Caravan リマスター盤検証
2001年2月、キャラヴァンがデラムに残した6枚のアルバムがデジタル・リマスターを施され再発された。しかも驚く事に全作品に大量のボーナス音源を加え、詳細なライナーまで付加したまさしく決定版といえる内容である。マニアなら全て買わないわけにいかない音源ばかりだが、迷っている人のことも考え各作品について私の耳で検証してみた。なお音質については過去の作品との冷静な聴き比べが必要と思われたので、ライナーやボーナストラックの内容を中心にレビューさせてもらった。なおタイトル後にはシリアルナンバーを書いてあります。
なお、個人的な感想だが、今回の再発はライナーの充実ぶりが凄い。ここに挙げた各作品のライナーを読んでみればわかる筈だが、今までいかに我々が少ない情報から彼らのことを知ろうとしていたか−逆を言えばいかに彼らのことを知らなかったかをたっぷりと思い知らされる内容だ。正直に言うが私のサイトなんかこのライナーに比べると気の抜けた炭酸水程度の情報でしかない。普段滅多にお目にかかれない各メンバーのコメントなど、大変興味深く読むことが出来る。これを読まずしてキャラヴァンを語るなかれ、と正直に感じた。特に音楽雑誌に名の出るライター諸氏は目を通しておくほうが懸命でしょう。
If I could do it all over again, I'd do it all over you (8829682)
数年間廃盤だったセカンドも今回目出度く再発された。一聴して感じたのは、リマスターで以前のCDより楽器の分離がより明確になったと思う。気になるボーナス曲は4曲で、その内訳は他ページで紹介したベスト盤にも収録された“A day in the life of Maurice Haylett”に加え、“And I wish I were stoned”、“Hello Hello”、“As I feel I die”のデモヴァージョン3曲。デモの3曲は歌も演奏もラフで、アルバム収録ヴァージョンと極端なアレンジの変更もない。アルバム本編が元々素晴らしい出来だし、ここは敢えてボーナス目当てでなくCD再発&リマスターというだけで買いでしょう。
In the land of grey and pink (8829832)
個人的に今回の再発で特に驚かされたのが、本盤における音の変化だった。以前出ていたCDやアナログディスクと比べるとヴォーカルパートがより明瞭に聞こえるぶん、恐ろしいことに唄いだしのピッチの狂いまで聴き取れるのである。特に“Winter wine”はその印象が強い。しかしアルバム前半部におけるアコースティックギターやメロトロンは以前より確実に生々しく聞こえると思う。ボーナストラックは5曲で、聴き物はRichard Sinclairが哀感漂う歌声を聴かせる未発表曲“I don't know it's name”と、次作に収録される“Aristocracy”のテイク違い。後者は演奏テンポもやや遅いが、Pye Hastingsが既にこの佳曲を書き上げていたことがわかる貴重なテイクと言えよう。他はヴォーカルパートをスキャットで唄った“Winter wine”のデモ、歌詞も演奏もかなり違う“Golf girl”デモ、そして“Dissassociation/100% proof”のミックス違いを収録している。はっきり言ってこれならファンでなくても買わないと損です。
Waterloo Lily (8829822)
以前よりコアなファンに人気の高い本作も4曲のボーナストラックを加え目出度く再発された。個人的な感想を言えば今回の追加曲で一番驚かされたのが、本盤に収録されたギターのみの伴奏でPyeが切々と唄う“Pye's June Thing”と“Ferninand”の2曲だった。ひどくシンプルな演奏なのに、聴いていると何か感傷的なものを感じずにいられないのだ。他にはアルバム収録予定だったらしい“Looking left, looking right”、あっという間に終わるラフなセッション“Pye's loop”を収録し、ボーナス4曲を順に聴けばRichardとPyeの音楽的志向のズレが自然と感じとれる。やはり彼らを語る上ではずせない重要作だと思う。
For girls who grow plump in the night (8829802)
本作も数年間廃盤だったことが信じられない。Pye Hastingsを中心として動き始めたキャラヴァンの代表作であり、ファンならずとも買っておくべき名作と思うからだ。問題は本作のボーナス曲だが、まず“Memory Lain, Hugh/Headloss”のUSミックス(アルバム発売当時、アメリカでシングル・カット用にリミックスされたもの)、そして今まで謎に包まれていたDavid Sinclair復帰直前−すなわちキーボードをDerek Austinが担当していた時の演奏がなんと4曲も収録されている。その内訳だが、“Be alright/Chance of a lifetime”、“Memory Lain, Hugh”、“Surprise surprise”のデモ・ヴァージョン、そして“Derek's Long Thing”である。聴いてみて思うのはキーボーディストが違うだけで随分曲の雰囲気が変わることか。Derek在籍時の演奏はラフなセッションらしく、味はあるのだがDaveと比べるとかなり没個性的に聞こえてしまう。他の作品同様リマスターだけでも十分買いだけど、ボーナス曲は熱心なマニア向けでしょう。
Caravan & the New Symphonia (8829692)
今回のリイシューにおいて一番話題になっていたのは本作だと思う。何しろ今まで謎に包まれていたキャラヴァン唯一のオーケストラとの共演コンサートがコンプリートで世に出たのである。しかも曲順まで当日のコンサート再現し、25年以上前の一大イベントを追体験できる作品が出来上がったのだ。既に長年名演として語られてきたアルバム本編については何も言わないが、今回発掘されたバンドのみの演奏による“Memory Lain, Hugh/Headloss”、“The dog the dog, he's at it again”、“Hoedown”、そしてオーケストラとの共演テイクが聴ける“A hunting we shall go”の4曲に関してはDeccaに拍手を送るしかない。バンドのみの演奏は手慣れた演奏を聴かせており、他ではあまり聴けなかったこの時期の“The dog the dog, he's at it again”も素晴らしい。皆が注意を払うであろうシンフォニック大作“A hunting we shall go”はスタジオテイクに比しオーケストラが薄い印象があるが、最後まで乗り切れてしまうところがバンド最盛期ゆえの強みか。
Cunning Stunts (8829812)
今回出たCDにはいずれも素晴らしく充実したライナーが付属しているが、本盤のライナーを読んでいるとこの作品が彼らの過渡期に作られた作品であることが窺い知れる。すなわちツアーに追われる生活のなかでPyeは作曲に割く時間を十分に取れず、David Sinclairは自身のプロジェクトへ向けて脱退を考え始めていた。そんな状況で新加入のMike Wedgewoodの作編曲能力がバンドにとってプラスになったであろうことは容易に予測できる。気になるボーナストラックは3曲、“Stuck in a hole”のシングル・ヴァージョン、後に“Better by far”に“Behind you”として陽の目を見る“Keeping back my love”、そしてこの時期のメンバーによるクロイドン・ホール公演からの“For Rochard”を収録している。やはり“For Richard”のライヴ(ファンならご存知、“The Best Of Caravan Live”にも収録されているものと恐らく同テイク)を聴くためだけでも買いでしょう。