あこ様より頂いたお話です。 

 

「サクラ」

 

 

はらはらと桜が舞い散る。


優しく頬を撫でる春風。
風に吹かれ、少しくすぐったそうに恥ずかし気に薄紅の花びらを揺らす桜の木。

寝転んで頭上を見上げながら、まるで誰かさんみたいだとジョーはぼんやりと想う。

 

あれから幾度も春が訪れ

咲いては散り

咲いては散り

 

出会っては別れ

散っていった幾数もの命

 

「いつまでそうしているつもり?」


頭上にかかる影
軽やかな笑い声が春風のように舞う。


「花びらに埋もれて見えなくなっちゃうわ」

ほらこんなに。


そう言って胸元にかかる花びらを愛しげに払う。
太陽を背負った彼女の微笑があまりにも眩しくて、彼は目を細めた。


咲いては散り

出会っては別れ


そして今、こうしてここに君がいる。

そのことの奇跡を想う。

 

「ジョー・・・」


フワリと花びらのような感触が額に触れた。


永遠などないと知っている。
いつの日か、きっとそう遠くない未来に僕の命もこうして散っていく。

それでも想いは残るから。
君への想いだけはここに残していくから。


「フランソワーズ・・・」


髪に指をかき入れて抱き寄せる。

 

また次の春。

もしも僕はここにいなくても。

 

どうか、君の上に満開の花びらが降り注ぎますように。

 

 

 

 

 

Fin.
Mar.19, 2006 あこ