「必然」
    偶然、行き合っただけの。一瞬、すれちがっただけの。     ***     「あら、ジョーはそう思っているの?」 今となってはわかるはずもない事だった。 だから、こんな体にされた事も今では受け入れられるのよ。 だけど。 僕は君を改造させたりなんか絶対にしないのに。 君を・・・君だけは、兵器になんて絶対にさせない。 同じことをしたはずよ。あなただけは絶対に守る。 そう思ったはず・・・   ***   偶然、行き合うだけの。一瞬、すれちがうだけのはずだった僕たち。 でも――僕たちは出会ってしまった。 だけどこれは、おそらく必然だったのだろう。 ブラックゴーストも何もかも関係ない。   きっと。      
   
       
          
   
         そんな存在のはずだった。
         けれども僕たちは出会ってしまった。
         誰よりも深く、関わってしまった。
         空色の瞳をくるんとこちらに向けて君は笑う。
         「偶然だったはずなのに・・・って」
         「だってそうだろう?僕たちは本来、出会う運命ではなかったんだ」
         ブラックゴーストに攫われ改造されていなければ、永遠に出会うことなどなかっただろう。
         「運命・・・ね」
         いたずらっぽく瞳を煌めかせ、フランソワーズは続ける。
         「私はそうは思わないわ。私とあなたは出会う運命だったのよ。ブラックゴーストとは関係なく」
         「まさか。日本とフランスがどのくらい離れているか知ってるかい?有り得ないよ」
         そう言った僕にフランソワーズは微笑んだまま首を横に振った。
         「有り得なくなんかないわ。ただ、・・・そうね。予定より、出会うのがほんのちょっと早くなっただけ」
         「早くなった?」
         「ええ。きっと、本当ならあなたがF1のパイロットになってフランスグランプリに来るようになって、私はバレリーナとしてそこそこ踊れるようになっていて。・・・そんな頃に出会うはずだったのよ」
         そうだろうか?
         「予定より早く会えたから、こうして一緒にいる時間が長くなったわ。だから」
         蒼い瞳は泣いているようで、優しく笑んでもいるようで、僕にはわからない。
         「・・・だったら、どうして更に早く出会えなかったのかな。もし、ブラックゴーストに捕まる前に出会っていたら」
         おそらく、命懸けて君を守り、逃がすだろう。
         「・・・ジョーはバカね」
         フランソワーズの瞳がきらきら光る。
         「もしそうなら、きっと私も」
         いつかどこかで運命が重なる。そんなふたりだった。