003的考察

 

(2)お土産

「フランソワーズ、ただいまぁ〜♪」
ジョーのあとから、大人とグレートが続く。
彼らの様子を見るなり、立ち上がる。
「ストップ!!ちょっと待って」
傍らに用意していたバスタオルを配る。
「まず、そぉっと足を拭いて」
無言で従う3人。
「それから、ゆっくりそのままバスルームに直行!」
廊下を指差す。
「砂を落とさないようによっ」
と、言ってるそばから。
ダダダと駆け出すフトドキ者約1名。
「ジョー!ゆっくりって言ったでしょー!」
・・・はぁぁぁ。
頭が痛い。
いったい彼は今いくつなんだったっけ・・・?
私たちサイボーグは年をとらないから、外見は改造された時のままだけど。
・・・・。
やめやめ。
きっと彼は、何歳になったって変わらないわ。
大体、張々湖飯店がお休みだからって、あの二人にくっついて海で遊ばなくてもいいのに。
せっかくイワンが「起きている周期」なのだから、行くなら行くでイワンも連れて行ってくれればいいのに。
ため息をつきながら、キッチンでスイカを切る。
せめて、タオルを持っていくとか。行く前に気付いてくれればいいんだけど。
変に海に近いから、返ってそういう発想をしなくなってしまうのかもしれないけれど。
バスルームからはオトナ3名のじゃれあう声が響いてくる。
これじゃー私っておかーさんみたいじゃない。

 

「あんまりため息つくとシワが増えるよ♪」
び・びっくりした。
バスルームに居たんじゃないの?
というか、音もなく現れて、しかもこんなフトドキな事を言うのはひとりしかいない。
(あ、グレートもたまに言うから二人、かな?)
しかも語尾の「♪」って何。
「お。スイカ♪」
な〜んか、妙に上機嫌なんですけど?
「海は楽しかった?」
「ウン。フランソワーズも来ればよかったのに」
女の子には、そうもいかない事情のときもあるのよ。
「海では何をしてたの?」
「んー。潜ったり、飛び込んだり・・・。色々」
二人を待たずにスイカに手を伸ばす。
その手をぴしゃっとはたいてから。
「今度行く時は、イワンも連れて行ってあげてね」
「イワン?いま起きてるのかい?」
「昨夜言ったじゃない」
「そうだっけ?」
そうこうしているうちに、グレートと大人もシャワーを浴びて戻ってきた。
二人はどうやら廊下の砂も掃除してくれていたらしい。
・・・って、視えていたけれど。
感謝しているけれど、それを口に出して言ってしまうと恐縮する二人だから。
いつものように、気付かないふり。
(というか、たまには手伝ってねジョーも。)
スイカを食べながら、今日の海遊びの話を楽しそうにする3人。
「あ、そういえば」
グレートが急に大きな声を上げる。
「どうしたの?」
「ジョーがお土産を持ってきたんだった。オイ、見せたのか?」
「い・いや、まだ・・・」
「なんだなんだ。あんなにフランソワーズに見せるんだ、ってはりきってたくせに」
「ウン・・・。でも、後でいいかなって」
「ジョーは、ワテとアンサンが帰った後で、渡したいんよ。わかってあげるアル」
「おっそうか。これはこれは吾輩とした事がとんだ無粋なことを言ってしまった」
和やかに盛り上がって。それは楽しいひとときなのだけれど。
ひとつ引っかかる事が。
・・・お土産?
海から帰ってきて、で、お土産?
妙に上機嫌な理由はもしやソレ?
また妙なモノを拾ってきたんじゃないでしょーね??
心で泣き笑い。
だって、この前海底から持ってきたものといえば。

巨大サヤエンドウ

どーしてもどーしても気になったらしく、研究所に持ち込んで。
で、やっぱりヤヤコシイコトになってしまった。
それ以来、「くれぐれも妙なモノを拾ってこないように」って固く禁止しているのに。
今度はいったい何?
でも、グレートと大人が一緒だったから、そんな妙なモノは持って来てないわよね・・・?

グレートと大人が帰ったあと。
「これ。お土産」
と、手のひらの上に乗せられたのは。
薄いピンク色の貝。
ほっ。
マトモだわ。
「ありがとう。きれい・・・」
夕陽に透かしてみる。
と。
「・・・ねぇ、ジョー?」
「ん?何だい?」
私の肩を抱きながら、顔を覗きこんでくる。
えと、そういう意味じゃなくて。
「待って。そうじゃなくて」
「そうじゃないって・・・何?」
顔が近づいて吐息がかかる。
だ、だから、そうじゃなくて。
「これ」
目の前にずい、と貝を差し出す。
「どこで見つけたの?」
「んー・・・ドコだったかなぁ・・・なんか、無人島みたいな小さな島」
この際、アナタたちどこまで行ってたのっ?!という疑問は無視して。
「・・・コレ、小型発信機なんだけど」
「何っ?!」
「しかも、定期的に電波を発信してるみたい」

ふと上空を見ると、夕陽を背にして何やら怪しい物体がこちらを目指して飛んでくる。

どうやら「また」何かヤヤコシイコトに巻き込まれてしまいそうな予感。


ジョーの「お土産」要注意。