新ゼロ「心配?」

 

 

基本的にはどの009も優しいわ。


新ゼロフランソワーズはそう結論付けた。

そう――どのジョーもフランソワーズには優しいのだ。
ただ、その優しさをちゃんと理解できるのはそれぞれのフランソワーズに限られてはいるけれど。

ナインは怒っているのだという。が、それはスリーを心配するあまりのことであろう。
超銀ジョーも、話を聞く限りでは――怒っている範疇に入るだろう。
原作ジョーは何か考えているようだったし、平ゼロ組に限ってはフランソワーズのほうが怒っているようだった。

相手に対して怒る。

それは能動的な感情の動きであるから、その相手に対して特別な感情を持っているからに他ならない。
つまりそれ自体がその証拠となりえるのである。


「…いいなぁ。みんな」


怒ったり怒られたり。

心配されたり呆れられたり。

拗ねられたり拗ねたり。


自分たちにはそれもなかった。

しかも。

先ほどまで話していた超銀フランソワーズなどは、どこかうわのそらだったからその視線を追ってみたところなんと超銀ジョーを発見したのだった。
もちろん超銀フランソワーズは怒り呆れていたものの、それでもどこか嬉しそうに見えた。
口では迷惑よなどと言ってはいたが、おそらく本心ではないだろう。


「…ジョーなんか絶対に来ないもの」


もちろんそれが普通である。
恋人が旅行するからといって後をついてくるなど言語道断。異常な行為である。だから、自分のジョーがそうしないのは喜ぶべきことであり、彼は普通のひとであると納得もするべきである。

しかし。

どうにもすっきりしない。
彼のいない旅行なんて何度もしているのに、どうして今回はこんなにもやもやするのだろうか。
自分と同じ境遇の4組が気になるせいだろうか。
無意識に自分たちと比べてしまっているせいだろうか。


――比べる?


そう気がついて愕然とした。
別に自分たちは競っているわけではないのだ。
断じて、そんなことはない。
心配して追いかけてきてくれたら勝ちとか、そんなゲームをしているわけではない。


「…そうよ。私たちは普通だもの」

言い聞かせるように。

「だから、ジョーは日本に居て」

そっと目を瞑る。

「今頃楽しく過ごしているのよ。彼には彼の時間があるんだし」


そう――私がいなくても、彼の日常は過ぎてゆく。

瞼の裏にそんな彼の姿を思い描いてみた。

 

 

なんだかあまり楽しくなかった。