「誰のせい?」
フランソワーズが風邪をひいた。 ふだんギルモア邸の家事を一手に引き受けている彼女がダウンすると、邸の中は全く機能しなくなる。 そして、みんなから攻撃を受けるのは僕なのだ。 「ジョー、ごめんなさい」 言いながら体を起こそうとするから、僕は彼女を押しとどめて寝かし付ける。 「もともと当番制だったんだから、元に戻すいい機会だ。ゆっくり寝ていて」 フランソワーズはちらちらと心配そうに僕を見る。 「ジョーが困ってない?」 フランソワーズは小さくこっくりした。 先週まで僕は風邪をひいていたから、それを彼女にうつしたのだろうと言われていて、フランソワーズはそれを気にしているのだ。 「大丈夫だよ」 僕は頭をかくとフランソワーズの元へ行った。 「フランソワーズのせいじゃないさ」 そう。フランソワーズのせいではない。 僕が舐めていた飴が何味なのか知りたいと甘えてキスしてきたのがフランソワーズで、その結果風邪がうつったのだとしても。 「・・・僕のせいだよ」 甘えるフランソワーズが可愛くて、拒否しなかった僕が悪い。 「だから、・・・またうつしていいよ」 うるんだ瞳が色っぽくて、僕は彼女の唇にキスをした。 だからまた僕は風邪をひくかもしれない。 でも今回はフランソワーズのせいだよね? と、思ったけど、やっぱり僕のせいなんだろうなあ。
「ええ。でも・・・」
「え、僕?」
「でも・・・本当は私のせいなのに」
ベッドサイドに手をついて顔を覗きこむ。
「でも・・・」
もちろんそれだけじゃ足りなくて、いつもの恋人同士のキスになってしまった。