旅先にて
〜イタリア・ナポリ〜

 

 

ここはナポリにあるピザのお店。
ピザ発祥の店と言われており、半年前から予約を入れなければ席を確保できないのであった。

そこに003一行は腰を落ち着けた。

もちろん、半年前にしっかりと予約済である。
つまりこの旅行は半年以上前から計画されていたということになる。009たちに内緒で。

まったく気付いていなかった009たちにとっては噴飯ものである。が、彼らの名誉のために敢えて言っておこう。
きみたちは気付いていないが、003たちのほうが一枚上手なのだと。

 

***

 

「うわあ、凄いわね」
「ちょっと注文しすぎじゃないかしら?」
「あら、そんな事言って。色々な味を試してみたいって言ったのはあなたでしょ?」
「でもさすがにこれはちょっと多くないかしら…」
「…そうねぇ」


運ばれてきたピザに最初は歓声を上げていたものの、次第にそれはため息に変わっていった。
なぜならば。
ピザは一枚一枚が尋常ではない大きさだったのである。
もちろん、それが本場の大きさであって日本のサイズこそイタリアでは有り得ない小さいサイズである。
しかし、日本の宅配ものを見慣れた目には、本場のピザは迫力が違った。
さすがピザ発祥の店。


「…ねぇ、どうする?」
「どうする、って…」

嬉々としてひとり数枚注文してしまったから、それはもう物凄いことになっている。
テーブルの上を見つめ、しばし5人は絶句した。


「…こういう時、なんでも綺麗に食べてくれる存在って重要だと思うわ」
「そうね。ただの味オンチだとしても」
「あら、うちのジョーはちゃんと味がわかるわよ?」
「それってどうかしら。どうせ、僕はフランソワーズの作るものならなんでもいいんだとか言うのでしょ?」

それってアヤシイわよねと互いに見つめ合って。
そうして同時に噴出した。

「…もう。どうしてジョーの話になっちゃうのかしら」
「そうよね。せっかくの女子会なのに」
「あら、いいじゃない。愛よ。愛」
「愛?」
「ええ。…なあに?あなたは愛してないの?ジョーのこと」

さらりと真顔で言ったのは――どの003だろうか。


そんなこんなで、しばしピザと格闘することになったのだった。