ジョーののんびりした声がした。 「フランソワーズ!?一体、どうし」 もしジョーに恋人がいたら?なんて考えていたなんて、とてもじゃないけど言えない。 「フランソワーズ。こっち見て」 私の膝枕で眠っていたジョーが身体を起こし、両手で私の頬を包む。 「言ってごらん?」 言えない。 「ほら。――フランソワーズ?」 言えない。 ・・・でも。 「・・・ねぇ、ジョー?」 そう言ったら。 がつっ。 「・・・ったーい!何するのよジョー!」 ジョーの頭突きが額に炸裂した。 「フン。あんまりわからない事を言うからだ」 そうして、私のおでこにキスをして。 「――好きなヤツでもできたのかい?」 え? 思わず見つめた褐色の瞳は―― ・・・そっか。 「――どうしてジョーが痛そうな顔をするの。おでこが痛いのは私よ?」 「好きなヤツができたのかできないのかどっちだよ?」 そうして、やっと――微かに笑った。 「ジョー?どうしたの?」 答えない。 「ヤダ。一体どうし」 ぎゅーっと抱き締められた。 「――頼むから。・・・もう、ヘンな事を言い出すのはやめてくれよ」 ジョーの胸に押し付けられる。 「フランソワーズ、俺をコロス気?」 やだ、どうしよう? ジョーの胸から離れようとするけれども、離してもらえないどころか更に強い力で抱き締められる。 「でも――」 耳元に響くジョーの声。 「――こうしていれば治る」 私もジョーの背中に腕を回した。 「・・・ゴメンナサイ」
***
・・・もしも。 もしも、ジョーに恋人がいたら。 私が、彼の恋人ではなかったら。
私はきっと
この世界には、いない。
|