キャラヴァン結成は1967年に溯る。そのころイギリスはカンタベリーにワイルドフラワーズと言うバンドがあった。現在ソロで活躍するロバート・ワイアットとケヴィン・エヤーズが在籍し、直接的にソフト・マシーンの母体となったバンドである。このバンドには他にもヒュー・ホッパーなどの才人が在籍したが、後にキャラヴァンをスタートさせる4人のミュージシャンも出入りしていた。
ワイルドフラワーズは1967年に消滅したが、それに伴い元メンバー達は二波に分かれてバンドを結成した。一つはカンタベリー系ジャズロックを代表する名バンド、ソフト・マシーン。そしてもう一方が今回の話の主役、キャラヴァンである。オリジナルメンバーはパイ・ヘイスティングス(Gtr,Vo)、デイヴ・シンクレア(Key)、リチャード・シンクレア(Bass,Vo)、そしてリチャード・コフラン(Drs)の4人だ。彼らはカンタベリーからロンドンまで出向き積極的なギグを行い、ヴァーヴ・レコードと契約を交わす。
活動開始からおよそ1年、ファーストアルバム「キャラヴァン」がヴァーヴより発売された。オレンジ色の美しくもサイケデリックなジャケットが印象的で、内容的には牧歌的なメロディ感覚とデイヴのオルガンが醸し出すサイケ・ムードが絶妙にブレンドされたポップな作品集であった。しかし諸々の事情によりヴァーヴとの契約は打ち切られてしまい、彼らはレコード会社をまた探さねばならなくなる。
だが当時イギリスではどのレコード会社も先鋭的なバンド探しに血眼になっていた。1970年、彼らはデッカ・レーベルとの契約に成功し、原タイトルは強烈に長いセカンドアルバム「キャラヴァン登場」をリリースする。世間一般のキャラヴァンに対する「プログレッシヴ・ロック・バンド」という認識はこのアルバムからスタートしている。インストルメンタル・パートの比重が増大し、特にデイヴの弾く歪んだオルガンはまるで曲を支配しているかのような印象を与えた。現在もライヴで演奏される代表的名曲「フォー・リチャード」も収録され、さらにはタイトル曲がシングルカット、初のチャート・インを果たし、デッカとの契約はまさに順調な再スタートとなった。勢いづいた彼らは翌年にサード「グレイとピンクの地」を発表する。
多くの人が名作と呼ぶこのアルバムでキャラヴァンは最初のピークを迎えた。特にB面全てを費やした組曲「9フィートのアンダーグラウンド」は素晴らしく、今聴いても十分すぎるほど魅力的である。小作品が並ぶA面の出来も良い。しかし早くもここで彼らに最初の転換が訪れる。独特の歪んだ音色でうねるようなソロを聴かせ、演奏の中心と言っても良かったデイヴ・シンクレアが突如脱退してしまうのである。
翌年、デイヴの穴を埋めるため、キーボードに元デリヴァリーのスティーヴ・ミラーが参加した「ウォータールー・リリー」が発表された。あまり注目されることの無いアルバムだが、タイトル曲や「ラヴ・イン・ユア・アイ」という名曲もあり、また前作で影の薄かったパイ・ヘイスティングスのセンスが光っており個人的には好きなアルバムである。しかしここで彼らにまた転換が訪れる。何と今度は、卓越したベースのテクニックと繊細かつ美しい声でデイヴと並びキャラヴァンの看板だったリチャード・シンクレアが脱退したのである。