーンに抗う気力はほとんど残されていなかった。
「恨むぞ……」
「ん?」
「モーニングが食えなかったら」
「大丈夫」
と花のようにブラッドは破顔して、恋人に請け負った。
「そのときはルームサービスに運んでもらうさ。そう 彼女 グエン に電話してさ」





THE END
 Treasureトップへ 


〈時の門〉さんとの初合同誌「Jelly Beans」に東野谷いずみさんのお名前で寄稿していただいたものでした。
夏の水の匂いがしそうな繊細なお話をありがとうございました。
夏河さまのサイトはこちら

2008.09.28