「ジャムサンド」

 

 

「あれ?どこか出かけるのか?」


キッチンでなにやら準備をしているフランソワーズを見つけ、通りがかったジェットが声をかけた。


「ええ。ちょっとね。お天気もいいし」
「ふうん――サンドイッチか」
「そうよ」
「・・・俺はツナサンドが好きだな」
「それは残念ね。ありません」
「卵サンドでもいいな」
「それもないわ」
「じゃあ、ハムサンド」
「それもないの」
「じゃあ、いったい何をサンドしてるんだ?」

ジェットが眉を寄せて、ランチボックスの中を覗き込む。

「アメリカのランチの定番、ピーナツバターサンドか?」
「はずれ」
「じゃあ、いったい何なんだ?」

他にサンドイッチのタネになるようなものってあったかな?と首を捻るジェットにフランソワーズは微笑みかける。

「正解はジャムサンド」
「ジャムう?」

なんだそれ、甘いじゃないか――という声にフランソワーズは笑う。

「だって、ジョーが好きなんだもの。ジャムサンド」
「けどよ」
「ジャムっていっても種類が色々あるのよ。イチゴでしょ、ブルーベリーでしょ。それからあとはハチミツサンド」
「色々、って2種類じゃないか。しかも――ハチミツ?」
「ジョーはハチミツが好きなのよ。知ってるでしょう」
「しらねーよっ」
「あら、ホットケーキにもハチミツかけてるじゃない。ハチミツ派なの、ジョーは」
「知るかっ」

けっ、と喉の奥で言ってから、ジェットは続けた。

「で?そのハチミツ野郎はどこいった」
「車を回してくるって」
「ふうん・・・」
「だから、今日のお昼はそれぞれで何とかして頂戴ね?」
「あ。ああ、それは構わないけどよ」
「博士のぶんはちゃんと用意してあるから」

鼻歌混じりのフランソワーズを見つめ、ジェットはやれやれと息をついた。
口元には苦笑いが浮かんでいる。

「フランソワーズ。お前ってほんと――けっこう何でもジョーなんだな」

フランソワーズは蒼い瞳をくるりと向け、にっこり笑った。


「そうよ。けっこう何でもジョーなのよ」