「面倒な彼女」

 

 

 

僕のフランソワーズは時々メンドクサくなる。


「ねえ、ジョー。私の事どう思ってる?好き?嫌い?」


何をいまさら。


「んー…嫌いじゃないよ」
「じゃあ、好き?」
「好きじゃない」
「ははん、なるほど。知ってるわそれ。好きじゃないよ大好きだからっていうのよね?」
「…大好きじゃないよ」
「なるほどね、ジョー。大好きじゃないよ愛してるからって言いたいのね?」
「…愛してないよ」
「えっ、何よそれ。…ああ、わかった。愛してないよ宇宙一大事だからっていうのね!」


いやまあ、そうなんだけど。
メンドクサいなあ。


「あっ、今メンドクサいって思ったでしょ」
「あー…まあね」
「酷いわ!」


いや、酷いのは君のほう。
午前5時にしては僕は頑張っていると思うよ?


「あのさフランソワーズ。こんな時間に質問してくる彼女にちゃんと返事をするくらいには僕は君が好きだよ?」


だからもう寝ようよ。
何でそんなに目がぱっちりしてるんだ。


「じゃあね、ジョー。あなたは私の」


いやもう付き合ってられないから!


「はい寝るよ。おやすみフランソワーズ」


強引に組み伏せ唇を塞いだらやっと静かになった。

けれど。


「いやそうじゃなく…ちょ、フランソワーズ」


本気のキスは今はいいから。


「……」


早朝に目が覚めて僕にただ構って欲しかっただけの彼女にとって、僕のキスは要らぬスイッチを押したようなものだったらしい。

そして彼女の本気のキスもまた僕をそちら側に誘った。

半分眠っていた僕をその気にさせるくらいには。