17世紀の中国。
満州民族の清朝が興隆し、漢民族の明朝は北京を追われていた。
また、台湾はオランダによって占領されてしまっていた。
まだ余勢を保つ明の将軍として福建省を守る鄭芝竜には、日本人の妻との間に生まれた一人の息子がいた。 明の皇帝から将来を嘱望された彼は、皇族と同じ「朱」の姓を名乗ることを許され「成功」の名を貰い、「国姓爺鄭成功」と呼ばれるようになった。 それ以来、鄭成功は二つの目的のためにその人生を捧げることになる。 一つは清朝妥当による明朝の復権、もう一つは台湾の奪回である。
彼らの奮闘も空しく、清朝の勢力拡大は留まるところを知らなかった。 ついには父親の鄭芝竜までもが清に投降し、福建省は陥落した。 鄭成功の一党は弱小勢力として海岸線付近にまで追われ、打倒清朝はほとんど絶望的になっていた。
しかし不屈の鄭成功は、その一方で台湾奪回の準備を着々と進めていたのだ。
悲願の達成はなるか。
最初に作品の原題について。
これはスクリーンにも「国姓爺合戦」とデカデカと映っていたのだが、映画館に置いてある「シネふくおか」というチラシによると、原題は「英雄・鄭成功傳」ということになっている。
日本向けにフィルムをいじったのだろうか。 そこのところが分からないので、このページのタイトルには両方を併記した。
観てる間中、主役の名前をカタカナで「テイセイコー」と書くと馬の名前みたいだというのがずっと気になっていた……というのはやはり不謹慎なのだろうか。
中国の英雄だそうである。 日本でも、かの近松門左衛門が浄瑠璃「国性爺合戦」(近松は「姓」を「性」に変えた)の主人公のモデルにした人物として知られている。 ……と言われても、ぼくはそんなもん全然知らない。 要するにこの映画のストーリーに関しては予備知識ゼロ。
「国姓爺」と言っても別に年寄りではない。 当時、鄭成功はまだ20代。 「国姓」というのは皇帝の姓すなわち国の姓を指しており、鄭成功が皇族の「朱」姓を賜ったことを示している。 しかし当の本人は最初から最後まで「朱成功」と名乗ることは無く、周囲からも「国姓爺」と呼ばれ続ける。 この辺りはかなり謎。
正直なところ、途中で清に投降するというお父さん(鄭芝竜)の判断はかなり正しいような気がするんだが……。
中国の歴史に関して詳しい訳ではないので、この映画を観る限りで考えると、望みの無いことに部下の命をあたら散らせているようにしか見えない。 とは言え、部下のほうも好きで鄭成功の下に団結しているようだから構わないのかしらん。
せめて、鄭成功個人のモチベーションだけでももう少し丁寧にドラマティックに描いてくれると、観ているこちらとしても盛り上がれたのではないかと思う。
鄭成功一派が掲げる大義がどうも「忠誠心」という言葉ばかりのようで、その実現が具体的にどういう理想像を結ぶのか、あるいは人々にどういうメリットをもたらすのか、その辺りがよく解らない。
だから、観ていてどうも今一つ感情移入できなくて
「いけいけテイセイコー、がんばれがんばれテイセイコー」
という気分になれなかった。
何らかの予備知識がある中国の観客にとっては、この辺りの受け取り方は違うのかも知れない。
それはさておき。
この映画の鄭成功は、苦難の道のりを辿った歴史上のヒーローとして描かれており、彼の一派がやたらと苦労したことはよく解る。 そして、長年にわたる苦闘の末に目標を達成する、という話の展開はいかにも王道的だ。
ただ、目標二つのうち一つだけが成就したところで、なんとなくハッピーエンドのような雰囲気を醸し出しながらあっさり終わってしまうので、そこはちょっと拍子抜け。
「志半ば」という点に全く言及しないエンディングにはちょっと不自然さを感じた。 あくまで王道的な展開で終わらせるためにそうしたのだろうか。
この辺りも、予備知識の有無で違ってくるのかも知れない。
清朝の皇帝が、台湾奪回に関してのみは鄭成功の邪魔をしないと宣言する場面がある。 曰く「中国は一つ」。 中国の観客にとってはこういう場面は盛り上がるところなんですかね。
戦記モノとしては、途中の戦闘場面ではなんとなく物足りなさを感じる。
しかし、台湾奪回のためにオランダと戦うクライマックスの部分はかなりの迫力だ。
日中合作。 日中国交正常化30周年記念。 日活創立90周年記念。
にっかつと言えば、ぼくが物心ついた頃にはもうロマンポルノしか撮ってなかったという記憶しかないんだが……えーとポルノからは撤退したんだっけ? よく知りません。
ただ、フィルムの最初に「にっかつ」の文字が出てくるのを観ると、なんとなく違和感。
島田揚子以外は全然知らない俳優さんばっかり。
ところで、主役の人は東山紀之をちょっと泣き顔にして鼻の穴を広げたような感じの人だった。 そういえば、「拳神」の主役はTOKIOの松岡に似てたし、準主役もかつての男闘呼組の岡本に似てた。
中国ではジャニ顔が流行りなのかしらん。
2003-01-03