警察の追手をかわしながらメキシコへ逃げるゲッコー兄弟。
兄のセスはクールなところがチャーミングな強盗。 首の角度を変えながらまばたきをする癖が印象的な、3代目バットマンそっくりの極悪人である。
弟のリックは「人を見たら泥棒と思え」とでも(自分が泥棒のくせに)思っているのか、疑わしきは人質さえも殺してしまうというラブリーな変質者だ。
まあ死んじゃったものは仕方がないや、ということで、たまたま同じモーテルに泊まっていた牧師一家を新たに人質にして、検問でひっかかりそうになる危機(実は検問よりリックの方が危ないんだけど)も何とかくぐりぬけた。
そしてようやくたどりついたメキシコで待っていたものは...dark night...
かなり気にいってしまったんだけど、ネタばらしになりそうなのでコメントしづらいなぁ……。
観た人は判る、とにかく前半と後半で別モノのような映画。 全然違う映画2つをくっつけたような。
後半への伏線が前半に全く見当たらないし、前半の微妙なスリルとサスペンスは後半のB級映画的展開の中では完全にふっとんでしまう。
考えようによっては、一本で二度おいしい、とも言えないこともない。
全体としては、これはやっぱりアクション映画だと思うのだけど、レンタルビデオ屋ではホラー映画に分類されていた。
大抵の人は前半が好きのようだけど、ぼくはむしろ後半の方が好きだなぁ。
○○○があんなに弱くてザコキャラ扱いされてしまう映画も珍しいというか新しいのではないだろうか。
従来型の○○○と比べると、「エイリアン」のエイリアン一匹当たりのインパクトが「エイリアン2」ではデフレーション起こしてしまったのと同じくらいの落差がある。
いや、まさしく「エイリアン2」のラテン系アクション映画版と言えるかも。
ちなみに英会話学校の先生 Tony にこの映画のことを教えたら、それから間もなく観てしまったらしく、次の週に会ったとき、
「一緒に観ていた友達は、途中で突然展開が変わったので 『Oh God, いったい何が起こったんだ』 とひどく驚いていた。 自分は前半が好き」
と言っていた。
この、何の伏線も無く突然展開が変わる点について。
現実の場合を考えてみれば、ああいう目に会う前にそうそう伏線なんか見えてるわけないのである。 それは、そう、牧師一家にとって人質にされてしまうことがあまりに唐突だったのと同じことで、事件というものは何の前触れもなく身に降りかかってくるものなのだ。
この映画は、何も知らない観客を牧師一家やゲッコー兄弟と同じ目に会わせることに成功したのだ、と言える。
だから、従来の映画作法にとらわれずに伏線なんか張らなかったのはむしろ快挙である。
……というのは、見る前にあらかじめ大筋を知っていたから言えることかもねぇ。 知らずに観ていたらきっと Tony の友達と同じことをつぶやいたに違いない。
観ていない人にあんまりネタばらしをしたり先入観を与えたりするのは良くないけど、とにかくこの映画はある瞬間から突然B級映画的展開に突入する、ということだけは知っておいた方が、より楽しめると思います。
全く知らずにフツーの映画だと思ってみていると、急激な転換についていけなくて楽しみが半減するかもしれません。
1997-08-20