「どう思う?」

 

 

「ねえ、ジョー。私のこと、どう思う?」

 

眠る前のプライベートな時間帯。
フランソワーズは部屋着でジョーのベッドの上にいた。
真ん中あたりでファッション誌を読んでいたのだが、突然顔を上げ質問をしたのだった。


「ね、どう思う?」


言いながら、するするとベッドの上を移動し、机に向かってパソコンとにらめっこしているジョーに近寄る。


「んー?好きだよ?」


生返事なジョーにフランソワーズは膨れた。

「そうじゃなくて!」
「そういう質問だろ」
「違うの!好きとか関係ないの!」
「・・・うん?」

ジョーはメールを送信すると立ち上がり、フランソワーズのそばに腰掛けた。

「質問の意味がわからないな」
「だから。私のこと、どう思う?」
「だから、好きだよって」
「他には?」
「他に?」


うーん、そうだなあ、と天井を見て少し頬を染めて言った。


「・・・可愛い」


いつもなら、まあジョーったら!とやはり可愛く頬を染めてうつむくフランソワーズであったが、生憎、今日の彼女は違っていた。妙に真剣な顔で言うのだ。


「他には?」

「他にぃ?」


ジョーは、彼女はいったい何を考えているのだろうと思うとともに、これは答え方に気を付けないといけない類の質問なのかもしれない。と、心理的に身構えた。


「・・・綺麗、とか」
「それって美人ってこと?」
「んー・・・そう、かなぁ」

横目でフランソワーズを窺うと、なんと彼女は頬を真っ赤に染めて今にも泣きそうな顔をしていた。

「えっ?な、何?どうかした?」
「・・・だって」

フランソワーズの膝の上に涙が一粒落ちた。

「ジョー、本当は私に飽きてるんでしょう」
「はあ?」

いったい、先程の会話から何がどうなってそういう話になるのか。

「ええと、展開がわからないんだけど・・・」
「だって、書いてあったんだもの、この本に!」

腕をいっぱいに伸ばして雑誌を引き寄せ、ページを示す。


「・・・美人は三日で飽きられる?」


ジョーの声にフランソワーズはこっくりと頷いた。


「ね?」
「ね?、って・・・」
「美人なんて言われたくないのに」


それは贅沢というものだろう。
何しろフランソワーズは綺麗なのだから。


「・・・別に僕は飽きてないよ」

フランソワーズの頭を胸に抱き寄せ、ジョーが言う。

「だって、ジョーは優しいからそう言ってくれているんじゃないの?」
「違うよ?」
「でも」

するとジョーは、くすくす笑い出した。

「・・・全く。君といると飽きないな」
「飽きない?」
「ああ。いつどんなことを訊かれるのかハラハラするし、答えを間違えたら大変な事になるし」
「大変な事?」
「うん」
「どんな大変な事?」
「・・・君が泣くだろうっ」
「私が泣くのは、ジョーにとっては大変なコトなの?」
「そうだよ、オオゴトで大事件だよ」
「ネオブラックゴーストよりも?」
「ふん。あんなつるつる三兄弟なんか知るもんか」
「つるつるって・・・酷いわねぇ、ジョー」

くすくす笑いだしたフランソワーズに、ジョーは頬を寄せた。

「良かった。笑ったね」
「だって、変なコト言うんだもの」
「変じゃないよ」
「変よ」
「いいんだよ。それで笑うんだったら、」

僕はなんだってするさ。

とは言わず、フランソワーズの額に唇をつける。

「・・・ジョーったら」

 

――飽きるわけないじゃないか。

こんなにいつも、ハラハラどきどきしているし、それに・・・
何を言い出すかわからない面白い女の子なのにさ。